表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/16

84A列車 天険分け入る「いさぶろう」

 13時01分。「かわせみ やませみ」は人吉(ひとよし)に到着する。ここまで「かわせみ やませみ」で一緒だった乗客はほぼ全員が人吉(ひとよし)で降りた。この先、鹿児島方面に抜けていく乗客は僕を含めて片手に収まる数にまで減った。

 人吉(ひとよし)から乗り換える列車は普通列車「いさぶろう3号」である。普通列車なのだが、名前が付いている珍しい列車だ。

 しばらくすると「かわせみ やませみ」の右隣に赤いディーゼルカーがホームに入ってきた。顔はここまで乗ってきた「かわせみ 山蝉」と何ら変わらない。ただと双が赤色に変わっただけのような印象を持つ。この車両が「いさぶろう」と名乗るのだ。

 車内に入ると「かわせみ やませみ」と同じように木材を多用された装飾が施されている。僕は指定券の番号を確認して、進行方向右側のボックスシートに腰掛ける。

 13時22分「いさぶろう3号」は人吉(ひとよし)を出発する。

 さて、ここで肥薩線(ひさつせん)の歴史でもざっくりとおさらいする。

 肥薩線(ひさつせん)熊本(くまもと)から鹿児島に至る路線として建設された元鹿児島本線(かごしまほんせん)である。これは海側のルート(現在の肥薩おれんじ鉄道線)を取った場合、戦災により不通になるのではないかという危惧から山側(肥薩線(ひさつせん)ルート)に決定したためによる。しかし、肥薩線(ひさつせん)ルートで鉄道を通すというのは困難の連続でもあった。それはこの先に繰り広げられる「天険」が物語ってくれる。

 「いさぶろう」は時速40キロ程度で坂を上っていく。トンネルを抜けたりすると視界がかなり開ける。その光景に僕は日本三大車窓が近づいていることを実感せざるを得ない。

(エンジン変えてあるはずだけど・・・。遅い。)

 列車はトンネルに入る。今自動放送ではこのトンネルの入り口の真上を駅に止まってからまた通ると言っている。

 トンネルを抜けると視界が開け、右側の上の方から一本の線路が合流する。その線路は大きく円を描くように築堤を上っていく。今右へ流れていった線路はこれから止まる駅に入ってから入る線路である。

「まもなく、大畑(おこば)大畑(おこば)です。この大畑(おこば)駅は大きい畑と書いて「おこば」と読みます。」

2両編成の「いさぶろう」は大畑(おこば)駅に到着する。ホームは2両編成が止まるには長過ぎ、不釣り合いだ。このホームの長さは昔、肥薩線(ひさつせん)がローカル線ではなかったことを示している。「いさぶろう」に乗車している人たちはこの大畑(おこば)に止まる時間を使って、この変わった駅を写真に収めている。

 10分程度の停車の後、「いさぶろう」は大畑(おこば)を出発する。「いさぶろう」は大畑(おこば)駅に到着した時と同じ方向へ向かって進み始める。ポイントを超え、列車はさっき右上から現れた線路に入る。これは「スイッチバック」という登坂方法である。

 スイッチバックの線路はすぐに行き止まりとなる。行き止まりとなると、運転士は今前になっていた運転台から、後ろの運転台へと移動する。発車準備が整うと「いさぶろう」の進行方向は元に戻り、大畑(おこば)駅を少々見下ろすように築堤を登っていく。しばらく登り続けると「いさぶろう」は減速を開始する。

「まもなく、右下に先程停車していた大畑(おこば)駅をのぞむことが出来ます。」

との案内がある。列車は大畑(おこば)駅が見えるところに停車する。茶色の木々の向こうに入り組んだ線路を持つ駅が見える。左に見える線路が駅に入る前に登っていた線路。右に見えるのは駅を出発した後に通った線路だ。

「発車します・・・。」

エンジンがうなり、「いさぶろう」は再び坂を上り始める。昔は坂の途中で停車すると発車させることは困難だっただろうなぁ・・・。それを行もすんなりやってしまうとは。技術の進歩を実感するなぁ・・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