ホーネットにて
「てなわけで、ホーネットに入る事になった。皆、改めてよろしく」
店に戻り、外で決まった事をホーネットの皆に話す。嬉しい事に、皆笑顔で歓迎してくれたら。まぁ、アーガスは無表情だったが。
「ねぇねぇ、新メンバーの歓迎会やろうよ!」
クローズが目を輝かせて提案する。
「あら、いいわね」
「……うん」
「お、やっちまうか? どうする、リーダー」
「あぁ、いいな」
満場一致で可決された。どうやら俺の歓迎会を開いてくれるみたいだ。
「んじゃ、俺達は準備するからリーダーは先に案内しといてくれ」
「そうだな。沙雅、ついてこい。店の中を案内してやる」
「了解」
リーダーは店の奥へと歩き出し、扉を開けて奥へと進む。
「それじゃあ沙雅、楽しみにしててね〜」
「クローズ、つまみ食いしたら許さないわよ」
「は〜い……」
「それじゃあ沙雅、また後で」
「じゃね〜」
「おう、また後で。楽しみにしてるよ」
ミーヤとクローズに軽く手を振り、リーダーを追うように扉の中へと入る。
扉の先には小さめの部屋があり、左右に別の扉、正面には二回へと続く階段があった。
「お前からみて右がシャワー室。左が倉庫だ」
リーダーは階段の前に佇んでいた。部屋の暗さと服の暗さがマッチして少し怖い。
「シャワーは自由に使ってくれていいが、倉庫は鍵がかかっているから開ける時は俺に言え」
「あぁ、わかった。まぁ今はシャワーはいいかな」
「そうか、それじゃあ2階だな」
階段を上る。階段は途中で踊り場があり、そこを起点に折れ曲がっていた。学校の階段みたいな感じの階段だ。
足を踏み出す度にミシミシと音を立てて軋む階段を登り終えると、廊下と3階へと続く階段があった。
「ここの廊下は皆の個室だ。一番奥のが空いてるからそこはお前の部屋に使ってくれ」
「マジで?! 部屋あり?!」
まさかの個室完備だった。別に雨風しのげれば十分だと思っていたから、これは嬉しい。
一番奥の部屋へと駆け寄り扉を開け放つ。途端、ホコリが舞って咳き込む。
「まぁ、あまり使ってないからしばらくは掃除続きだろうがな」
「そう上手い話は訳ありだろうな……」
正直ここまでうまく行き過ぎてるから、何かマイナスな事があった方がむしろ安心する。
見知らぬ土地で寝食を保証される代わりが部屋の掃除などまだ安いものだ。
「あとは3階は共通の部屋になっている。ホーネットの方針なんかの重要な話し合いはそこでやる」
「あー、会議室みたいな感じね」
下のバーは休憩所、上は会議室と言う感じだろう。
え、あのメンバーが真面目な顔を連ねて話し合いするのか?
「……ブフッ!」
クローズやガルムの真面目な顔を想像してしまい、思わず吹き出す。
ミーヤやリーダーはまだしも、あの2人はそんなタイプの人間ではなさそう。なおアーガスは未知数。
「これで案内は一通り終わりだな。後々ラウジカの方も案内するが、今はこれだけだ」
「ありがとう、助かる」
これでここでの過ごし方は大体把握した。
あぁ、そう言えば『仕事』についてまだ聞いていなかった、と気づく。
「なぁリーダー、仕事ってのは何をするんだ?」
ホコリだらけの部屋から離れるように扉を閉め、階段を下りながらリーダーに質問する。
リーダーは何かを思い出した様な顔をすると、
「そう言えばまだ渡していなかったな。倉庫の方へ行くぞ」
そう、俺の質問には答えずに、倉庫の扉に手をかけて言った。