二
私は一つの天体を眺めていた。それは闇に浮かぶ、青。恒星の光を反射して淡く輝く、水の惑星だ。白く美しい模様を描く雲は刻一刻と移り変わり、二度と同じ姿にはならない。一期一会なのだ。
そう思うせいだろうか、これほどの期間を眺め続けているが、ちっとも飽きない。きっと私は今日も明日も明後日も、ずっと見詰め続けることだろう。
だが美しいのはこれだけではないのだ。
慣れた動作で映像を拡大させ、地球の表面へと近づいていく。それはまるで、この青い惑星に吸い込まれるかのような錯覚を、私に与えてくれた。
表面に映るのは、緩やかな起伏。他の天体のように、巨大なクレーターは見えない。近付くにつれて、青と白の他にも、緑や茶色などの複雑な色味が登場する。
どこまでも、どこまでも近づいていけば、幾つもの直方体、もしくはそれに似た形をした立体が見えた。
更に、地表を舐めるかの如く、接近する。四角張った立体の合間に見えて来たのは、形のバリエーションを増やした新たな構造物。雑多なその中に、光輝く物体がいくつもいくつも存在しているのが目に入った。
地球そのものと同じく、宇宙空間から降り注ぐ光を反射して、それらもまた輝く。跳ね返される光の色は、青ではなくどこまでも透明だ。密集して存在するそれらが弾いた光は、互いに干渉し合い、複雑な模様を描いている。
実に美しい光景だ、と私は思う。それは彼らが到達した一つの極限なのだ。
いつまでもいつまでも私は美しい彼らを眺めていたいと願う。けれども、私は自由な身ではないのだ。先ほどから私を呼びつける声が聞こえていた。
一つ溜め息を吐いて、私は仕事に向かう。それでも諦め切れずに振り返った一瞬、私が見たのは、煌めく彼らの優雅な光と、そこに影を落とす柔らかな色をした花弁たちの姿であった。




