76A列車 狂行の始まり
12月18日。
僕は京都駅にいた。ここから乗る列車は8時36分発の特急「きのさき3号」福知山行きと「まいづる1号」東舞鶴行きだ。僕が乗るのは「きのさき」の後ろに連結されている「まいづる」のほうだ。現在、「きのさき」・「まいづる」が出発する30番線には「はるか」が止まっている。
(この時間の「まいづる」って30番線から出発するのか・・・。)
そんなことを思いながら、京都駅の駅名標を見上げる。京都の次は新大阪になっている。確かに、「はるか」であれば次の停車駅は新大阪であるケースが多い。
京都には朝方の列車がひっきりなしに出入りする。たくさんの中距離旅客を乗せた新快速が右へ、左へと走る。その間を縫うように特急の回送列車も入ってくる。
「30番乗り場から「はるか11号」関西空港行きが発車いたします。」
そのアナウンスが流れると「はるか」のドアが閉まり、京都駅を出て行く。それと入れ替わるように「きのさき」・「まいづる」が入線する。
「きのさき」・「まいづる」に使用される車両は287系。車体側面を見るだけなら、西日本旅客鉄道のフラッグシップ「サンダーバード」に使われている車両681系、683系と同じような雰囲気だ。窓下に入るラインは濃い赤色だ。
停車するとここまで運んできた旅客がホームへと流れ出す。乗客が降りきったことを確認すると今度は清掃員が乗り込み、車内清掃を開始する。清掃が終了すると今度は京都からの旅客が車内に入る。
8時36分、定刻で京都を出発する。すぐに「くろしお」チャイムが流れる。左側には「まいづる」と同じ車両287系の「くろしお」が京都を発っている。このチャイムがながれるにもかかわらず、行く場所は山陰地方。イメージからはかなりかけ離れた場所へ向かっていく。
「皆様、おはようございます。今日も西日本旅客鉄道をご利用いただきましてありがとうございます。特急「きのさき3号」福知山行きと特急「まいづる1号」東舞鶴行きです。前より4両「きのさき号」福知山行き。後ろより3両「まいづる号」東舞鶴行きです。途中の停車駅は二条、亀岡、園部、綾部です。」
ポイントを軽快に超え、梅小路公園を通り過ぎると北へと舵を切る。JR七条駅の予定地を通過し、二条へと滑り込む。短い停車の後に上を出発する。列車は京都市内へと駒を進め始めた。
「ハァ・・・。で、ナガシィ君は嫁をおいて九州に行っちゃったと。」
呆れた顔をするのは黒崎梓・・・じゃない今は結婚して子供も持って鳥峨家梓に名前が変わっているんだった。
「ああ、九州に行っちゃったというか、まず東京に行って九州に行くんだけどね。」
「はっ・・・。えっ、一体何がしたいの。東京って九州と全然違う方向よね。何で九州行くのに東京行っちゃうの。」
「あのね。最初は「サンライズエクスプレス」って言う寝台特急に乗りに行くために旅行計画してたのよね。それが、12月1日ぐらいだったかな。九州の「はやとの風」って言う特急が不定期化されるって聞きつけて、それで九州まで行っちゃおうって思ったらしいの。」
「何かいろいろ頭が痛くなるんだけど・・・。」
梓は右の方へ指を動かし、次に左の方へ指を動かした。
「鉄道ファンって変な乗り方しないとダメな病気かなんか・・・。ほら、萌ちゃんがよく見てるユーチューバーの・・・播州さんだっけ。あの人も変な移動の仕方して日本2往復もしたんでしょ。」
「別に変な乗り方しないとダメって言う病気は無いわよ。ただね、私にも理解できるんだよね。京都→新大阪でグリーン車に乗ったり、東京→上野で「グランクラス」に乗ったり・・・。」
「グランクラス」の券は大富豪系ユーチューバーのことだ。
「・・・何か萌ちゃんと話してると私の頭がおかしいのかって思えてくるわ・・・。」