第二話 冒険者ギルド
色々とすっきりした気持ちで朝を迎えた俺だが、とりあえずメリッサとメイド服のセイラを連れ食堂に向かう。
朝飯を食べるけど二人分の残飯は流石に厳しいか。
と思ってたらセイラがとことこと歩いて行って台所で料理をしだした。
なにしてるかと思ったら、ザックに命じられてよくやってたらしい。
「あのザックって冒険者、宿泊料金を浮かすために彼女にここを手伝わせてたりしたんです」
飯を運ぶ係みたいな少女がそんな事を教えてくれた。セコ!
でもセイラはそれで自分の朝食は確保できるようだ。
これぞ自給自足か。セイラの作ってくれた朝食は旨かった。
メリッサも舌鼓を打つぐらいに。
「……料理は……メイドの嗜み」
セイラは基本おとなしい。ベッドの上ではおしゃべりなのにな。
まぁしゃべるってか、鳴いてるとか吠えてるとかそんな感じだけど。
「じゃあ冒険者ギルドにいくとしよう」
「わかりましたご主人様」
「……承知」
冒険者ギルドは、街の西部地区にあるレンガ造りの建物だ。
二階建てで大きさはまぁ日本のハロワぐらいだ。
木製のドアを開けて中に入る。
「兄貴! 待ってましたぜ!」
――パタン。
ドアを閉めた。
あれ? おかしいな? きのうやっつけた、世紀末の覇者みたいな顔してるのに、馬鹿みたいに弱い男が目の前に立っていた気がする。
「兄貴! どうしたんですかい!? ギルドに来たんですよね! さぁこっちへ!」
ドアが開いてごつい手で引っ張ってくる。なにこれ? やっぱ昨日の名前忘れた奴だけど、再戦とかそういう流れ?
「兄貴に惚れたっす!」
「ごめん俺ノーマルなんで」
いきなり筋骨隆々の角顔男に告られても困る。
あ"ーーーー! な趣味は俺にはない。
「兄貴の強さに惚れたっす! 弟子にしてくだせい!」
……て、なんだそういう意味か。
「ごめん弟子とかノーサンキュ」
「そう言わずにどうか!」
土下座までしてきたよ。
「……カスが」
セイラってば中々毒舌。
「どうされますかご主人様?」
「兄貴何でもしますからどうか!」
メリッサに問われ名も知らぬ男に頼みこまれた。
てか冒険者として活動したいのにやっぱこいつ邪魔だな。
「なんでもいう事きくのか?」
「はい!」
「じゃあ伝説の虹色竜の七色の卵もってきたらいいよ」
「わかりました! 試練て奴ですね! うぉおおおおぉおおぉおおお!」
名も思い出せない男は、冒険者ギルドを飛び出して七色の卵を探しにいった。
ちなみにゲームでは、デマの噂を信じて彷徨う冒険者のとんちんかんな行動を楽しむイベントだった。
つまりそんなものは存在しない。
さらば名も思い出せない男。
「あいつCランクのザックを――」
「一体何者だ――」
何かひそひそ話が聞こえる。ザックって誰だ?
まぁいいか。受付カウンターに向かったら猫耳の可愛らしい女の子だった。奴隷にしたい。
「冒険者ギルドへようこそ。本日はどのようなご用件でしたでしょうか?」
語尾ににゃとかつけないんだな。ちょっと残念。
「俺ヒットって言うんだけど、登録されてる?」
「え? いやそのようなご質問される方はあまりいらっしゃいませんが……ギルドカードはお持ちですか?」
ギルドカードというのがあるのか。ゲームには無かったな。
で、アイテムボックスにもない。これは一から始める流れか、まぁそれもいいか。
「ないから登録します」
「はぁ……」
気のない返事だな。訝しむようにも見てきてるし。失礼な。
「ではこちらの紙に――」
キャンセル!
