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87A列車 かわいい線路侵入者

「んっ。」

「まもなく、福山(ふくやま)です。山陽線(さんようせん)福塩線(ふくえんせん)はお乗り換えです。次の福山(ふくやま)では到着後、すぐに発車いたします。今日も新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございました。」

明るい車内チャイムが流れた後に福山(ふくやま)に着くというアナウンスが流れる。ここまで戻ってきたのか・・・。「さくら568号」は300キロのトップスピードから減速する。福山(ふくやま)ではアナウンスの通り短い停車ですぐに出発する。

「今日も新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。次は岡山(おかやま)岡山(おかやま)です。」

スピードをぐんぐん上げていく。

「ご乗車ありがとうございます。お客様にお詫びとお断りがございます。」

自動放送を遮るように車掌の放送が入る。

「本日、夕方。岡山(おかやま)駅にて旅客の犬が線路内に侵入する事象が発生いたしました。これに伴い山陽新幹線(さんようしんかんせん)には大幅な遅れが発生しております。なお、現在旅客の犬は発見できておらず、岡山(おかやま)相生間で減速運転を行います。この先この列車にも大幅な遅れが見込まれます。お客様には大変ご迷惑をおかけしますことお詫び申し上げます。」

(線路内に犬・・・。)

まてまて。となると新大阪(しんおおさか)で「びわこエクスプレス4号」に間に合わないかもしれないのか・・・。「さくら568号」はまだ加速しているが、これがいつまでつづくのだろうか。考えを巡らせているうちに加速が終わり、失速し始める。

「・・・6号車だったな。」

僕は席を立ち、6号車の車掌室に行った。4号車から車掌室に行くためには途中グリーン車を通らなければならない。本来ならグリーン券を持っていない普通車旅客がグリーン車を通り抜けるのは問題だが、今はそうも言っていられない状態にすぐになる。今回は緊急と言うことで通常時の規定を破ることにする。

山陽新幹線(さんようしんかんせん)って今どれぐらい遅れているんですか。」

車掌室に前に行くと、僕はそう聞いた。

「今はこの列車はまだ送れていないのです。」

車掌はそう言った。だが、「さくら568号」の失速は止まらない。この列車も数分単位で遅れ始めているだろう。

岡山(おかやま)の手前で結構列車が待たされています。その列車は15分、20分ぐらい遅れていますので、この列車も15分、20分ぐらいの遅れが見込まれます。」

15分、20分かぁ・・・。所定で「さくら568号」が新大阪(しんおおさか)に到着するのは21時25分。「びわこエクスプレス4号」の新大阪(しんおおさか)出発時間は21時41分。15分遅れれば新大阪(しんおおさか)での接続は間に合わない。

 車掌は地震の前にあるモニターを操作する。そこには山陽新幹線(さんようしんかんせん)の路線と駅が簡単なイラストになって表示されている。そして、下の線の下には数字にAと付いた表示が出ている。アレは全て列車番号だ。その隣には19,とか21とか表示がある。おそらくあれば現状の遅れなのだろう。そして568Aの隣には2と出ている。

 モニターに表示される岡山(おかやま)駅には今566A「さくら566号」が入る。だが、岡山(おかやま)の手前で62A「のぞみ62号」、754A「こだま754号」がいる。当然、これらがのかないと「さくら568号」は岡山(おかやま)には入れない。

 そうしているとついに列車が止まった。止まったのは新倉敷。岡山(おかやま)駅の一つ手前だ。これはダメなやつだ。

「僕、ちょっとこの後の接続があるので、あんまり遅れると・・・。」

「「しおかぜ」。」

「いえ、新大阪(しんおおさか)で「びわこエクスプレス」に乗るんですけれども、この列車所定であれば新大阪(しんおおさか)着が21時25分で21時41分発の「びわこ」に間に合うんです。でも、15分以上遅れるとなると新大阪(しんおおさか)21時40分着で接続できなくなりますよね・・・。」

「そうですね・・・。新大阪(しんおおさか)に先着されたいのであれば、岡山(おかやま)で後続の「のぞみ64号」に乗り換えていただいたほうがよろしいですね。この列車、所定であれば姫路(ひめじ)駅で「のぞみ64号」に抜かれますので。」

そう、所定であれば・・・。「のぞみ64号」の新大阪(しんおおさか)着は21時20分。15分遅れで到着は21時35分・・・。十分間に合う。それに、今僕は「さくら568号」の指定席特急券を持っているが、岡山(おかやま)で降りて「さくら568号」に間に合わなかったという扱いにして「のぞみ64号」の自由席に乗る事は出来る。

「そうなんですよねぇ・・・。」

「今は「のぞみ64号」が所定で運転すると言うことで乗り換えていただくほうがよろしいかと存じます。」

「・・・すいませんね。ありがとうございます。」

「ただ、「のぞみ号」が姫路(ひめじ)でこの列車を追い抜かないことも十分あり得ますので、それを十分考慮した上でお乗り換えください。」

車掌はそう釘を刺した。

「分かりました。ありがとうございます。」

僕は「のぞみ64号」が所定通りに運行する事に賭けた。

 「さくら568号」は岡山(おかやま)に入線する。僕は荷物をまとめ、「さくら」から降りた。すでに遅れは10分発生している。このまま「さくら」に乗っていては新大阪(しんおおさか)で「びわこエクスプレス」には間に合わない。客扱いを終了すると「銀河鉄道999」の発車メロディーがかかり、ドアを閉め、出発する。

「まもなく23番線に「のぞみ64号」東京(とうきょう)行きが到着します。」

「お待たせいたしました。23番線に遅れて織間死す「のぞみ64号」東京(とうきょう)行きが到着いたします。」

新大阪(しんおおさか)には先着できるな・・・。」

 僕は99%確信した。


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