悟り
そのあとはそれぞれデザートとして甘いものを食べたり、露店で遊んだりして過ごした。フルーツ飴のお店で、散々迷って選んだキウイ飴の最後のひとかけが、棒から落ちてしまったのを、キャッチしようとして手がベタベタになったのはおかしかった。くじ引きでヘンなキャラクターのポスターが当たったけど、どう見てもただの包装紙としか思えなかった。ユウくんは射的で、私に小さなクマのぬいぐるみを取ってくれた。前とは違って、クマの胸にはピンクの水玉模様のリボンがついていた。
私たちはいっぱい思い出を残していった。
どーーんっ!!
ヒューーッ、パァン!!!
「あっ、花火!」
「きれい! もっと見やすいとこ行こう?」
「うん!」
丘にのぼると、夜空に花火が大きく打ちあがった。
でも。
「……」
「うわ~、すごい!」
「う、うん! きれいだね!」
前と同じ場所から見る同じ花火は、前ほどの感動はなくて、なんだかつまらなく思えてしまった。
それよりも、明日起こるかもしれないことを思い出してしまっていた。
せっかくお祭りの間は忘れて楽しもうって決めたのに、私はバカだなあ。
そんなことを思っている間にも、途切れることなく花火は打ちあがり、私たちの顔を明るく照らした。
そして、予定していた花火も終わりになったようで、最後の大輪が五つ続けて打ちあがり、火薬の匂いと白い煙を残して消えた。
私たちは他の客の流れに乗って電車に乗り、最寄り駅でバイバイと手を振った。
翌日、八月二十一日。
お母さんに言われるまま、私はお皿洗いのお手伝いをしていたときだった。
トゥルルルル……トゥルルルル……
電話のベルを聞いて、私はなにかヒヤッとしたもので体の内側を触られたような気がした。
少しして、何も知らないお母さんが電話に出た。
私は電話から視線を逸らし、一生懸命にお皿洗いに集中した。
洗い終わって、タオルで手を拭きながら、私は目線を落とした。
水滴がたくさんついた台所のシンクは、私の影を映しても、私が今どんな表情をしているのかは映さなかった。
電話での話が終わったお母さんがドアを開けて入ってくると、私の目をまっすぐ見ながら口を開いた。
「夏菜。落ち着いて、よく聞いて……」
その電話は、やはりというか、ユウくんの死を告げるものだったのだ。
あのときの出来事は、やっぱり夢ではなくて、紛れもない現実だったんだ。
そしてなぜだか理由は分からないが、二、三日分だけ時間が戻って、同じことを繰り返した。
なんのために?
ずっと同じ日々を繰り返して、永遠にユウくんとサヨナラしないため?
まさか。
たったあれっぽっちを何度経験しても、たいして意味なんてないだろうに。
そう思ったとき、私は悟った。
私だけがユウくんの運命を知っている。
ユウくんを救うことができるのは私なんだ。
私が、ユウくんの運命を変えるんだ。
もうすぐ3月も終わりですね!
でも、この話は終わりません!(※目標:3月中に完結、だったorz)
時間セレブになりたい……