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ジョーカー・ガン  作者: 唄海
1章 撃鉄を起こせ
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死に至る病

 ざあざあと降る雨の中、俺はふらふらと街を彷徨っていた。

 申し訳程度にパーカーのフードを被っているが、全身びしょ濡れだ。


「異世界でも雨は降るんだな……」


 そんな的外れな事を呟きながら、意味も無くただふらふらと歩き続ける。相変わらず人は1人もいない。

 帰り道は、もうわからなくなってきた。あれほど死にたくなかったはずなのに、今はもう何とも思わない。


「馬鹿な話だ。相手の命と自分の命、どっちが大切なのかなんてわかるはずなのに」


 分かっている。そんな事、俺だって分かっている。人間、最後には自分の命が一番大事だって。

 それなのに、俺は自分より他人の命が大事だった。まだ殺してもいないし、知ってすらいない。それでも、天秤は相手に傾いていた。なぜ、俺はこんなにも他人が大事なのか。


「──ぁう」


 ひどく頭が痛む。その理由を思い出そうとすると、何時も何かに阻まれる。


───俺は記憶が欠落している。と言ってもちゃんと昔のことも覚えているし、日常生活に支障はない。問題があるのは、『家族』についてだ。

 俺は何かの理由で親が死んでしまい、そのトラウマで家族の記憶が欠落してしまったらしい。そのあたりの記憶はもう全くと言っていいほど無く、後から聞いた様々な情報を繋ぎ合わせた『記録』になっている。

 おそらく、その記録には無い記憶に、この天秤のズレの原因がある。


「いつか思い出せる日が来る」


 俺の事を引き取ってくれた祖父と祖母はそんな事を言っていたが、俺は未だに全く思い出せない。思い出そうとすると、頭が拒絶する。


「やめよう、もうどうせ無駄だし」


 なので結局、こうやって放棄してしまう。


「………ちくしょう」


 道端にへたり込む。もう、歩く気力すらわかなかった。だらしなく地面に寝転がり、空を見上げる。

 このまま眠りについたら、目覚めること無く終われる気がした。


「結局、何がしたかったんだろう、俺」


 何も感じなくなってきた。だるさだけが全身を覆い、俺は目を瞑って───


「大丈夫? 眠いの?」


───天使の様な声にすぐさま起こされた。







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