時計じかけの古喫茶
「おーい、リーダーとお客さんだよー」
クローズは俺を引っ張りながら建物──中はバーのようにカウンターや座席があるシックな空間になっている──へと案内してくれる。
中には3人、人がいた。
「あら、珍しいわね」
一番前のカウンターに座っていた女性が立ち上がってこちらへとあるいてくる。
緑色の長髪、豊満な身体つき、口元のホクロ。とにかくエロくて綺麗な女性だった。
「沙雅って名前だってさ」
クローズが紹介してくれる。
「いらっしゃい、沙雅。ゆっくりしていきなさい」
「あ、あぁ! ゆっくりしてく! えーと……」
「ミーヤよ」
「よろしくミーヤ!」
握手を交わす。握った手はとても艶やかで、理性がガラガラと音を立てて崩れ去る。
とにかくエロい。思わず声が大きくなる程エロい。
唯一の救いと言えば、彼女は他の人達より厚着な事だ。それでも体のラインがわかるのだから、薄着なら大変な事になる。
低体温なのだろうか。
「…………」
「ヒィ! 何?!」
いつの間にか隣に人が立っていた。
「…………」
「ななななななんです?!」
その人はジト目で俺を見つめてくる。なんだろう、すげー怖い。
「…………」
「アーガス」
「へ?」
「…………」
それが名前だと言う事を理解するのに、数秒。いつの間にかアーガスは元いた席に座っていた。
濃い紫のくせっ毛。ちくしょう、性別がわからねぇ!
「よろしく、アーガス」
奥の方に座るアーガスに向かって手を振る。
やっと理解したか、やれやれ。そんな感じの目をしながらも、アーガスはコクコクと頷いてくれた。
「悪いね、無口なヤツなんだ」
クローズがフォローを入れる。
「よぉ、お前が沙雅か!」
「あぁ、俺が沙雅だ」
「お前だったのか!」
「知らんがな」
「ハッハッハ! 面白い奴だ!」
カウンターに立っていた大柄な男性がのっしのっしと歩いてくる。金髪モヒカン。見た目からしてヤバそうだ。
「アンタは?」
「俺はガルムってんだ。一応、こん中じゃ1番年食ってる!」
「お、おう……よろしくガルム」
握手を交わす。やはり手もデカい。街中で会ったら間違いなく逃げる。
「よーし、1通り終わったね。まぁ、そのへんに座ってよ」
クローズが席を勧めてくれる。言われるがまま、俺は入り口付近の座席に座る。座席はわりとフカフカだった。
「あ!」
「ん? どうかした?」
「トイレか? トイレだったら奥行って右だ!」
「あ、いやそうじゃなくて」
あまりにも皆がフレンドリー過ぎて気が緩んでいたが、そもそも俺は絶賛迷子中だった。
「聞きたい事があるんだ」
「あら、何かしら?」
「…………」
流されるがままここへ来てしまったが、そもそもここは一体どこなんだろうか。
「ここは何処なんだ? 俺、鉄尾町から来たんだ」
「テッピチョー? そんなとこ、聞いたこともねーな!」
「俺もだねぇ。アーガスは知ってる?」
「知らない」
「え、じゃあ一体ここは何て名前の町なんだよ」
心が焦り始める。どうして、皆知らないんだろうか。
リーダーが俺をじっと見つめる。
「なぁ沙雅。お前、サークル出身じゃ無いのか?」
「いや、日本生まれの日本育ちだ。サークル自体がどこだかわからない」
「……なぁ、沙雅。一つ聞きたいんだが」
「なんだ?」
心が、心臓が警鐘を鳴らす。ダメだ、聞いてはいけない。聞いたら絶対に後悔する、と。
そんな予感を抑え、リーダーの質問に答える。だがそれは、やはり聞いてはいけない質問で、聞いてしまった故に大きな後悔を残してしまう物だった。
「───ニホンって何処だ? 沙雅、寝ぼけて無いよな?」
キャラまとめ
リーダー:銀髪、長身
クローズ:金髪、童顔、ムードメーカー
ミーヤ:女性、緑髪、エロい
アーガス:性別不明、濃い紫の髪、くせっ毛、無口
ガルム:金髪、モヒカン、大柄
沙雅:黒髪、黒目、一般人、甘党