表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/4

2

有り得ないよ。こんな、探偵事務所!

お客に敬語も使えないような男、いや、この若さで探偵と名乗る事も、あの安倍清明(探偵、陰陽師)と書かれたふざけたような名刺、本当に人を馬鹿にしていると思う。


あぁ、もういい!!もう、いい!!!!


でも……


本当に…?



どこかで、恋人を調べると言うことに、後ろめたさを持っていた。

どこかで、信じなきゃと思っていた。

大学時代を入れて、6年近く片思いの相手だった、その思いが叶ったんだもの、信じたい。


でも…本当に、このままでいいの?こんな不安を持って結婚できるの?



**********

辛く、そして切ない思いで、夜毎、枕を濡らすあなた。                     

不安で、愛する人を疑ってしまうあなた。                          

お任せください・・あなたの恋の悩み・・・解決いたします。 安倍探偵事務所

**********



Webサイトで見たこの謳い文句に、縋る思いでここまで来たんだ。

私が知った事が真実ではないと確かめたくて…



恋人が、二人の女性の死に関係ないことを調べて欲しくて…ここに来たんだ。



突然黙り込んだ私を、観察するように見ているこの美形の視線に、気が付いたが、対抗できる視線などなくて、逃げるように下を向き、安倍清明の名前の後ろに印刷された、(探偵、陰陽師)と書かれた名刺に、もう一度目をやった。お客に敬語も使えないような男、いや、この若さで探偵と名乗る事も、あの安倍清明 (探偵、陰陽師)と書かれたふざけたような名刺、本当に人を馬鹿にしていると思う。


だけど…


安倍清明(探偵、陰陽師)と言う名刺が…私にこの探偵事務所を出て行く決断を鈍らせている。

陰陽師なら、もしかして…と思ってしまったからだ。



それは…今でもネット上で、話題になる不思議な話だ。


〇〇山の山中で、女子大生が、大型の肉食獣に襲われたかのような遺体となって発見された6年前の事が、始まりだった。日本における大型の動物による死亡事故は、熊としか考えられず、当時、山狩りが行われたが、熊の痕跡は発見できなかった。だが、とても人による殺人事件とは思えない遺体の損傷に、やはり熊による死亡事故という形で終わった。


そして3年前、〇〇病院の看護師が、勤務中に行方不明になり……2時間後、あり得ない事に、120キロ先のゴミ処理場でバラバラになった遺体となって発見された殺人事件。


ふたつの女性の死を繋ぐものは、なかった。そうなかったはずだった、ひとつは事故であり、もうひとつは殺人、だが、私は知ってしまった。

そのふたつを繋ぐものを……それは……三ヶ月前に付き合い始めた恋人の篠宮 真二。



6年前の事故も3年前の殺人も、人がやったとは思えない不思議な出来事だった、だから彼が彼女達に危害を加えたとは思ってはいない。でも、そんな不思議な死に方をした女性ふたりが、揃いも揃って彼の元恋人だったなんて、どう考えても、自分が納得できる答えが出てこない、

この胸の中で、膨れ上がったこの不安を消し去らないと、前に進めないのはわかっている。


でも…叶ったのに、片思いが叶ったのに…失いたくない


ぐるぐると空回りし始めた私の思考を止める様に、頭上に大きな手が被さり、犬にそうするみたいに頭をくしゃりとされ、私は顔を上げた。


「世の中には、偶然はあり得ない。」


また、私の頭に置いた手を動かしながら



「全ては必然。あんたは男の事で俺に依頼を持ってきた。


なぁ…それはひょっとして…


彼氏の歴代の恋人達が行方不明・・・・、あるいは・・んでいるって話かい?


……戸田静香・・・・さん。」




どうして…名前?知っているの?


話していないに…どうして…どうして…?



驚きに目を見開く私に…

「俺も、あんたを待っていた、俺の探し物の鍵となる女をね。」


そう言って、微笑んだ男に、私はただただ、息を飲んでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