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 あー、もう本っ当にツイてないわ。先住民に追いかけられるし、罠にハマるしつり橋はちぎれるし……デザートは道に迷うときたもんだわ。はぁ……なんでこうなるのかしら。

 ……雨まで降ってきた。もー!最悪だわ。あんなところで地図なんか買うんじゃなかっ

たわ。って、愚痴ってもしょうがないわよね。とにかく。どこかで雨宿りできるところを

探さないと。

 なんかどこかに超がつくくらいの豪邸とかないかしら。ははっ、あまりにも悲惨な目に

あってるせいか、頭までおかしくなってきたわ。そんな都合よく家なんて……。



 うそ……あった。


 目の前には超が何個つくかわからない位の大きな屋敷があった。何度も自分の頬を叩い

ても抓ってもおんなじだった。目の前には確かに豪邸があった。


 きゅしゅんっ


 こうしてる場合じゃないわ。とにかく中へ入らなきゃ。フェンスを適当に開けて庭を駆

け抜け、すぐに玄関へ。


 コンコン コンコン  ゴンゴンゴン!


 これだけノックをしても出ない……ということは、誰もいない?ラッキー。もしかした

らすんごいお宝とかあったりして。……ノックしたし、いいわよね?

 お邪魔しまーっす。誰かいませんか?

 小声で問いかけるも反応なし。よし、誰もいないわ。よかった。衣服についた水滴を払

い、屋敷内を見渡した。まぁ~、豪勢な絵がどんとホールの真ん中に飾られていて、その

左右からは西と東に分かれるための階段があった。天井にはこれまたおっきなシャンデリ

アが。贅沢ね。誰もいないってことはさっき確認したから鞄につめるだけ詰めて雨が止んでいたらとんずらしますか。さてと……なにかあるかしら。

 視線の先に手頃な大きさの壺があった。しかも純金。これはおいしいわね。そこへ足を

動かした。

「ようこそいらっしゃいました。お客様」

 きゃあああ!な、な、なになになに??

 お宝に目を奪われていて、全く気配を感じなかった。私のすぐ横には長身の悪魔が立っ

ていた。

「これはこれは。驚かせてしまって申し訳ございません」

 あ……あ……悪魔?なんでこんなところにいるのよ!ぶ、武器は……。

「落ち着いてください。私はこの家の執事をしているラデルと申します」

 深々とお辞儀をするラデルとかいう悪魔。わ……私はそんな状態じゃないわよ!

「私はもとより戦うことは大の苦手でして。なので、ご安心ください」

 そ、そんな顔でよく言えたわね。こっちはぶ、武器持ってるのよ。

「まずはお近づきの印に紅茶を入れました。いかがですか」

 そんな……毒が入ってるかもしれないものを……。

「お客様。本日はダージリンを淹れました。それにあわせて作ったクッキーも召し上がり

ください。御口に合えばいいのですが」

悪魔はティーポットから琥珀色の液体をカップに注いだ。本当に淹れたてなのだろう。

湯気が出ていて美味しそうに見えた。

「さぁ。冷めないうちに」

 ソーサーの脇に添えたレモンとミルク。……本格的じゃないのよ。私は大きなソファに

腰かけるとラデルがすぐに紅茶を持ってきてくれた。一口含むと、冷えた体が一気に温ま

るような感じがした。ストレートでもレモンでもミルクでも、どの飲み方にあうようブレ

ンドもしているのだろうか。考えているとラデルは大き目のタオルを持ってきてくれた。

 がしがしと適当に体を拭いてから更に一口。上品な茶葉の味が口一杯に広がった。

 ……おいしい。

「それは良かった。おかわりはたっぷり用意しておりますので、ごゆっくり」

 紅茶の温かさが心と体に染みわたる。さっきまでのできごとが、たった一杯の紅茶に救

われる……そう感じさせてくれる一杯だった。

 ら、ラデル?だっけ?さ、さっきは失礼な事言って、その……ごめんなさい。

「なんのことでしょうか。さぁ、冷めないうちにお召し上がりください」

 私が言った一言なんて気にした様子もない……それとも耳に入っていないのか……。

「お客様。一息つきましたら、お部屋へご案内いたします。急な雨とはいえ、これは当分

止みそうにありません。宜しければ本日はこちらで体を休まれてはいかがでしょうか」

 一瞬、自分の耳を疑った。ここで?一晩?泊まる?そりゃ、雨宿りさせてもらってると

はいえ、急に泊まることになるなんて……。


 ピシャーン


 雷まで鳴り出した……。あー、こりゃ完全にお泊りですね。わかりました。

「では、こちらです。お荷物はこちらで宜しいですか」

 パンパンに荷物が入ったリュックをいとも簡単に持ち上げてしまう。すごいわ……。

「お客様。こちらです」

 ちょ……今行くわよ。ったく。調子狂うわ。けど、今はお言葉に甘えるしかないわね。

私はラデルの後をかけあしで追った。

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