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第二十一話 ねえご主人様? もっと激しく揉んでいいんだよ?

 その頃……


『おい、俺達いつまでこうしてなきゃいけねえんだ?』

『知らねえよそんなこと。あの偉そうなガキに聞けよ』

『あの野郎、俺達にこんな真似させやがってマジでぶっころしてえ』

『止めとけ止めとけ、そんなことしようとすればピートさんにやられるぞ。何しろバネットの姐さんの男だからな』

『うう……バネット姐ちゃん、憧れてたのに……』

『俺もだ』

『くそっ! は、鼻の頭が痒いのに掻けねえ、ぬぐぐ』

『痒いのくらい我慢してろよ、こ、こっちはもう小便が限界』

『うわわ、ててめえ俺の隣だろうが!! 我慢しろや』

『お、俺は大の方』

『ぎゃーーー!!』


「う、うるせえんだよてめえら!! 黙って案山子やっとけよ!! ションベンとクソくらいそのまま漏らせ!!」


 俺は耳に当てていた円筒形のコップに向かって怒鳴りつけた。

 これはいわゆる『通信機』みたいなものだ。というか、原理はいたって簡単で、コップの中の空気を振動させて音声を再生させているだけ。まあ言ってしまえば『糸のない糸電話』だな。

 俺はこの巨大な竜車の一番下層……一応床の様に偽装(カモフラージュ)したこの狭い隠し部屋で、ニムとバネットと三人で、所謂『重装歩兵』の『振り』をした盗賊たちに指示を与え続けていた。

 と言っても、いまのところあの盗賊連中が自分で何かをしているわけではない。ただあの伽藍洞に刳り貫いたデカい鎧の中に閉じ込めて、そこで待機させているだけの状況だ。

 もう説明するまでもないことだが、俺たちは国王に会うためにドムス君主国の姫君ご一行を演じることにしたというわけだ。

 バネットの話では、国王はすでに全権をはく奪されていて、身動きもままならないほどに衰弱しているとの話。さらに言えば、看護と称して周囲にいる侍女や近衛兵たちも、すべてが皇子たちの手の内であってやっぱりこっそりと忍び込んでは難しと思えた。

 まあ、最初っからこそこそする気はなかったけどな。

 これだけ外から見てもおかしくなっている国だ。内部だって相当におかしいのは簡単に想像できる。つまり、そんな異常な部分でいくら策を巡らせても、こちらの思惑の通りに行くわけがないことは明白なのだ。

 だからこそ、こっちで全てのレールを敷くことにした。


 王に会おうというのならば、そりゃあ王族が一番だろう。それも断れないくらいの存在となれば数は限られてはくるが、丁度いい具合にこの国から最遠方と言っても過言ではない位置に、大国のドムス君主国という国が存在していたのだ。

 で、ニムの聞き込みの感じからして、この国にドムスの国の人間が訪れることはほとんどないとの話であったし、このエルタニア王国と友好国でもある大国ジルゴニア帝国とも敵対関係にあるとのこと。これは好都合だとばかりに俺は、とある姫君の婚姻話とその禊行脚の物語をでっちあげた。


 まず、ドムスの国教についてだが、特に定められたものはなく、基本精霊神信仰であり、その崇める神も人それぞれ自由に選べるといった奔放な国。これは、この国の人口比率が、圧倒的に亜人が多いということと、その様々な亜人の部族間の激しい争いの後にこの国が誕生したという、多人種国家独特の成り立ちの経緯が深く影響していると言えた。

 具体的に言えば、ドワーフは火の女神を信奉し、エルフは風、獣人たちは土や、水を信奉するといった風体で、それぞれで神社が設けられたり、それぞれで祭事を執り行ったりと、全ての民族が、他の全ての信仰を認めると契約した上で社会が形成されているのだ。

 そんな特殊な事情をもったドムスだが、この国にも当然神教信仰は存在する。それは特に王族や有力者に多く見られているようで、各種族毎に固まり神教を信仰することで家族一族の結束を強めていたようだ。


 唯一国王だけは、即位の際に神教から退籍することが定められているとのこと。これは即位後王の血をより多く残すために側室を入れるための政治的考慮であるとのこと、王になったとたんに沢山の奥さんを迎えるのだそうだ。これはもはや『種馬』扱いと言っても良い気がするが……

 そんな理由で現国王にはたくさんの子息子女がおり、その殆どが異母兄弟姉妹。しかも、その王様相当な絶倫のようで、側室の数だけでも100人以上いるとか……

 これはもう本当に『種馬王』で良いのではないか?