説明とか面倒だからキャンセルした。
ちなみに冒険者ギルドは、簡単にいうと人や国から請けた依頼を冒険者に斡旋するところだ。
冒険者にはランクがあって最高がS、後はA~FでFが一番下のランクで登録仕立てでは必ずF。
依頼をどれだけこなしたかで査定されランクは上がる。
失敗したら下がる事もある。Dランクまでは半年間一度も依頼を受けなければ冒険者としての登録は抹消される。
また犯罪行為に及んだりしても抹消及び賞金首になったりする。
一度登録が抹消されると三年間再登録できない。
ちなみにCランク以上になると犯罪行為でもしない限り抹消はされない。
まぁこんな感じだな。ちなみに依頼にはランク制限がある場合もあってその場合はそれに従う必要があるみたいだ。
「こちらがギルドカードです」
「ありがと」
俺はギルドカードを受け取った。銀色の片手で収まるサイズのものだ。
身分証明書にもなるらしい。便利だね。
そういえばギルドは核の買い取りも行っている。魔物を倒すと核を落としてそれが特殊な技術で素材に生まれ変わるかららしい。
とりあえず俺は登録を済ませ、ついでに奴隷二人も登録しておいた。
ここで初めてふたりのレベルを知ったけど、メリッサがレベル5でセイラがレベル7だった。
弱いな。まぁ強さ求めてないけど。でもFランクとしては高い方らしい。
で、ギルドの掲示板に貼られた依頼書をみてみるけど、やっぱFランクだと基本いいのがない。
でもそんな中気になるのを見つけた。
依頼内容:ギルド裏のダンジョン探索
依頼条件:特になし
報酬 :ダンジョンで手に入った物は自由にして良い。最下層のボス級魔物を倒した場合、初回のみ賞金として一〇〇〇〇ゴルドが出ます。
ゲームにもあったダンジョンだな。なんかこっちのほうが面白そうだ。賞金は安いけど。
「これっていつでも受けれるの?」
猫耳受付嬢に聞く。
「はい。このダンジョンは初心者向けのダンジョンですね。このギルドの裏庭に存在する地下五階まであるダンジョンです」
裏庭にあるのかよ。
「ただ……登録したてですと無理をされないほうが……舐めてかかると地下一階でも死にますよ?」
「あぁ大丈夫大丈夫。じゃあちょっと行ってくるね」
「はぁ……」
なんかこの受付嬢俺を舐めてるな。別のを舐めろおらぁ!
まぁいいや、とりあえず裏庭にいくと厳ついおっさんが、
「なんだ餓鬼じゃねぇか。そんなんで大丈夫か?」
とか舐めたこと言ってきた。
「ここって大体ボス級倒すのに、みんなどれ位時間掛かってるの?」
「はぁ? お前はそんな心配より地下一階で生き延びれるかを心配したほうがいいぞ。まぁ記録ではパーティー組んだ冒険者で最速五時間ってとこか」
「記録破ったら土下座してもらっていい?」
「はぁ? がはは! ずいぶんとデケェ口を叩くな! いいぜ、てめぇなんかが記録破ったら土下座でもなんでもしてやるよ!」
その言葉忘れるなよっと。
俺は奴隷ふたりと地下に向かう。
「でもご主人様本当に大丈夫でしょうか?」
「……舐める……危険」
「全然大丈夫。さくっといくよ」
て、わけでキャンセル!
「え? あれ? ここは?」
「……扉の……前」
探索する過程をキャンセルしたから、ここはもう地下五階のボス部屋手前なんだなこれが。ここまで一秒も掛かってないな。
「あのご主人様……何かレベルが上ってるのですが……」
「……私も――」
「あぁ、簡単にいうとスキルでここに来るまでの過程をすっ飛ばしたから、途中戦う予定だった敵は倒された事になってるんだよ。だからレベルも上がる」
ちなみに素材もしっかり手に入ってた。
「……ご主人様凄すぎます」
「……人外」
誰が人外だこら。
「まぁいいやボス倒そうぜ」
「わ、判りました! 頑張ります!」
「……倒す」
ふたりはそこまで気合いれなくていいけどね。
で、部屋にはいると。
「ぐうぅぅうぉおおお!」
出たなゴブリンボス。周りには雑魚ゴブリンも二〇匹程引き連れてる。
ゴブリンは緑色の身体した低身長でハゲの魔物。
ボスはそのゴブリンがデカくなった感じだ。
だけどまぁ、俺は居合を一万回行うイメージでそれをキャンセルする。
「え!? 敵が!」
「……ばらばら」
うん、そうだね。相手は攻撃する暇もなく殲滅。
ボス部屋には宝箱があるけど中身は……ちょっと凄いロングソードって感じだな。
「大したもんじゃないな……」
「え!? いえ! それ結構レアものですよ!」
そういえば鑑定もってたなこの子。
「欲しいの?」
「え? いえ多少剣術の心得はありますが流石に恐れ多い……」
なんだそうなのか。
「だったらこれよりこっち上げるよ」
俺はアイテムボックスから取り出したそれを手渡す。
「て、これ! 聖剣エロスカリバーじゃないですか! 超レア物ですよ! これ! どうしてご主人様が!?」
「うん、なんか拾った」
「拾った~~~~~~!?」
なんか驚きのあまり呆けてしまってるけどね。
でも、メリッサだけってわけにもいかないよね。ほら、俺優しいから。
「セイラは得意武器ってある?」
「……何でも」
何でもか、そういうのが逆に困るけど……あぁでもだったら。
「じゃあこの槍上げる」
「……大切に……する」
「て! それも神槍クンニエロスじゃないですか! なんでそんなものまで!?」
メリッサうるさい。
まぁいいや。とりあえずクリアーしたし、さっさと戻ってあの俺を舐めてた奴を土下座させたる!
さくっとクリアーです




