0.異世界暮らし、受け入れ準備は万端?
ざまぁを書くためには、それに相応しい人物が必要ですが、不愉快な人物が出て来ます、残酷な表現もあります。
肝心の[ざまぁ]もまだまだ先です。
次話前書きにあらすじを載せますので、読み飛ばして下さっても大丈夫です。
異世界ヤッター!転生キタコレ!って思ったのに、
別にソンナノ珍しくもなんともないって言われた。チクショウ!
俺はサゼル村のジント、街の外縁の無許可集落に住む、日雇い人足一家の三男、兄二人は既に亡く、家族は両親と妹二人に弟三人。
金色と言うより黄緑の髪と眼、日本人にはあり得ない彫の深い顔立ち、転生者が記憶が戻った直後は、混乱して暴れる事もあるそうで、説明して現状を理解させるために村長が鏡を見せてくれる。
15で記憶が戻ったら、実際周りにそれっぽい奴結構いた、と言うか比較的大きいこの街には近隣の田舎から、仲間を求めて自然と集まって来るらしい。
でもその転生者達の中に日本人が居ないんだ。
だから異世界の連中と同じ位分かりあえないし、何より和食を知ってて俺に作ってくれる奴が居ない。
俺?自炊したことなんかねえよ、料理は母親に作らせてたさ。
その後は、コンビニと外食だな、ああ、牛丼食いてえ。
「それ変よね?転生者って、前世で亡くなった地域毎にまとまって転生している筈なんだけど、お兄さん旅人さんだったの?」
そんでもって、この世界の事とか転生者のイロイロを俺に教えてくれたのは、転生者の先輩でもなければ地元の人間でもなく、通りすがりの旅行者の夫婦が連れていた、四歳位の女の子だった。
幼女だけど、すげえ美少女、銀髪でマジ天使な外見、きっとおれに幸運を運んできたんだ、ハーレム要員には小さいが、優しくして懐かせよう。
「そんな筈無いんだ、俺は日本から出た事は無かった。」
最後に覚えているのは、地下鉄の階段の上から見下ろした、見渡す限りホーム一面の黒髪の頭。
「ニホン人の転生者なら中央のガイス大陸ね、フェバード辺りよ。」
「ガイス?女神神殿の本殿が有る中央大陸?」
この親子連れの旅に俺も連れてってくれって頼み込んだけど、荷馬車だけで12台も連ねた街道商人のリーダーらしい父親に、まず港町までの乗り合い馬車でなら金貨5枚が相場だから払えって、突きつけられて断られた。
アンタ金持ちだろ?、なんてケチなんだよ!
「金(自分の旅費)は無いけど、下働きでも、荷物持ちでも何でもするから、頼むよ」
俺は食い下がったさ、街の外には魔獣がいる、一人でなんてとても出られないけど、商隊に混ぜてもらえれば、必需品の準備も要らないし、馬車に乗せてもらえる、食事も出てくる、護衛連中に守ってもらえるから夜も眠れる。
ラノベやゲームだと、記憶が戻ってすぐの、この出会いは俺のために用意された分岐点の筈だ。
苦労は嫌だから成り上がろうとか思わない、同じ(元)日本人の所まで行けば、同胞なんだからきっと親身になって面倒をみてくれるさ。
野営の食事は硬くてまずいって聞くけど、現在の食ってるモノよりましだろう、期待してるぜぇ。
赤毛の細マッチョオヤジは、俺の身体をてっぺんからつま先まで眺めて言った。
「奴隷ではないようだが、領主の許可証は有るのか?」
失礼なオッサンだな、さすがに奴隷までは堕ちてないぜ、首輪がないから見れば分かるだろう
「許可証?なにそれ?」
パスポートみたいなもんか?
「領主に人頭税を納める領民は領主の所有財産だ、お前を許可なく他の領地、ましてや国外へ連れ出せば我々が逃亡を手助けしたと、罪に問われるだろう。」
所有財産ってなんだよ家畜か?人権無ぇな、口に出したらこっちがヤバくなるから言わねえけど。
それはともかく、土下座までしてやったけど、最後の方は黙ってついて来ても、魔獣に襲われても見捨てると断言されたあげく、抜き身の大剣まで突きつけられ、
「濡れ衣を着せられては面倒だ、逃亡を計画している奴だと、兵士に突き出すか?」
と、脅されてその場を逃げ出した。チクショウ!
