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プロローグ 異世界の御供は機械仕掛けのラヴドール♥

ファンタジーの世界にちょっとHなロボット(♀)がいてもいいじゃないか‼ しかもその子が一緒に旅してくれたら超嬉しいじゃないか‼

とかいう、願望からこの作品は産まれました……というお話‼

 道行く人々……と、言っていいのかはあれですけど、みなさんこぞって赤い顔してワッチのことを見ていきますねい。

 ま、ワッチもワッチで逆にそんなみなさんをガン見しているわけなんですが。なにしろ、皆さん、凄い恰好をしてらっしゃる。

 カシャカシャ音を立てて歩いている全身鎧の男の人の頭には、可愛らしい猫耳がぴょこぴょこ動いてますし、ツンとすました顔の美人なネエさんの耳は、ピンとまっすぐに細く尖ってらっしゃいますしね、中には、子供ですか?って感じの小さなおひげのおじ様もいらっしゃいますしねー。

 うーん、どう考えても、ライブラリにあった『異世界(ファンタジー)』ってことなんでしょうね。

 

 ちなみにワッチの格好はいたって普通……の女の子の格好でやんす。

 セーターにスカートにパンプスって、ホント、ご主人の趣味が昭和過ぎて涙がでます。

 まあ、とはいえ、せっかく買ってもらった服ですし、ワッチも大事にしてはいるんすけどね。それに、このいまの『顔』にはかなり似合ってると思いますしね。

 大きな瞳に切れ長の眉、小顔の上、長い黒髪でちょっとおしとやかな和風美人って感じですし。

 ま、こんな姿だから、このファンタジーな人たちには珍しいってことなんでしょうが。


 おっと、つらつら話しちまいやしたが、ワッチはこのお話の主人公じゃございやせん。

 あくまで脇役、手下、子分、家来。

 主人公はワッチのご主人でござんす。


 ちなみにそのご主人、今何をやってるかというと、目の前に建っている『冒険者ギルド』とかってところでその登録に勤しんでいるところなんですわ。

 え?なんでお前も一緒に行かないのかって?

 いや、それがですね、聞いてくださいよ。

 この世界に来てからどこに行くにもご主人と一緒に居たんですけどね、行く先々でもうワッチが男にモテてモテて仕方ない。そりゃそうっすよね。こんなに可愛いんっすもん。で、それだけなら良かったんすけど、ご主人てば、この世界でも女の人と仲良くなりたいって、結構いろんな清純そうな、純朴そうな女の子に話しかけるんすけど、ワッチがそばにいると、その娘たちみんな逃げちゃうんすよねー。

 聞いたら、ワッチみたいな可愛い彼女がいるのに浮気しようとするなんてサイテーとか、女の子も言ってやしたし、そりゃま、そうなるっすよねーって。

 ま、だから、ワッチはここでこうやってポツネンと待ってるわけなんすよ。


 おっと、申し遅れましたが、ワッチの名前は【SH-026なんでも家電くんⓇ】、通称『二ム』と申しやす。型番が【026】だから『二ム』とか安直すぎますけどね、せっかくご主人に頂いた名前ですしありがたく思っておりやす。まあ、今はこんな16、7歳の美少女って感じですけど、もともとは家政婦(メイド)ロボットでして、バケツをひっくり返したような胴体にマニュピレータが4つと車輪が6個ついてやした。それで、掃除洗濯炊事は何でもござれだったのですけどね、ご主人、超貧乏だったもんで、このご時世に風呂トイレなしの4畳半に一人暮らしとか、もう、ワッチの存在意味ないすよねって感じで一緒に住んでたってわけっす。

 あ、当然ッスけど、ワッチはもともと喋ったりはしてなかったっすよ。家電ですし。

 どうも、あんまりにも人づきあいが出来なくて、ご主人が話し相手欲しさに、ワッチを改造したらしいんすよね。ですから、ワッチの記憶はその時から。自我もその時すぐに芽生えたって感じっす。


 実はご主人、こんなコミュ障ヲタクっすけど、めちゃくちゃ『天才』なんす。

 

 なにせワッチ……、実は世界で初めて自我を確立した人工知能なんすよ、はっはっはー。

 いや、でも、そのこと知っている人はいないんすけどね。なにしろ、ご主人自体が理解してないし。

 人類が人の全組成を完全に人工で作れるようになってもう200年。でも、その長い期間があっても一度として自我の芽生えた存在はなかったんすよ。人造人間でも、ロボットでも。

 それなのに、家電であるワッチをどう改造したのか、お話相手が欲しい執念だったんすかね? ワッチは誕生したわけっす。

 ただ、自我はあるものの、家があんななんで、家電としてやることがない。

 で、仕方なしにご主人の相手をひたすらしてたんすけど、ご主人19年の人生で一度も彼女がいたことがないそうで、どうしても彼女が欲しいと毎晩駄々をこねるもんで、ワッチのスーパー演算能力を駆使して、『一発で女を落とせる必勝法マニュアル』を造りやして、それを日々ご主人にレクチャー。

