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救世ノラヴドール~俺とセクサロイドの気ままな旅~  作者: こもれび
第一章 聖戦士と漆黒の妖精
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第五話 探偵はじめました

 人は絆を尊ぶ生物であると俺は思っている。情けをかけ、思いやりで接し、苦しみをも享受する。そうすることで絆を育み優しさや温もりを手に入れていくのだ。

 そう、いつだって人は人を求めている。苦しい時、つらい時、特にその想いは大きくなる。

 だからこそ、困った人を助けるのは当たり前のことなのだ。


 だからね? そういう人助けの際にほんのちょっとだけ気持ちにお礼を貰っても、悪くもなんにもないわけよ。そうなのよ……そのはずなんだが……


 

「いやあ、流石に現ナマ目の前にすると、かなりアガリますよね」


「…………」


 現ナマ言うな‼

 う、ううむ。

 なんというか正直マジで悪い事しちゃってる気がしてます。俺、まだ何にも悪い事してないのに‼


 ここは宿の個室。

 普段は一番安い雑居部屋で寝るのだが、今日は大金もあるってことで一部屋借り切った。

 う、うん、なんかこれだけで贅沢すぎる気がしてしまう。

 ただ、一応この部屋は二ムの部屋ということになっている。そりゃそうだ。基本二ムは『女』なわけで、男女が同じ部屋で一夜を共にするということはまさにそういうことだ! になっちまうから、俺は男の雑居部屋に後で退散だ。流石にアンジュちゃんにそんな誤解されたらもう生きていけないし!

 とか思っていたら、湯殿から二ムが帰ってきたところで俺に声をかけてきたってわけだ。


「ふう……いいお湯でやんしたよ? ご主人も入ってくればいいのに」


 二ムは髪の毛をバスタオルで巻き上げ、少し透けたネグリジェを身に着けている。流石に今日は穴あきのあれは着てないな……ってか、ネグリジェの下はノー着じゃねえか‼ い、いろいろ、いろいろ見えちゃってるぞ!


「俺は後でな……ってかお前な……そんなかっこすんじゃねえよ。露出狂か‼」


「えへへ……こんな格好するのはご主人の前だけでやんすよ。サービスっすよサービス。なんならご奉仕いたしやしょうか?」


「いらんっつーの‼」


 くっ……なんで組み立てた俺が、自分の用意したパーツにドキドキしなきゃいけねえんだか。

 女の形で動かれると、こうもエロく感じちまうから不思議だ。

 ベッドに座る俺の脇にピッタリ寄り添う様に座ってくる二ムをを極力無視するように俺は努めた。


 さて、俺達の目の前には今度は完全なゴールド色の金ぴかのコインが山積みになっている。

 うん、さっき下の食堂で広げていたときの硬貨とはまるで違う輝き。多分これが正真正銘の『金貨』ってやつなんだろうな、持つとめっちゃ重いし。

 

「と、ととととりあえず、フィアンナの依頼を完全にこなさないとな!」


「ご主人、声がめっちゃ裏返ってますね。本当にビビりですねー」


「う、うっせ! びびってねえし。ぜーんぜん平気だし」


 嘘です。めっちゃビビってます。ニヤニヤと二ムに見られているのが本当に苦痛だが、今は文句を言う気も起きないし。

 いや、だってこれマジで金だよ? いくら仕事の手付だって言ってもまだなんにもしてないわけで、もし仕事しくじったら本当に申し訳ないし、そう思うと本当に受け取っていいのかなんかもやもやしちゃうし‼


「ま、せっかくもらった金ですし、まずはパァーっと……」


「だ、だだだだ、ダメに決まってんだろうが。まずは使う前にどうやって仕事を完遂するかを話し合ってだな」


「いや、そんなのとりあえずセシリアさんの親父さんをグーでパンすれば終わりじゃないっすか?」


 とか、そんな物騒なことをニコニコしながら言ってるし。お前その右拳握り込むのマジやめろ! ってかお前がグーしたら大抵の人間消し飛んじゃうだろうが!