後で知ったけど、勝手に住み着いてるような俺達でも、領地内から逃亡して関所を越えてたら、即座に奴隷落ち確定、裁判無し!右から左にハイっ鉱山行きだったそうだ、マジで人権が無ぇな危なかったぜ。
そんでもって転生したのに、俺にはチートっぽいモノが無い、ラノベなんかでは神様に頼み事されたり、この先のストーリー展開を知ってる世界っだったり、死ぬ直前までやってたゲームのキャラの能力が反映されたりとか、有りがちな事には全然ならなかった、まあ死ぬ半年前にゲーム止めてデータが無くなったけど。
生まれ変わった世界は貧しかった、文明レベルが低いんだよ、電気もガスも水道も無い。
生まれた家も貧しかった、ハッキリ言ってスラムだ、これじゃあいつ死んだって不思議じゃない。
食べ物が激マズい、そりゃそうだこれ本来は家畜の餌だ。
家はボロボロ雨漏りだらけ、服は接ぎあてだらけヨレヨレのペラペラ。
前世でも不登校だったから学校なんか別に行きたくねえけど、親に殴られてすげえブラックなとこで働かされて、その稼ぎ全部巻き上げられてた。
糞親父め自分の稼ぎだけで家族を養え無い癖に最低だ。
冒険者ギルドって奴も存在しない、あえて危ない事もしたいと思わないけどな。
他の転生者達と来た日には、もうハッキリ言って頭がオカシイ、三人寄れば文殊の知恵とか言うだろ?
知識とか記憶があるんなら、生活が楽になるように改善しててくれれば良いのに、四十五十過ぎのいい年した連中が男も女も、同類同士で寄り集まって宗教に嵌まっているんだ。
新興宗教とかじゃないぜ、ユイショタダシイ世界三大宗教って奴の一つだ。
自分の神様の言いつけだけが絶対で、別の宗教の神様を目の敵にしている連中だ。
特に女達が頭から黒い布を被って、目だけしか出さない格好だから、異様に目立つ。
お仲間なんだから援助して貰おうとしたけど、一日何回もお祈りにつきあわされて、酒がダメだとかスゲぇ色々口うるさい事を言われた挙句に、すぐ追い出された、教義を守れない異教徒だからって。
創生神である女神を信仰しているこの世界で、『自分達の神』だけが絶対のこの連中が女神様を悪く言うせいで、他の『転生者』は一括りに地域から排除されてるってのに!
★ ★ ★ ★ ★
親に叩き出されて、水汲みに出た。
水瓶が重い、陽射しが熱い、目や口に水分を奪おうと虫がたかって来る、相変わらず俺の生活は最低だ。
あれから『前世の知識があります、計算できます』って、商人に売り込んで奉公に出ようとしたけど、この世界の文字と数字の方が読めない。
前世の数字で地面の上で計算して見せたけど、『読むのも、計算結果を書き込むのも誰かに代わってもらわなきゃいけないんじゃ、その分人手がかかって話にならない、読み書きができるようになってから出直して来い』って断られた、なら荷運びでも何でもしますって食い下がったけど、ガリガリに痩せた身体を嘲笑されただけだった。
他の転生者が、前世の知識を書き残した覚書があるから読んでくれって、
(入手方法がすげえ不審、他の奴の手に渡る筈が無いのは、俺だって分かる、転生者達はガッチリ団結してて、よそ者を寄せ付けないからな!)
怪しげな奴らに持ち掛けられた事もあったけど、その書類日本語じゃなかったんだよなコレが、残念。
たぶんアラビア語?って奴だよ、全く読めなかった、英語だって読めねえけど。
所々に図解の部分があって、土地の面積の求め方とかはなんとか読み解けた、でもそれはこっちの役人商人も分かるとさ。
あと、簡単なモーターも図解していた?みたいだけどそれを見て連中、磁石に銅線を巻くところを木の棒に普通の糸を巻いてやがるから、笑っちまった!んで、殴られた、ちくしょう。
結局は、こっちでは磁石が無いらしくて、それも上手く説明できなかったので、銅貨一枚にもならなかった。
磁石の作り方なんて知るかよ、小学生の頃鉄の釘を磁石でこすると磁石になったのは覚えてんだけどな。
だから、元になる磁石はどっから調達するんだよって・・・
魔獣を警戒しながら、朝からもう4か所も回ったのに、乾期のこの時期どこも汲み尽くされてる。
街中の井戸なんか、俺たちは近寄るだけで衛士にぼこ殴りにされる。
昼過ぎに5か所目で手ですくえちまうぐらいの立派な泥しか残ってなかった、雨期の時期でも立派な水たまりの泥水だが、これはスゴイそのまま捏ねて、セトモノでも作れそうだ。
どうでもいいけど腹減った、水汲まねえと家に入れてもらえねえんだけど、コレで大丈夫か?