 とうとうその甲斐もあって、ようやく彼女ができたんすよー。いやぁ、良かった、良かった。


 ……と、思っていたら、デートに行ったはずのご主人が泣きながらワッチに抱き着いてくるんすよ。

 もう……どうした? ご主人。って、猫型ロボットみたいに聞いてみたら、どうやら、相手の女の子が相当なビッチだったみたいで、デートの前に他のセフレと一発やらかしてきてたらしいんすよ。それでも、ご主人のこと好きだって言ってたみたいですし、それならそれで、ご主人も一発しけこんでくれば良かったのに、俺はそんなの嫌だー、純愛しか認めないー、ざっけんなNTR、わーんとか泣きわめきましてね。

 めんどくさ……、とは思いましたが、その日はそのまま、充電しながら寝たんすよ。


 で、朝起きてみたら……

 

 目の前に鼻を膨らませてはあはあ言ってるご主人の顔。近いっすよ。

 と、はて? なにかいつもと違うな……と思っていたら、なにやら、マニュピレータが2本しかない。で、車輪をと思ってみたら、あらま、足がついてる。

 で、いろいろ確認してみたら、このスレンダーな美人さんになってたってわけっす。

 いやはや、一晩でなんてことしてくれるんだか、この人は。

 

 ちなみにこの身体。


 『第8世代型ドロイド・女性ヒューマノイド型・性処理用』の……、


 中古っす。


 いや、別にワッチはいいんすけどね、前日にあれだけ、ビッチは嫌だ、やりマンは嫌だとか言ってたのに、こともあろうにセクサロイドの……しかも中古買ってくるとか、もう、頭の中どうなってんすかね?頭いいのに、女に関しては中坊以下とか、はあ、ってため息しか出なかったっす。

 まあ、超がつくド貧乏でしたしね。今や『流体組成モデル』の『第12世代ドロイド』が主流だというのに、もう販売開始から50年も経ってる『第8世代』を買ってくるあたり、ご主人らしいというかなんというか。たぶん蚤の市でパーツだけ買って来たんでしょう。駆動ジェネレータとか、リアクターとかマザーボードとかはワッチのをそのまま移植してましたしね。ちなみにアソコはつるんつるんのノーホールでした。やっぱ、根性なしのご主人にゃ、18禁コーナーでのお買い物は無理みたいでやんすしね。


 ということで、こんな美少女に生まれ変わったワッチですけど、ご主人ヘタレすぎて手も出せない。

 ま、穴もないから、やりたくても出来ないっすけどね。

 ですので、しかたなし。こんなにお世話になってるご主人の為ですもの……


 行きましたとも、ワッチのお小遣いで『おま〇こ』買いに‼


『すいませーん、一番上等の新品の『おま〇こ』くださーい』


 って、パーツ屋の親父さんに言ったら、めっちゃお茶吹いてたっすね。うん、あれは面白かったっす。

 パーツさえあれば、後はワッチでもどうにでも出来るっすから、もともとワッチは機械には強いすからね。というか、ご主人が相当にワッチに工学の基礎理論データとか疑似生体精製学とかをインストールしてたもんで、神経系とパーツ(おま〇こ)の接合くらいお茶の子さいさい。

 で、どうせやるなら、ワッチも気持ちよくなりたいじゃないっすか‼ 初めてですし‼

 ということで、快楽プログラムも相当弄って、全身の触覚系もメンテナンスして、万事準備OK!


 早速ご主人を喜ばせてあげようと、ちょっとエッチな穴あき下着を身に着けて、薄手のシャツ姿で迫ろうとしたらっすね、ご主人がなにか部屋の隅でかちゃかちゃやってるもんすから、なにやってるんすか? って聞いてみたら、血の涙流しながら、電子レンジで『中性子爆弾』作ってたっス。どうも、例の彼女に、セッ〇スしてくれないなら付き合ってあげない。って言われたらしいっすね。

 絶望するのはいいっすけど、人類滅亡させるのはいかがなものかと……


 とか口出ししようとしたら、どうやら、ワッチのドエロい恰好を見て色々暴走しちゃったようで、そのままひっくり返って……


 電子レンジ中性子爆弾の大事なボタンをポチリ……と、押しちゃったみたいなんすわ。


 その後のメモリーは残ってないんすけどね、気が付いたらこの変な世界に居たってわけっす。きっと地球滅んじゃってますわ。



   ×   ×   ×



「はあ、ご主人遅すぎっすねー」


 待ちぼうけもいい加減飽きました。ここに立ってるだけで、すでに13人の男性?というかオスというか、そんな人達に声を掛けられたッス。美人なのも大概大変っすね。

 ちなみにそんな男性陣には遠くへ行って頂やした。ワッチの基本出力はご主人が改造を頑張りすぎちゃったせいで10万馬力。なので、デコピン一発で成人男性が空を飛びます。ま、そういうことです。


