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救世ノラヴドール~俺とセクサロイドの気ままな旅~  作者: こもれび
第一章 聖戦士と漆黒の妖精
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第四話 依頼

「んで、仇ってなんのことだ?」


 気を取り直した俺は椅子に座ったフィアンナに視線を向けた。今は暴走するのはやめだ。きっとこの娘は心に傷を抱えているんだ。だからこそ、まずは話を聞いてやらないと。

 ふう……先走って俺から告白しなくてマジで良かったぜぃ。

 ちょっと冷や汗もんだけど、まだ大丈夫、問題なし!

 ちょっと二ムの顔がムカつくがそれはスルーということで。

 

 フィアンナは伏目がちに俺をチラチラと見てくる。

 何か言い出したいようでいて、言うのを戸惑っている感じ。流石にこの状況で俺に告白はないと思えるけど、ほんの少し、一縷の望みだけは残しておきたい今日この頃!

 その重たい口がついに動いた。


「あ、あの……モンジローさん、これを見てください」


 ふぁっ! ま、まさかラブレターか!? と思いきや、なんだよステータスカードか……はぁ……ラブレター……

 

 差し出されたそれは俺にもよく見覚えのある白銀の魔導金属(ミスリル)製の薄いカード。

 なんでこれを見なきゃいけないのかまったく理解できない。そもそも他人のカードを見るのはマナー違反の上に、悪用される恐れもあるから極力人に見せてはだめだと、ギルド入会時にしつこく何度も忠告を受けていたことだし、なんというか見てくれと言われても、すぐ見る気にはならなかった。

 でも、キラキラと輝く大きな双眸に凝視され、なんというか断わる言葉がまったく出なかった俺は恐る恐るカードを手にとった。

 

「あ、ワッチにも見せてくださいよ」


 はい、ここにまったくマナー無視の奴がいたね。うん。


――――――――――――

名前:フィアナ・アストレイ

種族:人間

所属:アルドバルディン冒険者ギルド

クラス:治癒術師(ヒーラー)

称号:冒険者、癒す者

Lv:12 


恩恵:〖ウンディーネ〗〖ドリアード〗〖ウィル・オー・ウィスプ〗

属性:〖水〗〖土〗〖光〗

スキル:

〖魔力回復Lv1〗〖精霊防御Lv1〗

魔法:

回復(ミ・ヒール)Lv2〗〖守力上昇ド・ボディプロテクションLv1〗〖聖化(ホーリー・ウェポン)Lv1〗

死霊退散ホーリー・ターンアンデットLv1〗


体力:19

知力:38

速力:22

守力:33

運:13

名声:12

魔力:25


経験値:622

――――――――――――


 おお!

 そう、これだよ。これが普通の冒険者のステータスだよ。

 最近自分の『経験値しか値の変わらないカード』に慣れすぎてたせいですっかり忘れていたけど、この世界の人間は様々な『超常の存在』の『恩恵』を得て、その分野に特化した能力を伸ばし育てていくことが出来るのだと、物の本に書いてあったんだった。

 そういうことで言えば、フィアンナは精霊(スピリット)ウンディーネとドリアード、それにウィル・オー・ウィスプの恩恵を得ているわけで、それぞれ『癒し』と『生命』に干渉する精霊であるわけで治癒術師(ヒーラー)にはもってこいの取り合わせと言える。

 まあ、今後さらに色々な存在に恩恵を授けられることで様々な能力や魔法が開花していくわけで、今の時点でこれだけの水準の能力を得ていればかなりの成長が期待できるってことだ。こりゃ、すごい逸材だぞ。

 

「あれ? なんかワッチとかご主人のと大分違いやすね」


 二ムはそう言いながら、胸の谷間に手を突っ込んでそこからステータスカードを引っこ抜いた。

 お前、どこにしまってんだよ。というか、ぶるんぶるんしててフィアンナも目が点になっちまったじゃねえか。

 すちゃっとテーブルに置かれた二ムのカードを眺めてみると……


――――――――――――

名前:SH-026

種族:???????

