第九話 盗賊ギルドにて
宿を出てから俺たちはスラムに向かった。
流石に王都ぐらいデカい街になると一部ではスラム化も進むらしいな。
で、当然盗賊ギルドなんかはそこに出来ると。
まぁどこにあろうとキャンセルでさくっと移動できるんだけどね。
「おう、なんだ兄ちゃん。みねぇ顔だな? 何者だ?」
で、ギルドの入口の前では厳つい顔したモヒカンがおっさんが立ってて絡んできた。
うざいなこういうの。
「冒険者だ、情報ききに来たんだけど」
「あぁ~ん? 冒険者だ? そんな奴が来るようなとこじゃねぇんだよ。さっさと帰……」
キャンセル。
「ぐぼらぁああぁああぁあぁあああ!」
「な、なんだ! なんだなんだぁ!」
めんどくさいからキャンセルでぶっ飛ばした。ドア壊れたけどまぁいっか。
「ご主人様は少し、対話というものを身につけたほうが宜しいかと……」
「え~だってこんな連中話しても無駄じゃん」
メリッサとそんな事を話しながら、ギルドのカウンターに向かう。
中の連中は俺のことを睨んでるけど手を出そうとはしない。
まぁ肩は震えてるしね。わかりやす。
ちなみに中は……う~んなんか暗いし狭いし汚いしでいいことないな。
流石盗賊ギルドってとこか。
「な、なんなんだてめぇら!」
「あぁごめんね。冒険者っていったらそこで気絶してる奴、帰れとかいうもんだからさ、ついぶっとばしちゃったけど怪しいもんじゃないから」
冒険者ギルドで言うとこの、受付にあたるおっさんへそう告げる。
てかむさいおっさんとか、受付は普通美人受付嬢だろ!
「ど、どう考えても怪しいだろ!」
「ご主人様、流石にこれはこの方の言うとおりかと思います」
なんでメリッサこの人の味方なの!
ちょっと大男を伸しただけなのに……
「うぅ、納得行かないけど、まぁとにかく俺たちはクッコロ盗賊団とかいう連中の情報を訊きたいだけなんだよね。知ってる?」
「は? く、クッコロ盗賊団だと?」
うん? なんか表情が真面目なものに変わったな?
「な、なんだそうか。そういや冒険者ギルドでも探してるんだったな。だけど珍しいな、冒険者が俺たちに頼るなんて。なんだギルドとかいって、その程度も掴めないほど脆弱なのかい?」
「うん、そうみたいだな。だから知ってるならさっさと教えて」
「へ? いや、そんなあっさり認めちゃうのかよ……」
まぁ、俺別にギルドの威信とかどうでもいいし。
「……まぁいい。教えてやってもいいが当然その分情報料はいただくぜ」
「ふ~んいくら?」
「まぁそうだな、へへっ、これだけの情報だ三〇〇〇〇ゴルドぐらいは頂かねぇとな……」
日本円でいったら三〇万かよ。足下みてんのか? まぁ払えないことはないけどな。
俺金持ちだし。
「ちょいまちぃな。あんたその情報どこからのや?」
そんな事を思ってると後ろから受付の男に声が掛かる。
なんだ関西弁?