「おい!そこをどけっ!」
後から来た奴がスッゲームカツク上に、突き飛ばしやがった、譲ってやる義理は無いのでやり返した。
「何しやがる!」
もみ合いがエスカレートして、そこらへんの石を掴んで殴り合った。
ガッ! あっ!ヤベぇ?!オレのズガイコツ割れてね?コレ?
気が付いたら、その日の朝だった・・・・・・いや俺?死んだよな?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
死んでやる、一番派手に死んでやる、みんなみんなお前らのせいなんだからな!
世間やマスコミから『犯罪者の家族』って非難されればいいんだ。
五つ上の兄貴は一流企業に就職した、二つ下の弟はこの国で一番の国立大学に合格した。
真ん中の俺は、イジメられて引き込もってハタチをとっくに過ぎてても中学校も出ていない。
家族みんなに罵られた、恥だから隣近所に知られないようにコッソリ引っ越して、都内に一箇所だけ残った夜間中学に働きながら通え、と言われた。
『パチンコや競輪場には、自分からあの混雑の中にいそいそと出かけて行く癖に、働く時だけ人間が怖い?
お前のは引きこもりじゃない! ただの怠け者だ!いつまでも親に寄生しているな!』
冗談じゃない親のくせにそこまでするか、家賃が稼げなければ一月でホームレス、食費が無ければ飢え死にだ、何よりネットが出来ない。
勝手にオンラインゲームを切られた、めちゃくちゃ課金して育て上げた大事なキャラが消されちまった、いや殺されたんだ俺の魔法剣士デューク、確かに金の出所は親だけどあそこまでにするのにどれだけ時間がかかったと思ってんだ。
キャンプに行く準備のふりをして、ホームセンターで色々と買い揃えたけれど本命はこいつだ、世界最小のうたい文句の発電機!ガソリンを一緒に所持していても、言い逃れ出来る。
★ ★ ★ ★ ★
親に叩き出されて水汲みに出る。
おかしい、俺死んだよな?
三軒隣のトタムに殴られたよな?夢か?いや違う!家族や近所の人とのやり取りが一言一句全くおんなじだったぜ、今の現象は『死に戻り』だ!
やっとソレっぽくなって来たか?
とりあえず、あちこち回らず真っ先に5番目の水汲み場に行って、水瓶に一杯汲んで来た、今回ばかりは重さが苦にならなかったぜ。
日が暮れてから、トタムが怒鳴られているのが聞えたけど、殺されたこっちにしてみれば、まだ足りないね。
丸一日食い物を探して、酸っぱ渋い木の実を巡って争って突き落された⇒その日の朝に死に戻った。
『トタム!またオメエか!』『何のことだよっ?』その野郎を木の前で待ち構えてヤラレル前にヤッテやったら、街の衛士に『人殺し』って追いかけられた、いつもは魔獣のいる壁の外に出ないのに、何でこんな街の外にお偉い市民サマが居るんだよ。
『俺の方が先にコイツに殺されたんだ!』って言っても、当然聞いてくれないから、ナイフで自分の首をかき切った⇒その日の朝に戻る。
でも、すっげえ痛かった。
そうだよな、俺が死ななきゃ巻き戻らないんだよ、戻ったら戻ったで手に入れたまっずい木の実は無くなるんだよ、コレけっこうしょぼくネ?
