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聖女と神官  作者: 綾瀬 律


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6.新しい生活

 目が覚める。

 ファルが声を掛けてくる。

「セレス、起きたか?」

「…」

 ん?眠い…ファルはため息を吐いて私の部屋の扉を開けた。

「お寝坊さん、朝ごはん出来てるぞ」



 *****



 教会で初めて同じ部屋で寝た。新鮮な、と言えば聞こえはいいが息づかいが聞こえて…全く眠れなかった。

 どうやらそれはファルスも同じようで

「眠れましたか?」

 と疲れたように聞かれたが、無言で返した。


 ベッドに寝転んだまま上を向いていると、ファルスが起き上がって私の顔を覗き込むと驚いていた。

「お顔の色が悪いですね。お体の具合はいかがですか、聖女様」

「っ!私はもう聖女では無い」


 聖女になった時に、名前を捨てた。だからファルスは私の名前を知らないだろう。


「なんとお呼びすれば?」

「セレスティアだ」

 何故か頷いている。


「では、セレスティア様。おはようございます。お体の調子はいかがですか?」

 私はファルスを軽く睨むと

「その前に、何故お前はここにいる!?」


 不思議そうに首を傾げた。

「ファレスは高位の神官であろう。そのまま神殿に残れば神官長にもなれただろうに。何故ここにいる?」

「私はセレスティア様から離れるつもりはありませんよ?実際、ご実家にも戻られないのでしょう」


 うっと詰まる。ぷいっと横を向くと

「好きにしろ」

 と言った。それでも心がほっこりした。

「はい、勝手におそばにいます」

 言い切ったファルスの顔は晴々としていて、私も嬉しかった。




 その日の夜、ベッドに腰掛けて私は話をした。

「私は、1人で生きるつもりだった…」

 ファルスは静かに聞いている。

「ファルスも何も聞いてこなかったからな」


 ファルスは少し俯いてから顔を上げると

「ずっと準備をしていました。貴方と2人で生きるために。言わなかったのは断られるのが怖かったのです」

「えっ…?」

 と固まった。まさか、私と共に生きると?


「私は復帰する前もしてからも、分かりやすくお慕いしておりましたよ」

「そ、それは…まぁ。でも聖女の肩書きがあってなのかと」

 ファルスは悲しげな顔で

「私は聖女の肩書きを愛したのではありません」

 愛してる…えっ?私の頬が赤く染まる。


 何故かファルスは手を目に当てて上を見た。焦っているのか?なし崩し的に愛してると言ったからな。

「ぷっ…ならば私と同じだな」

 さり気なく告げたその言葉に、今度はファルスが固まった。


「わ、私の、その…愛は敬愛でもありますが、それよりももっと重い方の、でして…」

 しどろもどろなファルスが愛おしい。いつもはシュッとしているのにな。


「くっ、あははっ。それも私と同じだ。失うぐらいなら遠ざけようと思うくらいに、重い愛だ」

 私は真っ直ぐにファルスを見つめる。その瞳は揺らいでいた。


 ファルスは立ち上がって私の目の前に立つ。間近にファルスを感じて私の頬が熱をもつ。

 ファルスが私の頬に手を添えると私はその手の上に手を重ねる。私はそっと目を閉じて…私たちは唇を合わせた。

 初めての口付けは柔らかくて暖かくて、少し震えていた。


「ファルス…」

 震える腕をファルスの腰に回す。その髪の毛を撫でて頭を抱き寄せる。

「案外逞しいのだな」

「セレスティア様が細過ぎるのです」


 またその頬に手を当てて目線が合う。また唇が触れる。柔らかくて温かくて、爽やかな匂いがした。なんて心地よいのだろう。夢見心地でファルスを見上げると、口元に手を当ててぶわっと顔を赤くした。


「そ、そんな可愛い顔で見ないでください。セレスティア様」

「ファルス、言葉遣い…」

 目を開くとはくっと口を動かしてから目を潤ませて

「セ、セレスティア様、セレスティア様、セレスティア様…セレスティア様」

 確かめるように何度も私の名を呼ぶファルスに応える。

「あぁ…ここにいる」


 愛おしいという気持ちを隠さずに私の頬を撫でると

「私のことはファルと呼んで欲しい」

 壊れ物に触るように頬を撫でるとおでこにキスをされる。

「ファル…」

「あぁ…私のセレスティア様が可愛すぎる…」

 何やらぶつぶつ言って私を抱きしめた。


「セレスティア様、愛してる。これからのセレスティア様の時間を私に…私と過ごす時間にして欲しい」

 えっ?それは…

「セレスティア様、愛してる」

「私も…」

 私は真っ赤になって必死に答えた。



 その時はまだ、幸せな時間だけが待っていると、私は信じて疑わなかった。



 ファルスのベッドはその夜、使われることはなかった。


「セレスティア様、一緒に寝たい。いや、その…寝るのが目的というか、いや、あぁ…私は」

 それは、期待してもいいのだろうか?私が欲しいと、そう思ってもいいのだろうか?


「セレスティア様、あなたと一つになりたい…」

 耳元で囁かれた。心臓がドクッと音を立てる。頬が熱い。

「そ、それを…ファルスが望むなら」


 自分の愛がそれを求めているのかは分からない。清くあれ。聖女になってからずっと言われていたし、そうあらねばならなかった。


 だからそういう行為には困惑がある。ファルスも神官だったのに、私を求めるのか?