所属:モーガン食堂(非常勤)

クラス:拳士(グラップラー)

称号:死を呼ぶ者、死者を喰らう者

Lv:なし 


恩恵:なし

属性:なし

スキル:なし

魔法:なし


体力:---

知力:---

速力:---

守力:---

運:0

名声:120

魔力:0


経験値:2523

――――――――――――


 っておい!

 お前のは違う……っていうよりおかしいんだよ。

 ツッコミどころ多すぎてもはやどうしていいのか分からねえじゃねえかよ。

 というか、バイト先『モーガン食堂』だったんだな。今度食いに行ってやるか。

 そもそもなんでステータスカード作れたかね? なんと言えばいいか、この世界の神様っぽい存在というか、このカードに情報を送ってくれてる存在に非常に申し訳ない思いでいっぱいだよ。結構無理して記入してくれてるよな、ホントに。

 二ムのおっぱいぷるんぷるんで目が点になってたフィアンナが、ステータスカードに完全に釘付けになってしまっているし。

 こりゃもう説明すんのも面倒だな。

 俺は二ムのカードを取り上げて奴へ返した。そして言った。


「えーとな、こいつはちょっと特殊な存在なんだ。だからカードの表示もおかしくなっちまうんだがこういうもんだと納得してくれねえかな、頼む」


「特殊な存在? こういうもの!?」


 頭を下げるとフィアンナがびくりと反応したのが分かった。

 これで納得してくれると説明しなくて済んで面倒がないんだが……

 そう思っていたらフィアンナが口を開いた。


「貴方は……あなた方はやはり……」


 ん? 何を言おうとしてんだ?

 ぽそぽそと声を漏らす彼女の様子を注視するも、そこから先の言葉を言おうとはしない。暫くまっていると、突然にフィアンナは頭を下げる。そして再び同じお願いを俺にした。


「おねがいします。どうか父の無念を晴らす手伝いをしてください!」


「だから、ちょっと待ってくれよ。話はちゃんと聞いてるからさ。でも、そのことと、フィアンナが見せてくれたステータスカードと一体なんの関係があるっていうんだよ」


「あ……し、失礼しました。そうですね、そこをお話する必要がありましたね」


 フィアンナはそう言うと、自分のステータスカードを指さした。そして俺達に問う。


「今まで黙っていてすいませんでした」


「へ? なにがだ? 羨ましいくらいに良いスキルと魔法をたくさん持ってるし、アビリティーも順調に成長してるしな……正直マジで羨ましすぎる」


「い、いえ……モンジロー様、そうではなくてですね……」


 ん? 『モンジロー様』? なんだ? なんで急に呼び方変えたんだ?

 フィアンナはどんどん丁寧になっていく言葉使いをそのままに、自分の名前を指さして宣言した。


「私の『姓』のところです。申し訳ありませんモンジロー様、今までずっと隠してまいりましたが、実は私は『アストレイ家』の直系の存在なのです」


 苦しそうに顔を歪めてそう話すフィアンナに俺は即答した。


「うん、そうみたいだけど、それがどうしたんだ?」


 と言った途端に彼女は絶望した顔を俺に向けてきた。

 なんでそんな目で見るんだよ、やめてよ。俺、なんかまずいこと言ったか?

 冒険者が名前を偽るくらい良くあることだって聞いてたし、別段大した問題でもなさそうな気がするんだけれども。

 そうしたら二ムが俺の脇腹をつんつんついてきた。


「ご主人あれじゃないっすか? アストレイって言ったら、この町の前の領主の家名がそうでしたよ……そんなことをモーガンのおっさんが言ってましたし、ワッチはその他には該当するキーワードは聞いてませんし」


 おお、ニムの情報が役に立っとる。

 

「そうか、前領主ね……ん? あれ? そういや今の領主ってセシリアのとこの……」


「エスペランサ家ですね。現当主はセシリアさんの父親で『スルカン・エスペランサ』って人ですよ、ご主人」


「ちょうどさっきそんな話が出てたもんな。というか、これ結構重要な話だったんじゃないの? 聞かなかった俺も俺だが、教えろよなそういう重大事項は。一応同じパーティだったんだから」

 

 と言った途端にフィアンナがシュンと項垂れた。

 どうも俺にしかられたと勘違いしたらしい。

 違う! 俺そんなこと微塵も思ってないからね!

