表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジョーカー・ガン  作者: 唄海
1章 撃鉄を起こせ
18/32

帰るべき家

 外に出ると、雨は止み、雲間からこの世界の太陽が顔を出していた。


「帰るの?」


 背後から声がする。振り向くと、あの少女が柔らかな笑みを浮かべながら立っていた。


「あぁ」

「そう。じゃあ、また今度だね」

「また」


 再会の約束を交えて、俺は教会を後にする。遅くなってしまった。早く戻ってリーダー達に謝らなければ。

 僅かに残った記憶と、勘を頼りに帰路を歩く。


「多分、こっち」


 ずんずんと、あちこち割れている石畳の道を歩いて行く。しばらくすると、あの店が見えてきた。

 勘という物は馬鹿には出来ない。人間が無意識に溜め込んだ情報、知識、景色。それらを無意識下で演算、予測した結果が勘なのだ。


「あれは⋯⋯」


 ふと、扉の前に誰かが立っている。遠目から見ても目立つ銀髪は、リーダーに違いない。もしかしてずっと待っていたのだろうか。


「ん、ちゃんと帰ってきたな」


 俺を見るなり、リーダーは安堵の表情を浮べながらそう言った。


「わざわざ待ってたのか」

「主役が来なきゃ、歓迎会は開けんだろう」

「⋯⋯別に、歓迎されるような事はしてねぇ」

「そうか。だが、生憎準備は終わってるからな」

「⋯⋯⋯⋯」

「そう自分を卑下するな。お前が思ってるほど、お前は小さいヤツじゃないさ」


 そう言ってリーダーは俺の方へ少しだけ近づく。そして、俺に向かって手を差し出した。


「言っただろ? もうお前は仲間だって。仲間を認めてやるのは、仲間として当然だろ」

「はは⋯⋯仲間か⋯⋯」


 仲間。その言葉が、じんわりと俺の心に浸透していく。こんな感覚になったのはいつ以来だろうか。────いや、もしかしたら初めてかもしれない。

 そう言えば、あの少女の手を握った時も心に温かさを感じた。


「なぁリーダー。俺、守りたい人がいるんだ。弱そうなクセに、見ず知らずの俺を助けようとしてくれた」


 リーダーの手に向かって、俺も手を差し出す。


「だけど俺は、力も知恵も技術も無い。だから、力を貸してくれ。俺も、足を引っ張ら無いように頑張るからさ」


 リーダーの目を真っ直ぐに見返して、俺はリーダーの手を取った。がっちりと交わされた手。初めての仲間の温かさは、空っぽだった俺の心には十分過ぎるほど注がれた。


「よし、じゃあ行くか。これ以上待たせると、クローズがつまみ食いと称して料理を平らげちまいそうだからな」

「そいつは困るな」

「だろ?」


 互いに笑みを浮かべ、店の扉を開く。なんと言って入ればいいだろう。遅れてごめんと謝るべきだろう。帰ったと報告するべきだろうか。何にせよ、俺はこれからここに帰ってくるのだろう。だとすれば、言う事は決まっている。


「ただいま、皆」


 ────この日から、この店は俺の帰るべき『家』になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