「セレスティア様、自然なことだ。私はセレスティア様の全てが知りたい」

 あぁそうか。ストンと胸に落ちた。好きだから愛しているから全てを知りたい。それは当然の欲求なのだ。


「や、優しくして…」

 不安と羞恥と、さまざまな気持ちで自信なく声が小さくなる。

「努力する。なんせ6年も想い続けたのでね。自分を抑えられる自信はないんだ」

「ひゃっ」

 耳にキスをされた。体の中から不思議な感覚がして、戸惑う。でも嫌ではない。


 同じベッドに入る。

 ファルスは私と向かい合うように、私の上に体を重ねる。重くない…?

 腕で体を支えて体重がかからないようにしてくれてるのか。


 おでこを合わせて

「セレスティア様、私を見て…」

 目が合う。もう自分の気持ちを隠さなくていい、そう呟くとまたキスをした。何度も、何度も。

 次第に深く濃くなるそれに、私はうまく息が出来なくて涙目になる。


「ファルス、待って…」

 私が押しやろうとした手を優しく握ると

「もう充分待った…」

 痺れるような優しくて、でも情熱的なキスは苦しくて嬉しい。


 はぁはぁと荒い息遣いをしていると

「ゆっくり呼吸して。セレスティア様。まだまだ、夜は長い…」

 ファルスの手が夜着の紐を解く。素肌が空気に晒されてピクリとする。

 怖い…

 ふと、手足を押さえられたあの時の記憶が蘇る。ぎゅっと目を瞑る私に


「セレスティア様、大丈夫。私はセレスティア様を傷付けない。私を見て…」

 そっと目を開けるとファルスの紫の目が私を見つめた。

「ファルス…」

 ふわりと笑う。大丈夫、大丈夫。あやすように私に声をかけながら、その手は首から胸、そして腹から腰へと撫でる。


「ん…」

 思わず声が出た。恥ずかしい。私の体は筋肉が無くて魅力もない。それがとても恥ずかしい。

 服ごしでも分かるファルスのしっかりと筋肉が付いた体はさぞかし逞しいのだろう。


 恥ずかしさに身悶えして無意識に体を隠そうとする。

「セレスティア様、全部見せて。その細い肩も薄い腹も華奢な腰も細くてきれいな足も…全部」

「わ、私はファルスみたいにかっこよくない。貧弱な体で…ごめん」

 ファルスは目を開くと

「きれいだよ、セレスティア様。とても、とても。セレスティア様を構成する全てが愛おしい」


 優しく撫でられて

「あっ…」

 声が出てしまった。そのことにさらに羞恥で体を縮める。

 ファルスはお構いなくその手と唇で私に触れる。腰を撫でながら腹にキスをして。


 私の下半身はかつてないくらい、元気だ。見ないで!慌てて隠そうとした。

「ダメ。セレスティア様のそれを見せて」

 容赦なく手を掴まれてファルスの前に。

「セレスティア様も…感じてくれてるんだな。嬉しい」

 そこにキスをした。


「ダメ、だ。そんなこと…」

 ファルスは私の言葉が聞こえていないように、優しく手で包み込むとキスをした。

 うっ、どうしよう。ファルスに触れられた所が熱い。


 そのままファルスは私の太ももにキスをして開いた足の間に体を捩じ込むと、体を起こして自身の夜着をはだけさせた。

 しっかりと筋肉のついた肩と腹。引き締まった腰。その逞しい体に目が吸い寄せられる。


 ふわりと微笑むと私にキスをして

「きれいだ…セレスティア様。私の天使」

 足を撫でながら柔らかい声で言う。ファルスはこんなに甘やかす人だったか?


「んっ…」

 突然太ももにキスをされて変な声が出てしまった。

「セレスティア様、一つになりたい」

 導かれた手はファルスのソレに触れた。逞しく凛々しいソレは熱を持ってドクンと脈打つ。


「ファルスがしたいなら…」

 一つになること、分かるようで分からないが…ファルスに任せよう。

「一緒に感じて…」


 それからのことはなんて言うか、凄かった。

 ファルスの指が私を導く。時間をかけて優しく優しく。

「セレスティア様…」

 余裕のない声で私を呼ぶ。


 一つになるときは苦しくて痛かったが、それでも受け入れられたことが嬉しくて。優しくて激しくて情熱的な2人の時間はゆっくりと過ぎていった。


 甘い吐息が、柔らかな肌が、私を呼ぶ声が…ファルスの全てが愛おしくて。その温もりを求めて肌を重ね、そしてくっついて眠った。


 目が覚めると隣には温もりがあった。手に入れたいと願い、願わないならばらせめて彼の為に手を離し、それでも手に戻った大切な温もり。


 私の薄くなった金色の長い髪はファルスと同じ色。目を瞑ってファルスの熱を感じていると、

 そっと瞼に柔らかいものが触れた。頬が染まる。

「ず、狡い…」

「何も聞こえませんが?」

 すると目を開けて私を見る。そんな顔すら可愛らしい。軽くキスをすると真っ赤になった。


「ファルス、言葉遣いが戻ってる。それから私のことはセレスと…家族だけの呼び方だ」

「セレス、では私のことはファルスと」

 微笑みあってキスをした。



 気持ちを抑えないファルはこんなにも甘いのだな。文句を言いつつも朝から愛し合って、私たちは教会を辞した。




 馬に乗って向かったのは森だ。王都から北に行った所にある森。入り口までは王都から馬で30分。セレスティア様ティア様を載せて2人で進む。

 森に入ってしばらくは馬に乗り、途中で降りた歩いた。

 また30分ほど歩くと家が見えて来た。


「家…なのか?」

「まさか野営をするとでも?大切なセレスティア様を床で寝かせるなんてあり得ない」

 私は馬を馬房に入れると、家の鍵を開けた。




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