 と、否定しようと仕掛けたところでフィアンナが顔をあげた。


「すいませんでした。私は出自を隠さなくてはならなかったんです」


「いや……別に怒っちゃいねえから。それよりも、その話ぶりだと、フィアンナの親父さんが、セシリアの親父に殺されたって風に聞こえるんだけど、そういうことなのか?」


 その問いにフィアンナはどこか怯えた風な様子で静かに頷いた。

 うへー、マジかよ。


「ということは、この話のこの先は、父親の仇であるセシリアの父親のスルカンってやつを殺してくれって内容になっちゃうじゃねえかよ」


 俺がそう言うと、彼女は慌てて首を横に振った。


「べ、別にそこまでして欲しい訳ではありません。スルカン様が父の跡を継いで領主に就任されたことについては構わないのです。むしろ、父が急逝した折りに混乱なく行政を取り仕切ってくれたのですから寧ろ感謝しております。ただ……父の死があまりにも不遇過ぎて私は納得できないのです」


 一度言葉を区切ったフィアンナ。

 おいおい、これ以上深刻な話は勘弁してくれよぉ。

 そう思っていたのだが、その願いは叶わなかった。

 フィアンナは滔々と何が起きたのかを涙ながらに語りだしてしまった。 


 話はこうだ。

 

 この地はそもそもフィアンナのご先祖様が中心となって街を切り開いたらしく、代々その血筋の人間がこの地を治めてきたらしい。もともとが山岳地域であり領内からは珍しい鉱石がたくさん産出されたこともあり、その領地運営の手腕と貢献を王に認められ、以後爵位を賜り正式に領主に任命されたのだという。王都から遠い辺境ということもあり、領地争いなどの問題に見舞われなかったここで人々は長い間穏やかに暮らせていたのだが、1年前に異変が起きた。

 街近郊に遥か昔から……この街が誕生するよりもずっと以前から存在していた巨大な墳墓、『死者の回廊』から大量のアンデッドが発生したのだ。

 この時、フィアンナの父『ライアン』はこの街から姿を消してしまっており、代わりに副領主だったスルカン・エスペランサが冒険者や騎士団を投入してその殲滅を図った。屈強な沢山の人々の奮闘によりその時は一気にアンデッドを殲滅することができ、事態は終息に向かうかと思われた。

 そんな中、ある噂が飛び交った。


『アンデッドが生み出されるのは、領主ライアンが【魂の宝珠】を奪ったから』だと。


 【魂の宝珠】とは、『死者の回廊』の中央の礼拝堂内に安置されていた青い水晶のことで、この宝珠の力により死者の霊魂は安らかに眠ることができるのだと考えられていた。

 いつ誰がこの宝珠をここに設置したのかは定かではないようだが、確かに数百年間この地でアンデッドの出現はなかったのだという。

 そして宝珠には強力な結界が施されており、特定の人間以外近寄ることは出来なかった。

 そう、この宝珠の守り人こそが領主たるアストレイ家の血族に連なる者であり、唯一この結界内に入ることのできる存在とされていた。

 そのような宝珠があのアンデッドが湧き出した後で失われていたことが判明した。

 街の民も善政を行うライアンに対しまさかと思いつつも、次第と盗んだのではないかとの疑念を強めることとなった。


 アンデッド討伐から数日の後、ライアンは『死者の回廊』の礼拝堂の前で無惨な屍となって発見される。

 アンデッドに襲われたのであろう遺体は見るに絶えない程に損壊していたのだという。

 ライアンの急死をうけて人々は混乱の極地にあったが、そのような街を取りまとめたのはやはり副領主のスルカンだった。スルカンは『未だにアンデッドは湧き続けている』と触れをだし、その討伐を取り仕切ると同時に街が混乱しないように、すぐさまライアンの業務を代行した。そうして人々の支持を得た彼はそして街の新領主に収まったというわけだ。

