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第二十九話 レジスタンス

「あんたがレジスタンスの親分なのかよ?」


 そう問いかけてみれば、彼はにまぁッと不敵に笑って俺を見た。


「ああ、そういうことだ。だから俺を殺せば反攻分子は散り散りになるな」


 そう言った途端に周囲の連中が殺気立った目で俺を睨み手にした剣を構えた。

 この野郎わざと自分の身分を晒して俺を煽りやがったな? 俺達に二心がないことを察知したうえで敢えて挑発することでそれを部下たちにも示そうって魂胆か。

 悪くないやり方だが、やられた俺達はいい気分じゃないぜ。


「落ち着けよ。そんなことする分けねえだろ……まだな。お前らが本当に反攻組織なのかも不明なんだからな」


「なんだと貴様!!」


 部下と思しき一人が俺へと詰め寄ろうとしたのを、ハシュマルが手で制した。

 そしてギラリと光る相貌のままで俺を射抜くように見つめてきた。


「ふむ……どうやら肝は据わっているようだな。何分こういった類の集団なものでな、これまで何人も刺客が送り込まれて来ているんだ。物々しいだろうが、まあ、許してくれ」


 ハシュマルはそう言いつつ、木製の簡素な椅子を手繰り寄せると、それにどっかと座った。周囲の騎士達はまるでSPのように彼を取り囲んで屹立している。これを見るだけでも相当な要人であることが窺えるな。

 彼は先ほどまで髭をつけていた顎をさすりながら俺と、俺の背後のオーユゥーン達へと視線を送った。


「それで……こんなところに娼婦をたくさん引き連れて一体なんの用かな? 色男」


「っ!?」


 一瞬背後でオーユゥーンが身構えるのが分かったが、俺は止めておけと目で合図を送って黙らせた。こいつも別に今は娼婦ってわけでもねえからな。


「誰が色男だよ、俺がモテる分けねえだろうが。それと、よくこいつらが元娼婦だってわかったな?」


「ははは、なあに、昔、相当私も遊んだからな、娼婦の見分けくらいすぐにつく。私の見立てだと、男に惚れこんで娼婦を辞めたって口だろ。いいねえ、背徳感がすげえよ。他人に抱かれた女を養ってやるってな、それだけで勃起もんだ。汚れた女どもに先行きはねえものな、もうお前専用の愛玩人形じゃねえか」


「このくそじじいっ!! マコたちをバカにしてっ!!」「何も知らないくせに言いすぎなんだよっ!!」


 俺の背後から殺気をまき散らしたマコとシオンが抜刀して切りかかろうとしたのを、オーユゥーンが首根っこを押さえて押しとどめた。


「お止めなさいな貴女たち。安い挑発に乗るものではありませんわよ」


「オーユゥーン姉……」「でも」


 オーユゥーンを見ればニコリと微笑んで二人を引き戻しにかかっていた。そして言った。


「ワタクシ達の心はもはや全てお兄様のモノ。他人にとやかく言われたところでどうとも思いませんわ」


「いや、それメッチャ重いんだけどな。普通に仲間でいいじゃねえか、普通に」


「それじゃあ面白くないんだよね、ご主人様。あの誰にも心を開かなかったオーユゥーンがここまでデレデレになっちゃったんだもん、もっとオーユゥーンを虐めてあげてよ」


「ちょ、ちょっと、何をおっしゃいますの、バネット姉様!! わ、ワタクシはそ、そんなつもりは……」


 とか言いながら頬を赤らめてチラチラ俺を見てくるオーユゥーン。うう、や、やめろよそんな目で見んなよ!!

 すると、今度はヴィエッタだ。


「紋次郎大丈夫だよ!! だって私はもう紋次郎の愛玩人形だもん!! いつでもどこでも好きな時に何回でもだよ!!」


「だからてめえは横から出てきて話をややこしくするんじゃねえよ!! 大体おまえ、最近発言内容がニムみたいになってきてるぞ? 天然丸出しでダイレクト発言マジ止めろ!!」


 本当に二ムに似てきやがった。まあ? ニムの場合はオチまで想定済みで俺を貶めようとしやがるからな、どっちが悪辣かは……あれ? 天然のヴィエッタの方が質が悪いのか? あれ?


「はははははははは……なかなかどうして絆の固いパーティのようだな。いや、すまなかった。どうもこの生活を送るようになってから私も随分とひねてしまったようでな、可愛らしい同行者をたくさん引き連れたお前さんに嫉妬してしまっていたようだな」


 そう言いつつ顎を撫で俺を見上げるやつの目はまだギラついてやがった。こいつスキルか何かは分からないが相手の人となりを見定めることに長けている存在のようだな。

 ま、そうでもなければ、ゲリラの頭みたいなことはやっていないということなんだろうがな。

 奴の心中を垣間見ることが出来たことで、俺は早々に話を済ませてしまおうと口を開いた。


「なら本題だ。俺はアレックス第三皇子との賭けに勝ってあいつに雇ってもらった。で、城から連れてきたアレクレスト国王様をアレックスの所に置いてきて、ナツとウーゴにここまでの案内を頼んで連れてきてもらったわけだが、聞きたいことは一つだけだ。お前らの敵の正体を教えてくれ?」


 そう端的に言った俺の言葉を、その場の全員が聞いて居たわけだが、全員表情一つ変えないまま首が次第と傾き始め……そしてだんだんと表情を強張らせつつ、冷や汗までをも掻きながらほぼ同時に言ったのだ。


『はあっ!?』

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