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第四十六話 破壊の金獣・キングヒュドラ①

雪の為、投稿が遅くなりました。

あれ? なんだか電車が遅れたみたいな感じになってしまった。

 べリトルの発した声に確かに魔力がこもっていたのだろう。

 その直後に足元がが震え始め、そして俺たちのいる穴倉の壁や天井が大きく崩れ始めた。明らかに足元で何かが暴れている。

 そう確信した時だった。


「おわぁっ!」「だ、旦那!!」


 俺達のすぐ前の地面が盛り上がったかと思った次の瞬間、地面を突き破って巨大なヘカトンケイルの頭が現れた。

 当然だが、そこには無数の目鼻口があり、蠢いているかと思いきや、そのどれもが虚ろなまま微動だにしていなかった。どう見てもこれは『死んでいる』?

 その直後、そのヘカトンケイルの頭は、『それ』に一気に噛み砕かれた。

 突如現れた異物……それは、眩く輝く金色の顔。大きく上下に割かれた巨大な口にらんらんと輝く大きな目。額からはまるで鋭利な槍の穂先のような二本の角が生え、そして黄金の鬣がはためいていた。

 その巨大な目が一瞬俺たちを睨んだかと思うと、そのまま一気に大口を開けて襲い掛かってきた。


「お、おわぁっ! だ、旦那! とにかく逃げるぞ!」


 言うが早いか、シシンは俺のズボンの背中側をむんずと掴んだ。そして俺をぶら下げたままの格好で一気に外へと向けて駆けだしていく。

 俺はといえば、ズボンが腹に食い込んでめちゃくちゃ痛いし気持ち悪い。だが、そんなことを言っていられる場合ではなく、高速で移動している俺達に今にも追いつきそうな勢いで、金色の大口が目前に迫ってきていた。

  

「で、出口っ‼」


 見えたのは陽の光か……ちょうど穴の出口と思しき場所に辿り着き、そのまま跳躍して穴から転がり出る……と、同時に狭い洞穴を一気に破壊してその巨大な『竜の頭』が飛び出してきた。

 

「な、なんですの!?」


「紋次郎‼」


 オーユゥーンとヴィエッタの声が聞こえ、そしてそれと時を同じくして、たくさんの女達の悲鳴が耳に届く。

 パッと顔を上げた先にはまだ数十人の治療を終えた女たちの姿。彼女らは一列になって街へと正に向かおうとしていたところのようだが、この異変に一様に腰を抜かしてしまっている。

 それを見てから振り返ると、そこには……

 当然のようにあの金色の竜の顔。

 いや、それはただの竜などでは当然ない。なぜなら、あれこそが、俺達の世界を食いつくし、人類を全滅させんとした最悪の凶獣の姿なのだろうから。


「くそったれ……成体の金獣かよ……」


 穴から飛び出た長い首のその竜頭は一気に空へとに駆け上っていく。そしてそれを追うかのように、いくつもの同様の金色の竜の顔が地面を突き破って現れる。そしてそれらが飛び出た地面そのものが爆裂して、そこから金色に輝く6枚の超巨大な翼が、空を覆い隠さんばかりの勢いで持ちあがり広がった。

 翼長は軽く数百メートルはあるだろうか。そのあまりの大きさに目を見張るもその全身像を見て更に息を飲んだ。


 それは超巨大な翼竜。

 しかし恐竜としての翼竜ではない。異様に長い尾を持ち、胴と思える箇所には恐竜を思わせる手足を備え、その背には広大な6枚の羽。しかし、もっとも異様なのはその頭部。

 あのヘカトンケイルの巨大な頭を一飲みにする程に巨大な顎を持つ長い首を持った竜の頭が『計8つ』、そこに存在していたのである。

 そいつは羽ばたきもせずに宙に浮かび、そして全身の色と同様に金色に輝き続けているのだ。


「くそったれ、『やまたのおろち』かよ。これじゃあ、まんま『キング』じゃねえか」


 思わずそう俺は零してしまった。

 まさかとは思ったが、本物の金獣が現れるとは流石に予想の範疇を超えていた。しかもそれが伝説に謳われる『キング』ともなればもう笑うしかないレベルの事態だ。


 俺は漸くこれを見て得心した。

 γ変異種幹細胞生物があのなりそこないのヘカトンケイルだけで済むわけがなかったのだ。あれを青じじい達は養殖していたようだが、要は『こいつ』の餌だったわけだ。

 いったいこの化け物をいつから飼育していたのかは不明だが、金獣は確かに仲間食い始めてから一気に凶悪性を増したとも言われているんだ。

 畜生め、こいつら端からこの最悪の金獣を育ててただけだったんだ。

 ノルヴァニアの野郎……神様のくせに、地面の中のこいつを放っておきやがって……

 いや、神様は現世不可侵だったっけか? そういやあの野郎、ヘカトンケイルのことは分かっていたみたいだし、こいつのことも当然知っていて……知っていて、教えたら間違いなく俺が逃げると思って言わなかったんだな、くそったれ!


