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16 『コタンの明暗』

フアン・サンチェス・コターン。

暗闇に浮かび上がるような食物などの静物画。

『コタンの明暗』




 この作品はアトリが画家して世に取り上げられた頃に描かれたと言われる。なお、『カラヴァッジョの闇』『レンブラントの光』も同時期に描かれているとされ、これらは『糸繰機の三部作』と呼ばれる。

 これら三作品には糸繰人形を操るためのコントローラーが描かれ、そこにテグスが塗り込まれているのが共通しており、そこから名付けられた。


 『コタンの明暗』は緑の木棚の内側を描いており、棚に置かれた果物などが並び、奥には明かりが届かず黒く染まっている。傍に吊り下げられた白塗りの糸繰人形が、より鮮明に映る作品である。

 棚の上段にはオレンジが一つだけ置かれ、表面の凹凸に合わせて山吹色にも近い黄色が細やかに色味を変え、実に繊細に描かれている。

 中段に積まれているのは微細に形が異なる赤、青、黄のリンゴ種の果実。皮の表面に浮かぶ斑点模様が色合いをより深く鮮明にしている。

 棚の下段に見えるのは瓶蓋の赤。ガラス瓶に沈むマルメロは全体に赤黄じみた色を含み、浸かってからの時間を示す。

 その棚の右上に引っ掛けられた木製のコントローラーから、実物のテグスが伸びるように塗り込められている。それは糸繰人形へと繋がるように埋められている。糸繰人形はたわんだテグスに従って中段に腰掛けるように置かれている。

 その白塗りの人形の印影が持つ立体感は、人間の目に人形が実在すると錯覚させたほどだ。


 『糸繰機の三部作』の最初とされるのがこの『コタンの明暗』である。

 果物は栄光を表しているが、背後を暗闇が覆っている。その中で糸繰人形は佇んでおり、未だどちらに向かうのかが定まっていない。

 アトリが画家として世に出された時の情景を描いているとも言われ、糸繰人形がアトリの象徴であるとされている。

 画家として扱われることがなかったカナリーが、アトリが画家となることにどのような思いを抱いたのか。

 それを正確に残しているデータは存在していない。


 しかし、カナリーはアトリの行く末について、ある程度の確信を得ていたと考えられている。

 その行く末については、残り二点の『糸繰機の三部作』の項にて記す。







果物が置かれている段毎に違うのは行く末が分かれているからかもしれません。

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