 まあ、そんなこんなで王には無数の異母の子供がいる。そして当然、神教信徒の子供もいるとのことだそうだから、これを有効に使わない手はないというわけだ。


 さて……

 この時点で大体その辺の事情が分かった俺は、ドムスについての情報を更に集め、軍事国家であること、最強の陸上部隊、『重装歩兵部隊』を所持していること、その部隊の装備が特殊合金製のフルアーマー部隊であることなどを調べ上げ、今回の王都訪問団を作り上げた。

 そう、本当に作り上げたのだ。

 

 まず王女役はうちのパーティ唯一の女ヒューマンであるヴィエッタ。ドムス国王が人間である以上、これは人間でなければおかしくなってしまう。

 だからこれを奴へと頼んだわけだが、そこはなんだかんだ超売れっ子娼婦、上流階級の客も多かったようで、それなりに貴族の喋り方にも精通していた。まあ、オーユゥーンが更に指導を加えていたし本当に問題はあるまい。そんなにその役を嫌がってもいなかったしな。

 で、付き人はオーユゥーン、シオン、マコの三人と執事役のピート君。

 オーユゥーン達はまったく問題なかった。それぞれ女騎士隊長、遣りて女官、筆頭世話係とか、そんな役柄を言っていたし、もうノリノリでコスプレしてたしな。

 問題はピート君だ。実は今回ピート君が何気に一番重要な役回りだったのだが、こいつあれだけ普段は横柄なくせにいざやるとなったらビビりまくりやがって、まったく口がきけなくなっちまった。

 まあ、そこにバネットを突っ込んで……いや、突っ込まれてやったのか? ん? まあいい、気分を変えてやっておだててのせてなんとか王城に放り込んだ。

 オーユゥーン達も一緒にいるんだ、まあうまくやるだろう。


 で、俺たちだ。

 お姫様だけが一人でいたら格好着くわけないから、今回俺は史上最強とも名高い重装歩兵部隊を再現してみた。

 細部は当然違うだろうが、聞いた話通りには再現できたはずだ。まあ、ツッコまれたら新製品ですとでもいえばいいだろう。

 え? いったいどうやって用意したかって?

 そんなの魔法で作ったに決まってるだろう。

 まず、ヴィエッタ経由でノルヴァニアの土のマナ使って大量の魔導金属(ミスリル)超硬度金属(アダマンタイト)をかき集め、それを適当にミックス!! 

 そしてそれを土壁(ド・ウォール)で兜、鎧、小手、金属長靴、長斧などの形に加工する。

 本物と比べてどれくらいの防御性能があるのかは不明だが、土壁(ド・ウォール)の魔法で圧着した希少金属の塊だからそれなりに硬いのだろう。

 次に、それをシーブズギルドの地下本部でごろごろしていた宿六どもに無理矢理着せて、それだけじゃあ軍隊には見えないため、そこからはバネットの精霊、ノース・ウィンドゥから風のマナをもらって連中を同時にコントロール。

 まずは『風鎧(フ・エアアーマー)』の魔法を使って連中全員の鎧の内側に風の層を構築して、土魔法で作った鎧を浮かせた。この魔法は一度纏わせれば風のマナが運動し続けるので鎧を保持するように膜を張って体勢を維持。

