89A列車 終わりよければすべてよし
新大阪21時37分着。3分の停車の後21時40分に新大阪を発つ。
「お待たせいたしました。」
乗務員室から出てきたのは男性の車掌だ。新大阪では男性と女性車掌の二人が1号車の乗務員室に入ってきた。
「あっ、これなんですけれども。先程西日本旅客鉄道の車掌から引き継いで貰ったことが出来ないかと言うことなのですけれども・・・。」
「はい、かしこまりました。それでは少々お待ちいただけますか。」
そう言うと車掌は乗務員室扉の鍵を閉め、中に消えていった。
10分ぐらい待っただろうか、車掌が中から出てきた。
「はい、それでは特急券のほうを変更させていただきました。差額が420円になります。」
「あっ、ちょっと大きいのしかないです。」
「大丈夫ですよ。」
僕は1万円札を渡し、差額を貰う。お金のやりとりが終わったところで、僕は女性車掌からぺらぺらの紙を貰った。元々博多→新大阪で徴収されていた料金を博多→京都で徴収するようにしたのだ。そして、発行元には「東京第一運輸所 64A」となっている。
「どうもありがとうございます。」
僕はそう言い、1号車を後にした。
京都で「のぞみ64号」から下車する。時間は21時53分。先回りは成功だ。僕は出発する「64号」を見送り、1号車の乗務員室扉の窓から顔を出している女性車掌に軽く頭を下げた。
乗り換え改札口で切符を見せて、在来線に乗り換える。0番線の電光掲示板には22時06分特急「びわこエクスプレス4号」の表示が出ている。
「間に合った・・・。」
京都駅0番線から2番線から発車する米原行きの新快速を見る。車内には帰宅客が立っている。そもそも「びわこエクスプレス」に乗ったのはこの時間の新快速に乗りたくないからだ。乗り遅れたのでは「びわこエクスプレス」の切符を取った意味そのものがなくなってしまうのだ。
「0番乗り場ご注意ください。まもなく、特急「びわこエクスプレス4号」米原行きが到着いたします。自由席は後ろより4号車から9号車の6両です。指定席は2号車、3号車。1号車はグリーン車です。乗車には乗車券の他に特急券が必要になります。あらかじめご了承ください。」
アナウンスの後に入ってくる683系4000番台に僕は乗り込んだ。グリーン車には僕以外誰も乗っていない。貸し切りだ。
「ああ・・・。これはグリーン取って正解だった・・・。」
ふかふかのシートに抱かれるとそんな感想しか出てこない。
石山を出たあたりで検札が来た。その車掌も新八代からの乗車券を見せると「遠路はるばるお疲れ様でした。本日は山陽新幹線が遅れまして、申し訳ありません。」と声をかけた。
「いやいや、「びわこエクスプレス」に間に合わせてくれた皆さんのおかげですよ。」
僕はそれにそう返すのだ。
「ただいま。」
ようやっと家に着いた。新幹線遅れていたのに、到着時間は変わらない。
「お帰り、私のこと連れてかないから罰が当たったんでしょ。」
「ハハハ・・・。」
後でネタにされそうだな・・・。




