第二〇話 アンジュの気持ち
遅くなりましたが更新再開します
「そんなのお断りなのじゃーーーーーー!」
突然の婚姻の申し出に、俺もちょっと次の言葉に詰まっていたんだけど、するとイームネが前に出て否! を唱えた。
ちなみにアンジュは顔を真っ赤にさせたまま固まっている。
「ふむ、お主は確かイームネといったか。しかしヒット殿ならともかくなぜお主が拒否するのか?」
「そんなの決まっておるのじゃ! 妾の身も心も既にヒットの物だからなのじゃーーーー!」
イームネが吠えるようにいう。てか、おいおい――
「凄いなの! これが三角関係の縺れという奴なの! ドロドロなの!」
エリン! 一体どこでそんな言葉を!? パパショック!
「み、身も心も――」
そしてアンジュの肩がぷるぷると震えてる! え? なにこれどういう状況?
「……異議あり。イームネでたらめ……私こそがご主人様の物!」
セイラも参入してきた! ますます話がややこしく!
「……なるほど、そういうことか。それでそこのふたりも一緒なのかな?」
と、ここで更に国王からメリッサとカラーナにも質問が及ぶが――
「……え~と、私は奴隷ではありますのでご主人様のものですが、特に誰と何があっても文句はございません」
メリッサ意外とドライ!
「う、うちは成り行きで一緒やけど、べ、別にそういう関係やないで!」
カラーナはまぁそうなんだけど、何故かちょっと頬が赤いような――
「ふむ……なるほど」
クロース王はハの字ヒゲを弄りながら――ギロリと俺を睨んできた。
え? なにこれ? まさか大事な娘との結婚を前にこのようなまね! とか怒られたりするの? いやいや俺から頼んでることじゃないし!
「も、もうしわけありません陛下! こ、このものは少々やんちゃがすぎまして、も、勿論! 結婚となれば身辺をしっかり整理させ――」
て! 横からロワンが口を挟んだかと思えば何いっちゃってるの勝手に!
「が~~~~っはっはっはっはっは! いやいや! 素晴らしい! その若さでこれだけの美女を惚れさせるとは! ますます気に入った! な~に清潭な男であれば、妾の一人や二人いるほうが頼もしいというものよ!」
なんか寧ろ更に気に入られた!
「え~とそれはつまり、結婚するにしても皆との関係はこのままでいいという事?」
「うむ、まぁ便宜上はどうしても、うちのアンジュを正室として迎え入れて欲しいところではあるがな」
ふむ、なるほど……まぁ相手は王族の娘で姫様だしな。それも仕方ないとは思うが――とりあえずセイラとイームネに関してはなんていう……
「いい加減にしてください父上!」
と、ここでアンジュが声を荒らげた。
そして父親であるクロース王を睨めつける。
「さ、さっきから私を抜きで勝手に話を進めないで貰えるか!」
「そうですよ貴方」
更にここで王妃もアンジュを擁護するように口を挟む。
今まで黙ってきいていたようだけど、母親として一言いっておきたいとかかな?
やっぱ奴隷とかも含めてこれだけ女性関係が激しい男に娘はやれません! とかだろうか?
「いきなり結婚は気が早すぎます。ここは先ずは婚約からが打倒ではないかと――」
「おおなるほど。いや、確かにそう言われてみればそうかもしれないのう」
全然そんなことはなかった! 寧ろ付き合いに関しては全然オッケーって感じだ! いやまださっぱり付き合ってないけどね!
「そういう事をいっているのではない! 母上まで何を!」
アンジュが叫ぶ。そして母は、あらあら、という感じで、なんかこの人わりとおっとりしてるんだなって感じだな。
「でもアンジュ、貴方ヒットさんに好意を寄せてるじゃない?」
「ふぁ! 母上、な、何を……」
アンジュがわたわたしてる。いやだ可愛い。
「そうだぞ。アンジュが助けてもらったとはいえ、男の事をあそこまで熱心に話すなど初めてではないか? 以前の縁談の時は、しかたがないとはいえ、全く興味も持たず一蹴して帰ってきたぐらいだというのに、ヒット殿に関してはもう一日中はな――」
「あ~! あ~! あーーーー!」
アンジュが何故か耳を塞いで喚いた。そして両手で顔を覆った。
耳まで真っ赤だぞ! やばい! 抱きたい!
「アンジュ、自分の気持ちにもっと素直になってもいいのよ?」
「う、うぅ、でも、でもヒットの気持ちだってあるし……」
「いや、俺は全然かまわないよ。むしろアンジュからそう思われてるなら嬉しいぐらいだし」
「ふぁ! しょ、しょんな事、あ、あふぅう」
「これはどうやら決まりのようだな」
「そうねあなた」
「ちょっと待つのじゃ!」
ここで、びしっ! と指さしてイームネが割り込む。
隣にはセイラも一緒だ。
「妾は全く納得していないのじゃ! 第一唐突に現れて姫だかなんだかわからぬが、正室など図々しいにも程があるのじゃ!」
「……横取り許さない」
ふたりは納得してくれないか……う~ん俺は正室とか側室とか別に気にしてないんだけどな~
「ち、父上。確かにふたりの言うこともわかります。ヒットと長く一緒にいたのはこの……何か増えてる気もするが、とにかく順番でいけば私の方が後……それにやはりいきなり結婚とか婚約というのは……」
アンジェはふたりに気を遣ってくれているようだな。
これはイームネとセイラも意外だったようで、ちょっとバツが悪そうな顔をしている。
「うむ、なるほど……よし判った! ならば仮婚約としよう!」
「へ? 仮婚約?」
「うむそうだ。これであれば婚約ほど堅苦しくはないだろう。その間アンジュはヒット殿と一緒に過ごすといい。そして他の者とも一緒に過ごし、その中で一番よい方法を模索するといいだろう。うむ! それがいい!」
「流石あなた。それでしたら後腐れもなく事は進みそうですわね」
なんだか妙な方向に話がいってるような気がするな~。
「ヒットと他の皆もそれで如何であろうか?」
「う~ん、まぁ俺は別に構わないけどね」
「……望むところ!」
「なるほど誰が一番ヒット様に相応しいかを競うというわけであるな。それであればこのイームネ! 絶対に負けぬ!」
イームネとセイラが燃えている!
「……あ、私別にこのまま奴隷で構いませんのでどうぞお好きに」
メリッサってばクール!
「う、内も別に、か、関係あらへんし――」
カラーナがそっぽを向く用にしていう。なんかやっぱり頬が紅いな~
「これが俗にいう修羅場という事なの!」
それはちょっと違うんだな~エリン~。
「……ふぅ。父上も母上も強引で困る……しかし、ヒ、ヒット……ほんとうに良いのか?」
「あぁ勿論だ! アンジュなら大歓迎さ!」
俺は両手を広げて迎え入れるポーズで告げる。
ちょっとモジモジしながら、国王と王妃に促され、アンジェが俺に近づいてきてちらりと上目遣いをみせ、て、やべぇまじ抱きしめたい。
ちょっと他の目があるから抑えてるけど。
「ふ、不束者ですが宜しくお願いします――」
まぁそんなわけで、結局アンジュも俺と暫く一緒に行動を共にするという事で話が決まったわけだけどね――




