私の小指は愛してる人
皆さんは、ジンクスは持っていますか?
例えば、試合前、左足からコートに入ったら勝つ。赤い靴を履いたら必ず雨が降る。など、いろいろなジンクスがあると思います。
そんなジンクスのお話。
ガン!
「!!!。痛い、痛~い」
今、タンスに右足の小指をぶつけた。痛い。ものすごく痛い。
右足の小指を両手で押さえて動けない。じっと体を丸めて痛みが引くのを待っている。
右足小指がジンジンする。すごくジンジンする。
骨折したんじゃないかな~、そーと手を放してみる。
見てもわからない。まだ腫れてきてない。でも痛い。
また、両手で右足の小指を押さえた。
時間過ぎ、痛みが少し収まってきた。
私は右足の小指から手を離し、ゆっくり立ち上がる。
痛いが歩ける。
「そうだ、浩司、大丈夫かな。一回電話してみよう」
私はスマホを手に取り、婚約者の浩司に電話した。
「浩司、大丈夫?怪我してない」
「大丈夫だよ。今、外回りから車で会社に戻ってるところ。恵子どうかした?」
「いや、ん~。今ね、右足の小指をタンスの角にぶつけたの。変な話なんだけど、私の小指にはジンクスがあって、右足の小指は愛してる人の健康状態を表しているの」
「何言ってるの?」
「ん~信じられない、変な話なんだけど。私の右足の小指か乾燥したら、私の愛している人は皮膚がかぶれてしまったり。爪を切り過ぎて出血したら、私の愛してる人は、怪我して出血したりするのよ。だから浩司大丈夫かな~って」
「変な事言うね、そんなはずないだろ。大丈夫、俺は何ともないよ」
「ん~そうだよね。でも、くれぐれも気を付けて帰ってきてね」
「ああ、気を付けるよ。じゃあね」
その後、会社から連絡があった。浩司が車で事故をおこしたらしい。幸い単独事故だったらしい。一応浩司は病院に運ばれ、むち打ち(首の捻挫)と診断された。
月日が流れ、私達が結婚して2年目の昼下がり、喫茶店に行こうと浩司から誘われた。
喫茶店に着くと、浩司は私から離れ、すでに座っていた若い女性の隣に座った。
私も、浩司に続き同じテーブルに着く。
「どうゆう事?」
「恵子すまない。俺と別れてくれ」
「何突然、浩司。冗談?」
「冗談じゃない。付き合ってた彼女に子供が出来たんだ。俺は彼女と暮らしたい」
「はあ~。不倫していたって事、いつから、どこの誰」
「正式に付き合い始めたのは、1年前ぐらい前から、彼女は職場の後輩で俺が教育係を任されていたんだ、それで悩みとか聞いてるうちに、そんな関係に・・・・」
「浩司が悪いんじゃないんです。私がいけないんです。私が好きになったのがいけないんです。私がおっちょこちょいなばかりに、ずっと迷惑かけちゃって、浩司は私を励ましてくれてただけなんです」
「浩司・・・呼び捨て」
「なあ、頼む別れてくれ、子供もいるんだ。俺はもうお前を愛していない。別れてくれ」
「・・・・わかったわ。でも弁護士に頼むから、慰謝料とか、家の抵当権もあるし」
「慰謝料?これから子供が生まれて金が掛かる夫婦から金取るのか。しかもあの家は、俺が払ってるんだ。俺の物だ。俺たちが住む、恵子は出て行ってくれ」
「・・・・。」
私は突然の事に動揺し、悲しいやら、悔しいやらで、うまく言い返すことが出来なかった。
結局、私は2人で買った家を追い出され、会社の近くの安いアパートに引っ越した。
昼間は気丈にふるまっているが、夜になると、寂しくて、悲しくて、悔しくて、情けなくて、何がいけなかったんだろう、ああしとけばよかったのかな、こんな風に言い返せばよかったなど、後悔と怒りがこみあげてくる。
そんなある日、街中で腕を組んで歩く、2人を見かけた。
私が幸せそうな2人を見て、一番に感じた事は”私はまだ浩司を愛してるんだ”という事
私は、2人から目をそらし、足早に街中を走って逃げた。
私は安いアパートの一室で泣きじゃくり気付いた。
まだ私が浩司を愛しているならできることがある。
私は、台所から包丁を取り出し、浴室へ。
自分の右足小指に、包丁をそえ、体重をかけ一気に振り下ろした。
浴室に血しぶきが飛び散る。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
近くのタオルを掴み、小指を押さえる。
タオルにはみるみる血が広がり、怖くなった私は、救急車を呼んだ。
月日が経ち、今思えばあの時の私はどうかしていた。
あれから、私は救急車で近くの病院に運ばれた。右足小指は完全に切断できておらず、皮一枚ぶら下がった状態で搬送され、そのまま緊急手術。結果、右足小指はつながった。うまくは動かせないが、右足小指なのであまり生活に支障はない。
あれから浩司がどうなったか。
彼は仕事先の外回りで、工場に視察に上司と訪問した時、鉄パイプを切断する大きな切断機に、つまずきネクタイが回転車輪に巻き込まれ、首ごと切断機にバッサリ。皮一枚繋がっていたそうだが、気管も食道も、脊椎も切断。頸動脈も切断されたので天井に届くほどの血しぶきが噴き上がり、辺り一面血の海。
浩司は大量出血で亡くなった。これは噂だが、浩司は噴き上がる自分の血しぶきを、目をぎょろぎょろしながら眺めていたそうだ。
まだ私の右足小指はありますよ。みなさん、ジンクスには、お気を付けください。
今回、ポチさんの投稿を参考に、背景や心情を出来るだけ少なく書き、話す言葉だけで表現する事を試みてきました。読みやすくなっていると思います。




