災難の最初
小説を書くのはこれが初めてです。
設定は異世界冒険もの。
設定が狂わないように気を付けて書きますが、なんせ初めてなものでどうなるかはわかりません。
日常系を中心に書いていこうかと思っています。
何卒、よろしくお願いします。
昔話
どれくらい昔かわからないくらいの大昔。
世界は魔王に支配されていた。
魔王は群を組織し、人間の村を次々と襲っていった。
そんな魔王を倒そうと人間達は腕に覚えのある者で討伐隊と作り、魔王の城へと向かった。
だが、誰一人として帰って来た者はいなかった。
世界に絶望し、抗うことを諦めかけていたそんなある日、一人の若者が魔王討伐を宣言した。
周りの人々は若者を止めた。
だが、若者は人々の声に耳を貸さずに魔王の城へと向かったのだった。
若者が魔王城に旅立って数日したある日、突然空が晴れたのであった。
人々は戸惑いながらも喜び、どのくらいかぶりの太陽に拝んだ。
その後、魔王城に行った若者が帰って来た。
若者の手には赤い角が握られていた。
若者は言った、
「これは魔王の片角だ。私は魔王を倒してきた。もう恐れることはない。世界は解放された」
それを聞いた村人達はこの時初めて心の底から喜びを感じたのだった。
この若者の噂は瞬く間に全世界に広がった。
後にこの若者は『勇者』と言われるようになった。
魔王がいなくなった世界は昔の平和で長閑な世界に戻った。
だが、世界にはまだ魔王軍の残党がいた。
魔王というリーダーを失った残党は、勇者の力を恐れ身を隠すことにした。
世界は平和になったが、こんな噂が世界に広がっていた。
「魔王様はいつか復活なされる。その時がお前ら人間の最後......」と。
人々は勇者の伝説を後世に語り継ぐことにした。
そして同時に、魔王復活の言葉も一緒に語り継ぎ、警告とすることにしたのだった。
第1話
僕はこの昔話が大好きだった。
世界を救ったヒーロー。
誰にも負けない力というのは男なら誰もが一度は夢見るものだ。
もちろん僕も例外じゃない。
だけど、現実はそんなに甘くない。
成長していくうちに自分はヒーローなんかにはなれないとわかってしまうのだ。
他の子よりも小さく、力も弱い。
力の強い子には勝てる訳がない。
僕は小さくて弱い、只の子供なのだと。
そんな僕もこの前十五歳になった。
いまだに小さいままだけど、今はそれでもいいと思っている。
そう思いながら僕は今日もこの村で仕事をしている。
僕のいる村は通称『さいしょの村』と言われている。
ずっと昔、突然異世界から人が現れるようになった。
なんでもその時神が現れ、こう言ったらしい、
「今、違う世界からの来訪者が現れた。来る魔王復活に備え、異世界の者を召喚した。力は与えた。あとはそなた達、人に任せた。世界はそなた達にかかっている......」
それ以来、異世界から人が来るようになった。
みんなは『異世界人』と呼んでいる。
そのままだ。
この異世界人が、何故か僕の村の近くによく現れる。
一番最初に来る村だから、みんないつの間にか『さいしょの村』と呼ぶようになった。
そんな村になってしまった僕の村では異世界人にこの世界のことを教える役割が課せられた。
そうすると村の中でも役割分担がされるようになった。
最初に異世界人に挨拶をする係や世界の仕組みを説明する係など、結構細分化されている。
そんな僕の係とは、通称『村人E』である。
どんな係かというと、村にいて異世界人とあまり関わらず、話しかけられた時だけ話すという、なんとういうかただの村人。
もっと言えば背景だ。
自分で言うのもなんだけど、なさけない。
それでも、それが僕なんだ。
小さい頃は異世界人と人と一緒に魔王復活を阻止する為に冒険行くんだなんて夢も見ていた。
だけど、僕みたいなのが行っても、すぐそこの森でちょっと強めの魔物に襲われて終わりが関の山だ。
だから、僕は今の係も悪くはないと思っている。
実はこの係は村から給金が出ている。
何故かというと、異世界人は僕達のようなこの世界の人間よりも力が強かった。
神様が言っていたように魔王が復活した時、助けになるかもしれないと思った国王が村々に異世界人を持て成すようにする仕組みを作ったのだ。
その仕組みのおかげで各村に一年毎に国からお金が与えられ、各村は異世界人を持て成す為に係を決め、仕事にしたのだった。
なので、村人Eという役割の係になっている僕は村から一定額の給金が貰えるということだ。
でも、高々村人Eじゃ生活は出来ない。
だから僕は魔石集めも行っている。
魔石とは魔力の源である。
魔力は僕たちが生活していく上ではなくてはならないものだ。
そんな魔力の源の魔石は売ることが出来る。
僕が集められる魔石に含まれる魔力はたかが知れている。
だから、結構な量を集めなければいけないんだけど、これが結構大変だ。
森に行って集めるのだが、森には魔獣がいる。
だからいつもビクビクしながら集めるので、精神的にも肉体的にも辛い。
だけど、生活の為には集めないいけない。
それが僕の日常だ。
ほんと、何やってんだろう......
