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竜と老人  作者: 日南田 ウヲ
117/122

その117

(117)


 ――聞きたくなった、

 だから、風に問う。


 生者とは誰であろう。

 それは間違いなく戦場を生き延びた者たちである。

 皆、運命に逆らいながらも

 何かに立ち向かい

 何かを信じた者達を言うのかもしれない。


 今この瞬間、

 鷲の嘴にも

 ルーン峡谷の路にも

 僅かに生き延びた人々が居る。


 峡谷に死者に対して沈痛の面持ちでその生前を偲ぶ戦士たちの声と涙が響く。

 彼等の希望とは何だったか。

 それは夏の輝く太陽を行く、これからの若者たちがこれからも続く人生を生きる事。

 戦場は消えた。

 今此処は誇り高きアイマールの戦士の亡骸が横たわる永久(とこしえ)の大地になった。

 死者達の安寧の願いとは

 生者達の

 これからの限りない幸せが続くことなのだから。


 やがて戦場を避難した若者達が戻って来すて、大地に横たわる多くの騎士達の亡骸を見て、その側ですすり泣く声が響き始める。

 シルファへ向かう夏の太陽は残酷だ。

 若者達に自分達が生きるという事は多くの犠牲があって、生が続くのだということ教えたのだから。

 多くの犠牲に果てに生はある。

 それをまざまざと知った若者たちはせめてもの感謝を込めて、息絶えた戦士達に接吻した。

 アイマールに於いて

 接吻は人生における約束を意味する。

 この場合の約束とは憶測するべきも無い、

 ただ

 これからを生きるという若者達の切なる願いを誓った約束なのだ。


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