 世界を滅ぼしたあのキングにはいくつかの説話が残っているが、その中でも特に有名なのが、『八本首、八岐大蛇(やまたのおろち)』であるというもの。

 その巨大な顔で他の金獣たちを丸のみにしていたとも言われているのだ。

 まさにそのシーンを俺は目の前で見てしまったばかりなので、今更疑問に思うこともないが、こいつはとにかく『悪食』で、なんでもかんでも食べてしまったと言われているのだ。

 それと、もう言うまでもないことだが、熱核融合爆弾の直撃にも耐えたという実績がある。

 こいつがあの当時の個体と同一かどうかは別としても、もはや生半可な核攻撃でも仕留めることは出来ないことだけは理解できる。畜生め!


「旦那! あ、ありゃあなんだ? いったいこりゃ、なんの冗談だよ」


 シシンが慌ててそう言うのも無理はないが、これは現実だ。


「それを言いたいのは俺の方だよ。まったく、あんな化け物まで用意しやがって、くそが」


「紋次郎!」


 見上げる俺にヴィエッタが駆け寄ってきてその胸元を開いて叫んだ。


「早くおっぱい触って! 魔法を使って! 紋次郎、早くっ!」


 そう言って真剣に俺を見るヴィエッタ。絵面は最悪だが、まあ真面目だってのは分かる。


「いや、こいつにはどんな魔法もたぶん効かねえと思うぞ。何しろ自己回復が半端じゃないって話だった。核に焼かれながらも傷が治ったってくらいらしいしな」


 気持ちは分かるが無理なものは仕方がない。魔法は使うだけ無駄だろう。 

 だが、このままじゃあ、被害が広がるばかりだ。


「オーユゥーン! 助けた女どもを四方八方へ走らせて逃がせ。 まとまったら確実に食われるからな。せっかく助けたのに気分悪い。さっさとしろ」


「わ、分かりましたわ!」


 返事をして駆けていくオーユゥーン。

 そして近くにクロンと、シャロン、それにゴンゴウ、ヨザクがいるのを見て、俺は頼んだ。


「女たちを逃がす為の時間を稼ぎたい。あの怪物のおとりになってもらえねえか?」


 そういうと、4人は同時に暗い顔に変わったが……


「てめえら、ここは引くとこじゃねえぞ! 俺らは伊達に『Aランク』を貼ってるわけじゃねえんだ。いまこそ緋竜の爪の力の見せどころだぞ!」


 そのシシンの声に、全員覚悟を決めて頷いた。


「どうせこのまま放っておいてもあいつに食われるだけっスもんね! なら一泡吹かせてやりましょうかね」

「うむ! ヘカトンケイル相手に死んでいてもおかしくなかったこの身の上である。ヒュドラの一匹や二匹、余裕であるな」

「あれ、8匹分だと思うけど? 私はシシンについていく。うん、もうずっと前からそう決めてるの。だからやるよ! やって、勝って、あんた達……シャロンとシシンをお祝いしてあげるんだから」

「クロン姉さん……わ、私も頑張ります。助けて頂いたこの命、皆さんの為に使います!」


 決意も新たにそう言い放つ緋竜の爪の面々。みんな決死の覚悟を固めたようにも見えるが……

 いや、俺、そこまでして欲しいとか別に思ってはいないのだけども……


 悲壮感を抱きつつも、なんとか動こうとしたその時だった。


「さあ、いよいよこれでおしまいですね、紋次郎殿」


「ちぃっ! またてめえか!」


 あの声が唐突に耳に届いて、シシンたちと一緒に見上げてみれば、あのべリトルの奴が宙に浮かんで俺を見下ろしていた。こいつ、もう人間っぽいふるまいをすることすら止めやがったな。

大丈夫、ギ〇ラじゃなくて、ヒュドラだから! だから大丈夫……なはず?

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