「そんな簡単じゃねえだろ? そもそもそのセシリアの親父のスルカンって人が本当にフィアンナの親父さんを殺したかどうかも分かってねえし、そもそも噂にもなってるその『魂の宝珠』を盗んだのが本当は誰なのか? って話からだ。少なくとも俺はフィアンナの親父さんは盗んではいないと思ってる」


「好きになった女の子の親だからですか?」


「ちげーよ、バカ」


 なんて短絡的なことを聞くのこの子は。お前の電子頭脳どうなってんだよ。まあ、フィアンナが悲しむ顔は見たくないのだけれども!


「結界内の宝珠に触れるのはその時父親のライアンただ一人ってことになっちまう。フィアンナが王都に居たんだから、宝珠がなくなれば疑われるのは間違いなくライアンだ。実際に街中の人がそう思ったらしいしな、そんな分かり易い状況をわざわざ自分でつくるかよ。それに、まだフィアンナの話だけだしな」


「お、ご主人はフィアンナさんのことも疑ってるっぽいっすね」


「まあ、今のところは当然だな。何の裏もとれてねえし、そもそも俺はその噂すら知らねえし」


「あ、ワッチは知ってやしたよ。みんな話してやしたから」


「え? そうなの? 俺一か月も冒険者やってたけど誰も話してくれなかったけど」


「あー、それはご主人がちょっと色々あれであれな可哀そうな感じのひとだからじゃないっすかね?」


「おい! あれとかあれで俺をどう表現したいのか聞こうじゃないか! その前にお前のマザーボード引っこ抜くが」


「引っこ抜かれたら本当に何もしゃべれないので本当に止めてくださいすいやせん。あ、でも意識がないうちにワッチのアソコとかアソコに悪戯しても許してあげちゃいます!」


「するかっ!」


 何を言ってんだこいつは悪びれもせずに。


「だからやることはまずは聞き込みだな。ライアン・アストレイとスルカン・エスペランサについての評判をなるべくたくさんの人から聞く……」


「あ、アストレイ家とエスペランサ家についてでしたら、もう213件の情報がありますよ」


「へ? そうなの……か?」


 そういや二ムはバイト先で色んな奴の話を聞いてたんだったな。


「基本ワッチの聞いてきた範囲での統計からなんですが、およそ72%の人がライアン・アストレイが宝珠を盗んだせいでアンデッドが湧いたと思っている様っすね。でも90%の人がライアンはそんなことをするような人じゃなかったとも言ってやした。かなり人徳はあったようっすね。それとスルカンに関してなんすが、収賄を繰り返していたようで領主になったことを快く思ってない人が65人いましたね」


「お、おお……もうデータかなり集まってんじゃねえか。なら、魂の宝珠についてはどうだ? どんなアイテムなのか情報は入ってるか?」


「ええとでやんすね。ちんこん……チンコン? ……いや鎮魂の……」


 なんで今頬を赤らめて俺を見ながら繰り返しやがったんだよ。鬱陶しいよ。


「鎮魂の為のアイテムだってことくらいしか皆さんご存知ない様っすね。ただ一人だけ、変なことを言ってる人がいやした」


 と言いつつ二ムは人差し指を立てて俺に説明。


「ワッチがアンデッドがたくさん出て大変っすよねって言ったらその人は、『もうそんな時期か……』って言ったんでやんすよ。これ実は超有力情報じゃないっすか? 褒めていいっすよ! なんなら挿れちゃっても!」


「って何をだよ‼」


 ったくこいつは本当に脳内お花畑だな。


「で、そいつはいったい誰なんだ?」


 二ムはむふふーんと口をもにゅもにゅさせながら言った。


「そりゃあれですよ。ご主人が通ってる鍛冶屋の大将でやんすよ」


 ああ、あの人なら確かに知ってそうだなー……と、俺はあのモップみたいな髭面を思い出して一人納得した。

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