 宝珠は未だ見つかってはいないが、『盗んだライアンが死んだことで霊たちの怒りが静まった』と街の人々は解釈し、今なおライアンのせいでアンデッドが産まれてきていると信じている者が大勢いるのだという。


「一月前にアンデッド討伐体が再編成される事態が起きましたが。実際のところここ最近は目撃例はなく事態が収まったか? とも思われていましたが、依然として父のせいで『死者の回廊』からはアンデッドが湧いていると街の皆さんは信じているようです」

 

 悲し気にうつむきながらそう呟くフィアンナ。まあ、辛いだろうな。

 それはあれだろ。一月って言ったら、俺達が転移してきたタイミングだし、あの時ニムが狩りまくったからな、そりゃ激減しちゃうだろうさ。

 ちらりとニムのドヤ顔が見えたがここはスルーで。

 長いフィアンナの話を聞き終えた俺は頭を掻く。

 

「つまりはその『魂の宝珠』が無くなったこととお父さんが死んだことだけが確かで、君のお父さんが盗んだかどうか、誰に殺されたのかというか、自殺か他殺かも不明と言うわけか」


 彼女は申し訳なさそうに項垂れる。


「は……はい。ですが、以前よりこの街をもっと発展させるべきだと主張していたスルカン様と保守派だった父が対立していたのは確かな事実なのです。私は……私にはとても父がそんなことをしたなんて信じることはできなかったのです」


「えーと、フィアンナさんはお父さんとこの街で一緒に暮らしてたんではないのですか?」


 二ムが横からそう質問すると、


「え? あ、はい。私は王都の『アマルカン修道院』で幼いころから修行の為にそこで暮らしていました。母は早くに亡くなり他に兄弟もおりませんでしたのでいずれは街に戻って死者を弔うための祭事を取り仕切る『巫女』になる予定でした。ですので、生前の父の細かな行動まではよく知らないのです」


「ふーん、でも、やっぱり納得いかなくてこの街に戻って来たってわけだね」


「はい、そうです。長く離れていましたもので、この街で私の事を知っているのは父の側近の数名の方くらいしかいませんでしたから。ですので、私は姓を隠して冒険者になり、何が起きたのかその事実を調べることにしたのです。でも……」


 彼女は一度言葉を句切り、テーブルの上で組んだ自分の手に視線を落とした。


「私一人では大したことは出来ませんでした。真実はおろか、亡くなる前の父の足取りさえ追うことは出来ませんでした。ですのでお願いします。どうか私にお力添えをお願いします」


 がばりとテーブルに額がついてしまいそうなほど深く御辞儀した彼女に、慌てて顔を上げるように頼んでから俺は深く椅子に座り直して思案した。


 うーむ……

 親父さんのことを調べるために一番怪しいと思えるエスペランサ家の子供のセシリアのいるパーティに入ったってことかな? 俺が誘われた時はもう3人は居た訳だしな。

 言っていることに矛盾はなさそうだけど、フィアンナは今までずっと修道院みたいなとこで生活したわけだよな? しかも元々は貴族な訳だし、そんな箱入り娘がいくら父親の為とはいえ、冒険者になってまで真相に迫ろうとするかな?

 まあ、怨恨・復讐心は千差万別人それぞれ。どんな感情を抱いてどんな行動を取ろうともそりゃ人の自由だろうよ。

 けど、そんなことは置いておいてだな……


 そもそもだ、何で俺なんだよ?


 いや確かにさ、気になる女の子から頼られるのは嬉しいしなんというか胸キュンしちゃうよ、いや本当に。

 でもさ、よく考えてみろよ。俺はレベル1だぜ? 初級、駆け出し、素人同然のこんな俺に頼ったってどうにもならないぜ? 