今日も森に魔石集めをする為村の外に出ようとした時だった。
突然僕は呼び止められた。
「また森へ魔石を取りに行くのか?」
その声に振り返り、本人の顔を見て心の中でため息をついた。
声の主は『ロキム』というこの村の村長の孫だ。
僕と同い歳なんだけど、村長の孫ということで村の中ではやりたい放題だ。
悪さをしても村の人達は村長に何か言われたくないと思い何も言えないでいる。
そんな村長は悪い人ではないのだが、孫を溺愛していて孫の言うことを何でも聞いてしまうのだ。
だからロキムには誰も歯向かえないでいる。
そんなロキムは僕をことあるごとにいじってくる。
正直めんどくさいから関わりたくはないのだが、向こうはそうではない。
「大変だな貧乏人は。毎日毎日森に魔石取りなんてさ?俺なら考えられないよ」
そう言って今日も勝ち誇った笑みを浮かべている。
「そうだね。僕も大変だけど生活していく為だから仕方ないよ」
今日も無難に返しておく。
「そうだろうな。僕のように『村人A』って役割でも貰えれば楽が出来るのにな。まあ、君は村人Eだから仕方がないか。精々毎日頑張ることだね」
そう言うと近くにいた取り巻きに合図を出して椅子を運ばせ、今日も村の入り口前に座った。
彼が言うように村人Aで貰える給金は僕の村人Eとは全然額が違うのだ。
もっとも村長のコネを使って村人Aという地位を手に入れただけの話なのだが。
村人Aとは異世界人に一番最初に話しかける係だ。
この世界のことや村のことを軽く説明し、各係に会わすのが仕事である。
最初に会話をするということで係の中では一番重要な役割を担っている。
何故なら、異世界人の機嫌を悪くしたら村なんて簡単に消えてしまう。
異世界人とはそのくらい僕達とは力が違う。
だから、村人Aへの給金は高くなっている。
そんな重要な係をロキムがやっているというのは内心不安でたまらない。
まあ、実際はロキムが話すのは挨拶くらいでその後は取り巻きが説明しているから問題はないのだが。
ロキムに朝一から出くわすなんて運が悪い。
これ以上変なことが起きなければいいのだが......
森で魔石集めをしていたが、今日は豊作だった。
朝から嫌な気分になって先が思いやられていたが、そんなことは吹っ飛んでいた。
これなら明日は少な目でも大丈夫なくらいの量になった。
気が付けば昼を過ぎたあたりになっていた。
太陽はもう頂点を過ぎていた。
つい夢中になっていたらしく、腹の虫が今頃騒ぎ出した。
ちょうど良いので、遅いお昼にしようと僕は近くの気にもたれかかった。
持ってきていた包みを開けて、朝作ったサンドイッチを広げる。
準備が出来て食べようかと思った時だった。
突然、空が暗くなった。
さっきまで雲一つなく晴れていたはずなのに真っ暗だ。
よく見ると、空には今も雲一つない。
だが、あたりは真っ暗になっている。
僕は気づいた。
異世界人が『召喚』されるのだと。
異世界人召喚の際はあたりが暗くなり、少しして光の柱が現れるのだ。
その後、異世界人が村に来るのが通例である。
だいたい、村から少し離れた草原に現れることが多い。
たまに変なとこに現れるが、そんなことは滅多にない。
僕は急いで広げていたお昼を閉まって、異世界人に備える為に身支度を整えてた。
出発しようと腰を上げたその時だった。
突然、あたりが眩しく光ったのだ。
突然のことに僕は何も考えられなくなっていたら、いきなり木々が折れる音が聞こえた。
と、思ったら僕の上に何かわからない塊が降ってきた。
僕は何も出来ずに潰された。
そのすぐ後、眩しさはなくなりあたりはいつもの明るさに戻った。
だが、今の僕にはそんなことどうでもよかった。
今は一刻も早く上に載っている重いモノを退かしたくてもがいていたからだ。
もがきながら上に載っているモノを退かそうとしていたら、なんか柔らかいモノに触れた。
「ヒヤッ!!」
そんな音がしたと思ったら、上に載っていたモノが勝手に退いた。
僕はそのモノを見る為にゆっくり起き上った。
そのモノを見た瞬間僕は思考が止まった。
僕の上に載っていたモノは女の子だった。
歳は僕と同じくらいだけど、背が僕より高い。
髪は肩位で茶色かかっていて、目が少し赤みを帯びていた。
森の木々の間から漏れる光に照らされて目が輝いて見えた。
「綺麗だ......」
と言い終わる前に、僕は凄まじい力でビンタされた。
僕は吹っ飛びながら、
「なんで?僕は吹っ飛ばされてるんだ......」
と考えていたような気がする。
何故曖昧なのかというと、ビンタされた勢いで木に頭からぶつかった衝撃により意識がなくなったからだ。
ただ、確実に覚えていることがある。
それは女の子の、
「どこ揉んでんのよ!この変態!スケベ!ぶっ飛ばす!」
という言葉と、その言葉の後に聞こえた、
「うっ......おろろろろろろ」
という嘔吐している音だった。