 ついで、今度は鎧の外側に『風人形(フ・マリオネット)』の魔法をかけた。この魔法は本来は複合魔法の『木偶繰(コマンド・ゴーレム)』の魔法に近いもので、振動させることで人型を取らせた空気の塊を操り、相手を攻撃させるための魔法なので、空気の塊ではあるがある程度の質量もあるため、剣や槍を握ったり、相手を殴ったり切ったりも出来るという優れもの。透明人間に攻撃させているようなものだな。

 今回はそれを先ほどの鎧に纏わせることで、実際にその身体を人形のように操ることにしたわけだ。

 200体もいるから当然動きは同期させる。これによって一糸乱れぬ動きを見せることになった鎧の軍団に、民衆は実際に驚愕していたわけだが。

 中にいる連中はといえば、俺が作った循環する空気のおかげで温度も湿度も一定、快適な上にしかも俺が動かしているわけだから疲れることも無いし、それこそ襲撃されたときだけ、そのエアアーマーによって強化された頑丈なその鎧を着たままで、自分の好き勝手に暴れればいいだけ。これほど恵まれた話はないだろう? と思っていたのだが……


 こいつらマジで手前勝手すぎる。そもそもそれ着る前に、便所に行けと俺はきちんと言ったんだからな!? いい年して下の用くらい足しておけってんだ。

 

 そうそう、こいつらとのこの会話だが、これもやはり風魔法だ。

 連中の兜内の更に風の幕の内側に『振動(フ・エコー)』の魔法を仕掛けてあって、これによって振動した空気を俺の持っているこのコップ内や他の連中の兜内にも再現することで会話しているというわけだ。風の幕の内側だからどんなに泣こうが喚こうが兜の外に声は絶対漏れることはない。

 周りから見ている分には屹立した無言の兵隊って感じに映ってるだろうな。

 もっとも中身は阿鼻叫喚になっているみたいだが。


 とまあ、そんなことを俺は今この竜車の隠し部屋でやっているのだ。

 バネットの胸に触りながら。


「ねえご主人様? もっと激しく揉んでいいんだよ?」


「もっとってなんだ! もっとって! 揉んでねえだろうが!!」


「え? だってさっき反対側に寝てたヴィエッタちゃん、あんあん言って気持ちよさそうだったよ? ヴィエッタちゃんばっかり揉んであげるなんてずるいよ!!」


「だから俺は誰の胸も揉んでねえ!!」


「あ、バネットさんあれはですね? ヴィエッタさんの精霊、ノルヴァニアさんがですね、魔力吸われて感じてる快感をヴィエッタさんにも味あわせてあげてるってことらしいっすよ? どうも魔法使うだけでイっちゃうみたいっすね!!」


「え? それなんかずっこい!! 私もそうしてよご主人様!!」


「で、出来るかっ!!」


「良いからお前はもう少し静かにしてそこに寝てろ!! 俺が落ち着かねえ!!」


「ただ横になっておっぱい揉まれてるだけなんて、最高に屈辱的で気持ちいいシチュエーションなのに、本当にもったいないよ?」


「うるせいよ!!」


 けらけら笑うバネットにイラっとしながらも、でもその胸から手を離せないでいるこの状況に、俺自身の心がマジで折れそうだ。

 ちなみに今の状況。

 俺椅子に座る。

 バネット俺の右側の簡易ベッドに仰向けで寝ている。俺、バネットの右乳に手を置いている。

 ちなみに、さっきここに来るまでは俺の左側の簡易ベッドに王女姿のヴィエッタが横になって、俺はその左乳に手を置いていた。確かにずっとあんあん悶えていたな、ヴィエッタは。

 これは200体の歩兵を作って動かすためには致し方ない配置ではあったのだけど、二人の乳からそれぞれの属性のマナを吸収しなければ俺は魔法は使えないわけでだな……

 むう、マジでこんな姿人には見せられねえ。

 そう思っていた時にニムが言ったのだ。


「ヴィエッタさんのおっぱいとバネットさんのおっぱいが、円環操縦桿トーラス・コントローラーみたいで、ご主人宇宙船の操縦してる感じでカッコいいですよね!!」


「マジでうるせいっ!!」

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