 普通に力比べしてフィアンナに余裕で負ける程度の力しか俺はないし、なにしろこの世界自体初心者だしな。ほんと、なんの役にも立たねえよ。

 とか思っていたら、隣にいるニムが。


「えっとフィアンナさん。正直申し上げてここにおりますワッチのご主人は、虫並みの筋力で蚊ほどの魔力もない、外見だけちょいとマシなムッツりスケベの真性の役立たずですよ? あ、あれは仮性でやんすけど。こんなんで本当にいいんですかい?」


 って、何言っちゃってんの!? ニムさん。

 んなこと言ったら好感度駄々下がりだろう? ってかお前いつ見たんだよ‼ ちっくしょーーーーーー!


「そう……ですよね。お二人は全てをお隠しにならなければならないのですものね……」


 ん? 何を隠すって?

 ぼそぼそと意味深なことを呟いたフィアンナが真剣な瞳を向けてきた。


「是非……是非お願いします!」


 え? 本当にいいの? 俺仮性……

 

「良かったっすねご主人、これで大手振って交際できやすぜ!」


 と、ニムがしたり顔でサムズアップしてきやがるし。

 ええい、ムカつくが、今回に関しては不問だ! 良くやったニム!

 と俺もグッとサムズアップで返した。

 少し戸惑った感じで俺たちを見ていたフィアンナがおずおずと口を開いた。


「あ、ありがとうございました。つきましてはご依頼を受けて頂くに当たって依頼料と手付金のお話を……」


 いやいや、そんなのいらないよ!

 と、言いかけたその時、ニムが俺の口をむんずと押さえつけてきた。そして耳に唇を近づけてきてぽしょぽしょ話し出す。こ、こしょばい。


「ご主人ご主人、カッコつけたいのはわかりますけど、ここはきちんと貰いましょう」


「え?だってお前そしたらなんか俺金目当てで彼女を狙ってるみたいに見えちゃうだろ?」


「違いますよ! ここは大人の魅力を発揮する時ですよ。あくまでビジネスライクでまったく揺るがない渋い大人の男性の魅力を見せつけてですね、俺はこんなにカッコ良く仕事できるんだぜを演出するんでやんすよ」


「お、おお……そ、そうか……?」


「女ってのは頼れる男に惚れるんですよ。この際彼女の気持ちとしてのお金ももらって、彼女自身の心ももらっちまいやしょう!」


 なんかニムが名作アニメのラストシーンみたいなこと言っとる。


「そ、それもそうだな! うん! なんかそれが一番いい気がしてきた!」


「あ、あの……」


「ひゃいっ!」


 俺とニムの会話に急遽入ってきたフィアンナにびくりとしつつも俺は覚悟を決めビジネスライクに徹して話を進めることにした。


「え、ええとな。話はわかった、うん、よおくわかった。だから君の力になるべく力を貸したいと思う。でもな、俺はハシタ金では動かないZE()!」


 と、いつか見たハードボイルド漫画の主人公みたいなことを言ってみる。

 すると彼女は途端に怯えた表情になり、震えだしてしまった。やべ、や、やりすぎちまったかも。


「あ、あの……すいません。今は大したお金用意できないんです。た、足らない分は、な、なんとしてでもお支払いたしますので……」


「い、いや……とりあえず、あるだけでいいから。何も金の工面で君が路頭に迷う必要はないからね」

 

 と慌ててフォローする。

 ふう、危ない危ない。このままだと歓楽街に身売りしてでもお金稼ぎますとか言い出しかねない感じだったからな。誰もそこまでしてほしくないし、そもそも俺は彼女を助けたいだけなんだから。


「ありがとうございます。とりあえず今すぐお渡しできるのはこの『100万G』だけなんです。足りない分は後で必ず……」


「「やりましょう! 是非やりましょう! やらせていただきます!」」


 俺とニムの二人の絶叫が赤い風見鶏の店内に響き渡った。

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