第二話~やっと話せたのに!(怒)~
夜空の部屋。
ずっと閉め切っていたはずなのに、どことなくいいにおいがする。
「にっ兄さん?どうかしたの?」
無意識にキョロキョロしてしまうのは男の本能だ・・・と、俺は信じている。
「いや・・・・べつに。」
改めて見ると夜空って意外とかわいいかもしれない。
俺は決してロリコンではない。
ないのだが、第三者としてみると胸のどこかでときめいてしまうところがある。
服は常にパジャマ。
分からなかった身長や髪形も見えてきた。
俺の身長は175㎝ぐらいなのだが、夜空は俺の腹よりちょっと上ぐらいの高さ。
髪は鮮やかな金髪に毛先のほうがピンク色になっている。
多分これは、母親譲りだと思う。
じろじろと夜空を観察する俺に、恐る恐る話しかけてきた。
「ええっと、とりあえず初めまして?」
何から話していけばいいか分からなかったようだ。
しょうがない。俺がこの会話をリードしてやるか。
「うんっと夜空?初めましてじゃないし、そんなに緊張しなくてもいいんじゃないかな?」
「そそそっそうだよね!なんでだろうねーこんなに緊張しちゃって!!」
だめだこれ。
「なぁ夜空?一つ聞いていいか?」
そうだ、俺はこいつに聞きたいことがいろいろあったんだ。
「うん。いいよ?」
「お前って普段、学校に行ってない間何してんの?」
ちょくちょく思っていたことだ。
たまにうらやましさ芽生えてくるほどなんだが・・・・。
「一つ聞くけどそれって興味本意?それとも私に対しての皮肉?」
そんなに俺のことを疑ってるのか?
「興味本意だって。」
「・・・うん、それじゃあ・・・・・」
そう言って日頃の行動を話してくれた。
「まず起床時間は10時ぐらい。そこからご飯を食べてネット小説書いたり、絵を描いたりして夜ご飯食べて寝る感じかな?」
おお、見事な現役ヒキニートっぷりだな。
でも一日中ごろごろしてるのに、よく太らないな。
俺なんか、毎日一時間以上の鍛錬でやっとこの体型を維持してるってのになぁ。
正直うらやましい。
夜空の体質を羨んでいるとキラキラした目で俺を見てきた。
「今度は私から質問ね!」
さっきまでの緊張はどこへ行ったものか。
「高校ってどんな感じ?面白い?楽しい?」
正直なところさほど楽しくないが、義妹に夢を持たせるのは兄の仕事か。
「うん。楽しいよ。」
夜空はさっきよりも、もっと目をキラキラさせている。
なんだかこっちまで嬉しくなってくる。
「そんなに学校に憧れてるならいけばいいんじゃないか?」
誰でも思う率直な疑問だ。
「それは・・・・」
『ピロリーン』
夜空が何か言いかけたところにメールの着信音が聞こえた。
「あっメールだ!」
どうやら夜空のパソコンに来たようだ。
パソコンにバタバタ駆け寄った。
どうでもいいが、こいつのパソコンはスペックが高そうだ。
メールがいきなりタブ化され、すぐに開ける形になっている。
俺が横から画面を見ようとしたとき、夜空が不思議気につぶやいた。
「なにこれ?」
画面に表示された文字を見て頭にでっかいはてなマークを浮かべている。
俺もその画面を見てみた。
そこに書いてあったのは・・・・・。
「「『異界人・転移計画』?」」
明らかに怪しい言葉が明記されていた。
その言葉の下に、⦅CLICK⦆と書かれていた。
夜空は転移という言葉を指さして聞いてきた。
「兄さん、これなんて読むの?」
転移か、俺もよく分からないな。
「ごめん、俺にもよく分から・・・」
俺が言いかけた瞬間に、今度は⦅CLICK⦆を指さして自信満々に言ってきた。
「これ、押せってことでしょ?」
「おい、押すなよ?」
そう。こういうタイプは、大抵ヤバいやつだと知っている。
「いいじゃん!いいじゃん!」
「だめだ、やめろ!やめろって、わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
こいつ押しやがった!
「なによ、うるさいなぁ~」
「なによじゃねーよ!こういうやつは触っちゃダメって学校のセーフティー教室とかで言われなかったのか!?」
俺の言葉に対し、夜空は即答だった。
「私、学校行ってないもん。」
「・・・・なんということ。」
そうか学校に行っている俺は、学校に行っていない夜空に常識を言っても通じないんだ。
そんな俺に夜空が唐突に言ってきた。
「ねぇ?なんかパソコン光りだしてない?」
何を言ってるんだこの子は?
「パソコンが光るのは当たり前だろ?」
そう言ったら夜空は首がもげそうな勢いで首を振ってきた。
「そんなこと知ってるよ!私が言ってるのは光の強さのことだよ!」
その言葉を聞いて画面に目を向けてみると明らかに不自然に光っている。
それもリズムよく点滅しながら。
「なぁ、なんかこれヤバくないか?」
「私もそう思う、一回電源切ってみるね。」
電源は消えない。
まぁ予測はついてた。
ますますヤバい。
「おい、これ壊すぞ!」
「えっ!私のデータが・・・・」
「よく分からないウイルスに感染するのとどっちがいいんだ!?」
夜空は数秒考えた後、壊すことを決めた。
「よし、ハンマーとってくる!」
部屋を出ようとしたときに突如俺の足元に魔方陣が現れた。
それは夜空も同じだった。
ん?魔方陣?
「おーい夜空!大丈夫か?」
「うーん、なんとかー」
足元に現れた魔方陣は赤い光を発し、俺と夜空の前に底が見えない部屋いっぱいの大きな穴を召喚した。
「ねぇ、なんかこれヤバくない?」
「やばいな。」
俺と夜空がそんなやり取りをしていると、後ろからなにやら黒い影が俺たちに目の前の穴に向け、背中を強く押された。
そして当然のごとくそのまま穴の中へ、真っ逆さまに落ちた。
「「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
神様!本当にいるのなら聞いてください!
どうか・・・どうか俺と義妹を助けてください!!
こうして俺たち義兄妹はあっさりと異世界転移させられたのであった。
第二話です!
第一話に比べたら少しは成長したんじゃないかな?って思います。
本編の盛り上がるところは始まったばかりです!
これからも定期的に連載しようと思ってるんで、何卒宜しくお願い致します!