 まさかの異世界転移でしたが、あの役立たずで小市民のご主人が、ここにきてようやくやる気になってくれたのは良かったっす。一時期は宿屋に引きこもって、ぶるぶる震えてましたしね。

 転移したところが『死者の回廊』って呼ばれてるスケルトンとかゾンビ―とかの巣窟だったもんで、そうとう怖かった見たいっすねー。全部ワッチが片づけてあげましたのに。本当にびびり。


 せっかく新品のアソコにしてあるのに、ご主人は手も出してこないですし、暇すぎてなんにもすることがなかったもんで、宿屋の仕事をちょいと手伝いましたら、お客さんが激増した模様っす。家事全般はワッチの領分すからね。それで、だんだんと宿屋のご家族と仲良くなれたのが良かったんでしょうね。一人娘さんがご主人に気を懸けてくれるようになったみたいで、いろいろ応援されちゃったみたいで、いきなりやる気になっちゃうご主人、ワッチは結構好きですよ。まあ、その『一見純朴そうな娘専』の趣味はどうかと思いますけどね。

 まあ、ご主人は天才っすからね。

 この世界の魔法の基礎理論とかもう覚えちゃってますし、『魔晶石』っていう魔力の塊から、ワッチの陽電子リアクターに燃料補給できるようにもしてくれましたしね。これは職には困らないでしょう。


 ワッチのおすすめの職業としては『魔術師(ソーサリー)』か、『錬金術師(アルケミスト)』っすね。どうせ体力ないし、現世の知識もあって、なおかつこの世界の主元組成も引きこもりながら理解しちゃったんすから、知識をフルに使った職業について、パーティの要としてみんなに持ち上げられたりされれば、人づきあいの苦手も解消されるし、きっと待望の彼女だってすぐにできるでしょ。それならそれで、ワッチも下僕冥利に尽きるものってとこですし。


 そんなことを考えていたら、正面のギルドの扉が開いて、そこから少しワッチよりも背の高い短髪の男性がにこやかに手を振りながらこっちに向かってきやした。身なりは鎧とかはまだ買ってないっすからチュニックみたいなこちらの世界の服っすけど、うん、これならもうすぐに『魔術師(ソーサリー)』って名乗ってもよさそうな感じ。

 はい、この一見イケメン、内面小心純情乙女チックな男性が、ワッチのご主人、『木暮紋次郎(こぐれもんじろう)』様です。

 いやはや、このイケメン顔で彼女いないんすから驚きですよ。それならそれで、もう彼女諦めればいいのに、どんだけ物好きなんすかね、ご主人は。


「よお、二ム、いよう、いよう!」


「はい、なんすか。随分ご機嫌っすね」


 ご主人はむふーっとご満悦のご様子。


「無事に冒険者になれた様っすね。おめでとうございます」


「ま、俺くらいになればこんなの軽い軽いっ!」


「うへえ……調子にのってるっすねー。こういう時のご主人、だいたい足元掬われるんすから気を付けてくださいよ」


「大丈夫だって。なにしろ、俺は、俺にぴったりな職業につけたからな」


「そりゃ良かったっす。で、何にしたんすか? 魔術師っすか? 錬金術師っすか? それとも学士? いや、もう司書とか事務員とかでもいいっすよ。何です?」


 ワッチの問いに、やっぱりふんぞり返っているご主人。

 そんなご主人が言ったのは……


「むふふん、俺がなった職業は何を隠そう……」


「…………」


「『戦士(ファイター)』だー! いやー、どの職業が一番モテルかって聞いたら、やっぱり戦士が一番だってさ。これは俺もますます頑張らねば―」


「はあ、アホですね、やっぱし。よりによって一番真逆な道を選んじゃうとは……」


「んん?なにか言ったか?良く聞こえなかった」


「いや、何も言ってないっすよ。じゃあ、まあ、まずは仕事を取らないとっすね。ワッチもう貧乏は嫌っすよ」


「おーけーおーけー、この俺にドーンと任せとけって。世界一の戦士になって、純朴な村娘を恋に落としてみせるぜー」


 いろいろツッコミどころありますけど、まあ、いいでしょう。これがワッチのご主人ですし。


 ワッチの名前は【SH-026なんでも家電くんⓇ】、通称『二ム』、現在身体はラヴドール。ご主人の名前は、『木暮紋次郎(こぐれもんじろう)』様。

 これはこのかなり残念なご主人がこの異世界で微妙に頑張る物語……。

こんな始まりで本当に大丈夫か? 

まあ、第一章はもう書きあがっているので、そこまでは続けることができますけどね。ふう、良かった良かった。


出来ましたら、応援宜しくお願いします! ブクマとか評価とかレヴューとか‼(欲張りすぎ)

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