ちょっと昔のHR
別に異常なんかじゃない。自分もやっている。
する事がないからだ。
電車の中、バスの中、エレベーターの中。
スマホを付ける。なんて事はない。車両全員がやっていてもおかしくはない事だ。
新聞広げなくても、カバー付けた本を広げなくても、こいつの中に入っているから使うのだ。
「………………」
◇ ◇
「いやー、便利な世の中よね。ホント」
工藤友の通勤時間は、動画視聴である。
自分が子供時代にやっていたアニメ、バラエティを見ている。そーいう時代の面白さは、大人になっても心に届くものがある。大人になるってこの心に何も響かなくなる、物になるって事かもしれない。
勘ぐって、疑って、泣いて、それでも自分がそれでいい選択をしていく。
「ルパン三世の再放送のために、駆け足で家に帰ったのが、懐かしいなぁ。小学校の頃だよ」
「女子小学生がルパン三世の再放送のために、走って家に帰るのは友ちゃんぐらいじゃないですか?」
「ルパンも次元もカッコいいおじさんじゃん。もーっ!いつもユーモラスあって、決める時は決める、そーいう男がいいじゃない!安西、ただの顔だけで判断しちゃダメでしょーよ」
「いや、ルパンも次元もアニメ、漫画のキャラクターですけれど?」
まぁ、男性としての意見なら。おじさんぐらいの歳になって、カッコいい事をしていたいものだ。へこへこと頭を下げるだけ、ひーひー言うだけでは良くはないな。
三枚目と二枚目を併せ持った男になりたいものだ。
「今、どーなのかしらね?」
「うーん、今はネットだったり、スマホが相当普及しておりますし。娯楽も広がって多様化してますよね?遊びも高度になってきています」
「急がずと楽しめるものばかりかぁー。あー、ちょっとあとに生まれたかったなぁ」
「その言葉、歳をとった事に後悔しているって、心の声だったりしてます」
時代は色々変わっていく。
1年、2年程度の差であれば共通できることはあれど。5年以上離れれば、もう別世界。いや、別の時代。
考えの一つ、知識の一つ。まるで違う。
学校終わったら塾なり、通信教育なり、家庭教師が当たり前だろうか?ゲームはもうデカい画面を占領して、熱くやらなくなっているだろうか?その時はそうだったことが、明日にはまったく違っていたみたいな現象ばっかりだ。子供も大人も最先端を走ることが命令されている。
「昔はすごく良かったなーって思えた事が、今見ると違和感だったなって思えるものもあるよね」
「あるあるだね、林崎」
「漫画とかアニメの納得できるなーって思える、見せ方。でもちょっと頭が回ると変だなって、気付く」
「あー。分かる。当時はすっごく良いマンガだったと思ってたんだけど、周りの声が大きくなったか、もっと良いマンガが出て来たとか。恥ずかしながら古本屋に売ったの覚えてる」
「今はフリマやメルカリとかの通信販売も凄いですからねぇ。近所の買い取り屋さん、潰れちゃってました。私も乗り換えちゃったけど」
当たり前なんだろうが、気付きたくないものでもあるんだろう。
頑張ってみようと思う事が少なくなってきたかもしれない。でも、夢は沢山増えて来たかのような。
「俺も再放送ってか、有料チャンネルのアニメ放送時間に合わせて、急いで帰宅したなぁ。アニメ映像は勉強にもなった」
「松代さん。そのアニメってもしかして、ガンダムやパトレイバーですか?」
「いいや、安西。松代さんならセーラムーンとか、おジャ魔女どれみとか。少女ものよ」
「意外とポケモンとかデジモンでは?」
「当てないでくんない!?全部、当てんなよ!」
今や月額料金などでアニメ見放題。または動画サイトで発掘したりと。
いちいち再放送に合わせて、録画や帰宅なんてあり得ないかもしれない。
だからその分、みーんな時間を大切にしているのかも。
「セーラムーンの再放送あるから帰りたいとか、言ってそー」
「言うんじゃねぇ!」