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ジョーカー・ガン  作者: 唄海
1章 撃鉄を起こせ
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異世界より愛をこめて

「『ホーネット』? それって……」

「あぁ、俺達の呼び名だ。ラウジカではサークルの戦火から逃れてきた人達がいる。その人達のまとめ役みたいな感じの組織だ」

「なるほど」


 つまりラウジカの人々がホーネットではなく、ラウジカの人々の中にホーネットのメンバーがいるという事か。

 という事はルゲルカも同じ感じだろう。


「ん? て事は普通に人はいるのか。てっきり誰もいないと」

「当たり前だ。サークルに住むなんて命知らず、お前ぐらいだ」

「いや、住んでたわけじゃ……」

「まぁいい。これで一通りこの辺りの情勢は説明した」

「え、終わり?」

「なんだ、まだ他にあるのか?」

「うーむ……」


 この世界の情勢は分かった。しかし、まだ剣も魔法も話に出ていない。

 異世界転生と言ったら剣と魔法。そして転生した者に与えられるチート能力。

 だっていうのに、全くその内容が出てこない。もしかすると当たり前過ぎて説明しなかったのだろうか。


「なぁリーダー。あんた達はどうやって戦ってるんだ?」

「ん? 銃に決まってるだろ。まさかお前、素手で戦うのか?」

「いや、そうじゃなくてさ。あるだろ、魔法とか超能力とかさ」

「はは、面白い冗談だな。そんなもんあったらさぞ便利だろうな」


リーダーは愉快そうに笑う。だが、一方の俺は笑える状況ではない。


 魔法が無い? 武器は銃?

 そういえばリーダーも、何の変哲もない普通の(MP5)を使っていた。


「……」

「どうした沙雅、顔色が悪いぞ。気分でも悪いのか?」

「いや、大丈夫……多分」


 頭が痛い。背中から冷や汗が出てくる。

 どうしよう、チートなしで異世界転生とか死ぬしかない。しかも、街中では戦いが起きている。


「これからどうやって生きていけばいいんだ……」


 発狂したくなる気持ちを抑え、空を見上げる。空には赤い宝石の様な円─おそらく元いた世界での太陽のような物─が昇っており、ここが元いた世界ではないという現実を突き付けられる。


 ちくしょう、こうなったらいっそのこと死ぬか──


「なぁ、沙雅。お前、行く先はあるのか?」


 絶望に浸っていると、リーダーがそんな事を質問してきた。


「行くあてもないし、このままだと野垂れ死にだ。てか、どうあがいても死ぬしかなさそうだ……ははは……」


 俺は自嘲する。あまりにも絶望的な状況すぎて、逆に諦めがついたような気持ちだ。


「ちくしょう、短い人生だった……」

「おい、何勝手に諦めてやがる。俺の話を聞け」

「なんだ? いい死に場所でも教えてくれるのか?」

「違う。───お前、ホーネットに入れ。ただ死ぬよりはマシに生きれる」

「……は?」


 それは、絶望的な状況に射した光のような提案だった。









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