何時も雨降り
息が切れる。心臓は絶え間なく鳴り続け、痛い程に収縮する。
「あんたは……人を殺すのが仕事なのかよ」
ねじ切れそうな意識をつなぎ止め、俺はリーダーを睨みつける。
「そうだ。キュベレーの奴らを殺し、ラウジカの奴らを守る。それがホーネットの仕事だ」
「……っはは!」
あまりにも残酷な世界の在り方に、思わず笑い出す。正直、笑わなければやってられない気持ちだった。
「ちくしょうが……なんでこんな世界に来ちまったんだよ……」
自分自身の運のなさを呪う。殺す相手がモンスターや獣ならまだこんなにも自分を呪う事にはならなかった。
でも、この世界は違う。剣や魔法はなく、モンスターもいない。あるのは人と人が銃をもって殺し合う事だけ。
手に持った銃が、色々な意味で重かった。
「……悪い、リーダー。少し、時間をくれ」
「まだ、準備には時間がある。外でも歩いと来るといい」
「そうする」
俺は立ち上がり、ポケットの片方に無造作に銃をねじ込む。弾丸は込められていない為、ただの見せかけでしか使えない。なぜ俺はこんな物を持ち歩こうと思ったのかすら、俺自身にもわからない。
「人殺しは嫌なのに、持ち歩くのは大丈夫なんだな」
自嘲気味に笑いながら、店の外へと出る。途中、クローズ達が不思議そうに見てきたが、ちょっと散歩とだけ告げた。
「沙雅、一つだけ言っておく」
「なんだ?」
「お前はもう俺達の仲間だ。だから、ここには必ず帰ってこいよ」
「…………別に、出ていきゃしねーよ」
心を見透かされたような気がして、思わず口調が粗くなる。リーダーに言われたように、俺はこのまま逃げ出したい気持ちになっていた。どこへ逃げるのかも、逃げる意味も思いつかないが、それでも俺は逃げ出したかった。
「……ちくしょう」
頭の中がうまくまとまらず、空を見上げる。先程まで晴れていた空は、俺の心を反映したようなぐちゃぐちゃの灰色に変わっていた。




