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Route1 約束

夏菜(なつな)ー、有一(ゆういち)くんから電話よーー」

「はあい、今行くー」


 よく晴れた夏の昼前、幼馴染のユウくんから電話がかかってきた。


 なんだろな?


 そう思って、私は二階の自分の部屋から一階へ降りた。

 このときの私は、なんの心配も疑いもせずに電話に出た。


「もしもし、ユウくん? なあに?」

「あっ、もしもし。ナツナちゃん、急で悪いんだけど……今日さ、お祭りがあるじゃん。一緒に行かない?」

「お祭り?! 行きたい!」

「ほんと? じゃあ五時に空木(うつぎ)大橋前駅で待ちあわせ! でいいかな?」

「うん、いいよ! お母さんにお小遣いもらわなきゃ!」

「あははっ、じゃああとでねー」

「うん、五時に空木大橋前ね!」


 がちゃりと電話の受話器を置いた。


 あっ、でも……。


 お祭りのお誘いがうれしくて、ユウくんと話しているときは全然考えなかったんだけど、今嫌なことに気づいてしまった。


「宿題……お母さん、行くの許してくれるかな?」


 夏休みも残りはあと少しになっている。それなのに私は、毎日テレビを見たり外に遊びに行ったりで、宿題の進度は残念ながら良いとは言えなかった。


「うぅ……」


 きっとお母さんに今日お祭りに行く約束をしたことを言ったら、また宿題はどこまでやったのか、あとどれくらいで終わらせるつもりのかを訊かれるに決まっている。

 だけど、やっぱり行きたいんだ。駄目って言われても、頑張って説得しよう。



「おかーさーん」


 居間のドアを開けながらお母さんを呼んだ。


「夏菜、なに?」

「あのね、ユウくんが、一緒にお祭りに行こうって……」

「今日の?」

「うん、行っていい?」


 宿題は……なんて言おう。お祭りに行くまではちゃんとやるし、明日も――


「いいわよ。行ってらっしゃい」

「……あれ? いいの? てっきり駄目って言われると思ってた」

「あら、なんでそう思ったの?」

「宿題……あんまりやってないから……」

「ふふ、夏菜が自分で分かっているなら大丈夫でしょ」

「そうかな……」

「宿題、夏休み中に終わらないの?」

「終わるよ!! 絶対終わらせる」

「その言葉を信じるわ。……いい思い出を作ってきなさい」



 それから私は自分の部屋で宿題に取りかかり、約束の時間に間に合うようお母さんに浴衣を着せてもらって、髪も一つに結い上げてもらった。


「お母さん、ありがと!」

「どういたしまして。可愛くなったよ、夏菜。」

「えへへ」

「それと、はい、これお小遣い。あとは自分のから出しなさいね」

「やったあ! ありがとう」

「じゃあ気をつけてね」

「うん、行ってきまーす!」


 私はすごく楽しみで、駅まで走っていった。



 午後五時七分。

 空木大橋前駅で、私は十分以上の間、気持ちが落ち着かなかった。


 おかしいなー。ユウくんが約束した時間に遅れるなんて、初めてだ。


 こんな浴衣姿で駅に一人なんて、ちょっと恥ずかしい。

 他にもお祭りに行くであろう人たちが駅のホームへと消えていく。

 私は足元に視線を落として、できるだけ人と目を合わせないようにしていた。


 どうしたんだろう……?


「ナツナちゃーん!」

「ユウくん!!」

「はっ、はあっ……ごめんごめん、待ったでしょ」


 息を切らせて登場したユウくんは、立ったまま膝に手をおいて笑った。


「うんと……少し」

「ホントにごめんねえ」

「いいよ、それより……大丈夫?」


 最初は、どうしたの? とか、何かあった? とか訊こうと思っていたんだけど。なんだか苦しそう……?


「うん、平気平気。お母さんとちょっとケンカしちゃって」

「そうだったんだ?」

「でも最後には行っていいって言ってくれたし。気付いたら約束した時間で焦っちゃったけど」

「だから走ってきたの?」

「ううん、さすがに早歩きで来たよ」

「……具合悪くなったら、すぐに言ってよね」

「大丈夫! 電車に乗っているとき休めるし!」


 ユウくんは笑って、ガッツポーズをして見せた。

 一抹の不安を感じながら、私たちはお祭り会場へ向かった。

章分けするか迷ってます…

どれくらいの量になるのか…分けるには少ないような……

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