不思議に思って首だけで振り返ると、そこには褐色肌で黒髪黒目の女の姿。
髪の長さはショートとセミロングの中間ぐらい。少しウェーブが掛かってる。
胸が大きく肉感的な身体は、随分と短いタイトなスカートと上はビキニのようなスタイルで隠してる感じ。
うん、エロいな。
「カ、カラーナか。いや、どこのっていうかその……」
うん? なんだ急に口篭りだしたな。
「なんや、やっぱりガセの情報掴まそうしとったんか。ほんましゃあないやっちゃな」
カラーナと呼ばれた褐色女の言葉で、受付の男は罰が悪そうに頭を擦る。
「あんたもあんたやで。ここは盗賊ギルドや、簡単に信用しとったらいいカモにされるだけやからな」
「うん、気をつけるよ」
俺の直ぐ横までやってきたカラーナが、注意するように言ってきたから俺も返答する。
「あ、あの教えて頂きありがとうございます」
「えぇってそんなん。ほな」
メリッサがお礼を言うと、カラーナは軽い感じに返し、そして踵を返し立ち去ろうとする。
けどな――
「ちょっと待てよ。去るのはいいけど俺のコマツクンは返してくんない?」
え!? とメリッサの驚く声。
ちなみに俺は常にコマツクンを、コートに隠れるような状態で、腰に差して持ち歩いている。
だけどカラーナが去る時に、かなり手慣れた所作で抜き取っていった。
「……何言うとんの? うち盗ってなんか――」
「じゃあその手に持ってるのは何?」
「!?」
俺が瞬時にカラーナの前まで回りこんだから、驚愕って眼をしてるな。
まぁキャンセルで余裕だけど。
「カラーナといったっけ? なんでこんな事をしたか説明もらえるかな? 事と返答によっては――殺るぞ?」
ありったけの殺気を込めて言い放つ。
すると、ひっ! と僅かに声を漏らして慄いた。
「わ、判ったって。そんな怖い顔せんといてな。ほれ」
言ってカラーナは俺にコマツクンを投げてよこす。
それを受け取り確認するけど、見た感じ特に傷んでる様子もないなコマツクン。
「な? これでえぇやろ?」
……まぁ確かに返してはもらえたけどな。
「でもこれで納得できるほど俺優しくもないんだよな。だから……お仕置きね」
「へ? お仕置きってなに――」
「キャンセル!」
「は!? な、なんやキャンセルって」
「う、うぉおおぉおおおぉおお!」
「すげぇええぇえええぇ!」
「は、鼻血が――」
ギルド内が一気に湧き上がったな。
いいぞ~なんて声や口笛を吹く音も聞こえる。
でも本人は気がついてないようで呆けてるようだけど。
「ご、ご主人様何をしたんですか! な、なんで裸に!」
「へ? はだ…………きゃ、きゃああぁあぁああぁああぁあぁああぁああ!」
おっとメリッサの声でやっと気がついたようで、体中真っ赤にさせて、両手で身体を隠し叫び声を上げてその場に蹲っちゃったな。
まぁばっちり形の良い巨乳が堪能できたけどね。
ほんま、ごっつぁんです。
まぁお仕置きに着ているものをキャンセルしただけなんだけど。
「も、もういやや~なんなのこれ~」
「だからお仕置きだって。それでどう? 降参する?」
「するする! するからもうかんにんしてぇや!」
「うん。だったらほら。両手をバンザイして参りましたって言わないと」
「は、はぁ!? あんた何いうてん! ここでそんな事したら……」
「おい観念しろカラーナ!」
「そうだ降参しろ!」
「立ち上がって両手をバンザイしろ~~~~!」
「周りもこう言ってるけど?」
「あ~~~~ん! この薄情も~~~~ん!」
皆、煩悩には忠実なのだよ。
「ご、ご主人様……そろそろ許してあげたら如何ですか?」
メリッサが気の毒に思ったのかそんな事を言ってくる。
え~でもなぁ~。
「……俺からも頼むよ。そろそろ勘弁してやってくれ」
ん? なんだ? 今度は別の男が近づいてきてカラーナに外套みたいのを掛けてやったな。
「おいシド! ふざけんな! じゃます、ひぃ! わ、判った冗談だって……」
ギャラリーの一人が文句をいってたが、シドと呼ばれた男が睨むとおとなしくなったな。
う~ん結構やるって事か?
「あ、ありがとうシド」
「別にいいさ。けどあんま無茶すんなよ」
「いや、てか、勝手に纏められても俺納得してないんだけどな」
するとシドに手を取られ立ち上がったカラーナが、申し訳なさそうん頬を掻き、シドも俺に身体を向けて口を開いた。
「悪いな。実はそのクッコロ盗賊団の件であんたを試させてもらったんだ」




