77A列車 「まいづる」
「まもなく綾部、綾部です。綾部では列車の切り離しを行います。」
そのアナウンスが流れる。7両編成で走っている「きのさき」・「まいづる」は綾部で切り離しが行われる。その下準備として、すでに4号車と5号車の間は貫通路が閉じられ、車内からの通り抜けは一切出来なくなっている。その光景は太陽に照らされて伸びる影からも分かる。
「なお、反対列車が遅れておりました影響で、当列車も3分ほど遅れて運行しております。お急ぎの所ご迷惑をおかけいたしましたことお詫び申し上げます。」
「そうなの・・・。」
この後の接続のことを考えた。まぁ、予定には何の影響もないからいいか。影響があるのは西舞鶴からの寄り道のほうだな。
綾部の到着すると「まいづる」はちょっとの間待たされる。前に連結されている「きのさき」が先に綾部を出発し、「まいづる」はその後に出発する。
「フォホホホホホ・・・。」
綾部を出発した時、「まいづる」は逆走を開始した。椅子の向きとは反対向きに走って行くのは少々気持ちが悪い。椅子の向きを進行方向と同じ向きにしてもいいが、僕の後ろの列には2人座っているため、もちろんそんなことはしない。
車窓を見てみると道のわきには雪が積もっている。道の部分には融雪のために散水されている。ああいう融雪設備は初めて見たな・・・。
結局3分遅れのまま「まいづる」は西舞鶴に到着した。
「フォホホホホホ・・・。」
287系を見送り、僕は階段を上がった。
僕は切符を取りだした。
「途中下車です。」
駅員にそう言った。そう言うと駅員は僕の持っている馬堀からの切符に西舞鶴と書かれたスタンプを押した。これは途中下車印というもので、その駅まで使用したことを証明するものである。
さて、途中下車印の押された切符を持って向かったのは京都丹後鉄道乗り場だ。列車の出発は10時09分。最初から乗れるとは思っていないが、どうだろうか・・・。
京都丹後鉄道乗り場の前は人がたくさんいた。窓口の女性は「宮津へ急がれるのでしたら、この列車乗ってください。」と広報している。
「整理券いるんでしょ。」
「車内で発売しますので、とにかく乗ってください。」
(とにかく乗れって・・・。)
先に止まっている濃い赤色のディーゼルカーに乗れそうではあるが・・・。
10時09分。そのディーゼルカーが西舞鶴を出発する。10時09分の列車が出発するとサッシうえのラミネートを窓口にいた女性が手作業で外し、10時37分発のラミネートを手作業で取り付ける。かなり古典的な方法だが、それでも追いつく列車の数なのだと分かる。
「あのぉ、すいません。」
「はい。お伺いします。」
「次の宮津発の「あかまつ」なんですけれども、席あいてますかね。」
「次の「あかまつ」ですか。・・・次の「あかまつ」は昼からになりますけれども・・・「あかまつ3号」ですか。」
あっ・・・。それは調べていない。僕は携帯電話を取りだした。家を出る前に時刻表のページを写真に収めてきている。天橋立からやってくる「あかまつ」は何号なのだろうか。
「・・・「あかまつ2号」ですね。」
「「あかまつ2号」ですか。・・・空いていますね。」
「じゃあ、大人一人でお願いします。」
「はい。乗車券とか買われていますか。」
「いえ。まだ何も買ってないんです。」
「では、乗車券も一緒に発売しますね。ここからどちらまで行かれますか。」
「宮津までです。」
「では西舞鶴から宮津までで発売しますね。」
電卓をパチパチとはじく。
「では、乗車券、整理券。しめて1680円いただきます。」
1680円かぁ・・・。1680円を払うと女性は切符をまず渡してきた。西舞鶴から570円区間と書かれた硬券が出てきた。今時硬券なんてなかなか見ないものだ。
僕はその切符を早速使い、10時37分発の普通天橋立行きに乗り宮津へ向かった。