朝一で木の実を確保して、トタムを待たずにその場を去ったけど色々面白くない、あんだけ痛い思いをして、手に入ったのはクソマズイ木の実が3個かよ。
あれからイロイロやった、ちょっとだけ水魔法が使えるから訓練したけど、魔力切れで枯死するまでやるのってしんどい、精神的な何かが捩られて絞られて死ぬんだ、一度で懲りた。
魔獣に立ち向かって特徴つかんで経験を積む?絶対ムリ。
手に入るのが情報だけなんて馬鹿らしいじゃん。
もっと、簡単な奴らがいるさ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ガソリンの容器を開けようと手をかけた。
『自殺するの?なら残りの時間も身体も要らないわよね?』
そんな声が聞えた気がした
★ ★ ★ ★ ★
商隊が街に無事到着して、一杯ひっかけてご機嫌になっている護衛や人足どもを人気のない物陰で待つ。
最初は狩りの為に武器や防具を手に入れようとしたんだけど、契約が終わった余所者が居なくなっても、意外にバレないのな、目撃者が居たならそいつも殺して、結構何とかなるもんだ。
たまに酔っぱらっててもメチャクチャ強ぇ奴もいて、返り討ち⇒死に戻りする事もあるし、巡回の兵士に出くわしたり、襲った相手に捕獲されたり。
最悪どうしようもなくなったら奥の手で仕切り直しをするけどな、
ちょくちょくだけどハハッ。
親がうるせえから、働きに行く振りだけしようと家を出たら衛士に取り囲まれた。
「ジントだな。」
人違いですって言える雰囲気ですらない。
「何でしょうか?」
とりあえず、大人しく、逆らわずっ、と
「お前さん最近随分と羽振りが良いようだな?」
嫌な笑い方をしながら、前後から複数の槍を、石突き側を身体に絡めて来る。
「そんなことはないですよ。」
本当だ、稼いだ金は家族にも渡さずに、一人でコソコソ使ってたんだから。
「おいっ何をする?」
首をかききったら盛大に血が飛び散った、
もちろん’俺の血’が。
⇒飛び起きて、隠してある金を持って街から逃げようとしたけど、入り口開けたら衛士がいた、家から一歩も出られないうちに捕まった。
2回位繰り返して、諦めて捕まった。
甘かった。
貴族でも何でもねえ奴の裁判なんて無い、翌日には刑場に引きずり出されて、一回死んでっから気が付いた。
『日付』が変わったから何度死んでも、牢の中で『朝』が来る。
ヤベぇよコレ、マジヤベぇよ、コレってエンドレスだ。
『本当に』死にたい訳じゃないけど、『死に戻り』を止める方法が分からない、何十回も殺されて、苦しいのに終わりが無い!
何の為の転生だったんだよ!糞みたいな世界で、周り中貧乏人ばっかりで、チートも無双もハーレムも、良い事が何にも無いじゃないか!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
『本日午後9時頃、帰宅客で混み合う地下鉄××線○○駅で、ホームに並んでいた乗客が・・・突然男にホームから突き落とされる事件が発生しました。
・・・ホーム上でも転倒に・・・骨折し・・・
この事件で死者一名、重傷者三名ですが・・・犯人も三人目の被害者と一緒にホームから飛び降り・・・動機などは・・・』
『・・・二人目に突き落とされたコ・・・高村・・・さんは、20××年から国盟難民高等弁務官の・・・氏のスタッフとしてアフリカや・・・20××年からは自らNPO団体を立ち上げ・・・・・・』
気が付くと俺は病室にいた、穴なんか空いてない壁の白い清潔な病室だ。
日本語で、俺の名前が書いてある!
向こうの世界には無かった点滴の管が下がっていて、顔に呼吸器のマスクが付いている。
ああ・・・戻って来れたんだ・・・
「お願いします先生、弟は今まで人の為に何十年も頑張って来たんです、それなのに見ず知らずの相手にこんな目に遭わされるなんて、あんまりです。」
病室の外から、兄貴の声が聞こえる。
最後に会った時にはニートな俺の事を、ダニだの穀潰しだのと罵っていたのに、どうした事だ?
「取材の方々にも伺いました、弟さんは紛争地帯の難民支援に御尽力なさっていらしたとか・・・ですが残念ながら意識が戻っても、首から下の・・・」
「ウ~・・・ウ~あ~・・・ウー」
手足が思うように動かない、喋ろうにも呂律が回らない!
どうなってんだコレ?
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都合が悪い悪い事実は捻じ曲げられてしまいますので、主観と客観的な事実には大きな差が生まれています。
文中で、寄生しようと尋ねて行った共同体を『頭のオカシナ連中』呼ばわりしているのは、単なる負け犬の遠吠えです。
彼らは元の世界の神様の教えを正しく守り、大多数が創世女神を信奉するこの世界で、少人数ながら(20人前後)助け合って、教義に則った慎ましい生活を送っていただけです。
同郷の人間だと偽って入り込み、ぐーたら働かずに養ってもらおうとした挙句に、飲酒を希望して馬脚を露したのです。