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竜と老人  作者: 日南田 ウヲ
37/122

その37

(その37)



 ミライは手を広げては握ったりをしている。


 ――自分があの時掴んだものは?


 そう思うと若者を振り返った。若者は鷹の羽の帽子を目深く被り、何も言わなかった。

 そう確かに自分は若者と共に夜の世界を飛んだ。

 その時自分は空飛ぶ自分の見知らぬ獣の背に触れ、その毛を握ったのだ。

 こともあろうに害を成す害鳥コカトリスとも想像し、恐れたというのに。

 それはもしや、いやそうなのだ、自分はこの目の前にいる若者、ベルドルが竜に変わったその背に跨り空を飛んだのだ。

 だからこそ、変わったその姿を見られたくない彼は自分に言ったのではないか?


 ――目を閉じるようにと。


 だが手を閉じたりしているのはそれだけじゃない。


 ――竜人族の『忌み児(いみご)

 その言葉を何故か知っているような気がしてならない。どうしてか?

 目の奥が熱くなる。その言葉を聞いた時、瞼の奥で得も言われぬ熱量を感じたのだ。

 ミライは顔を上げて、老人を見た。

 老人は驚きながら寄りかかるシリィの頬を優しく撫でていたが、ミライの視線に気づいたのか、目を細めると向き直り言った。

「ミライ…、気が付かぬことではあるまい。お前の祖父も良く話していたであろう。具師たるお前の祖父は装具だけの事に通じていたわけではない。この世界のあらゆる伝承に通じていたはずだ」


 ――祖父、


 ミライは何かを感じて、記憶を探った。そうだ祖父だ。祖父が自分に話していたのだ。それが何であったか?


 懸命に思い出そうとするミライに老人が言った。


「まだ話は終わってはいない。さて、続けていいかな」


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