表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/119

第110話 迷宮の中心

迷路を彷徨うこと、どれだけの時間が経っただろうか。


私は時間の感覚を完全に失っていた。


通路は果てしなく続き、分岐点は数え切れないほどあった。私たちは何度も同じ場所に戻り、何度も違う道を選んだ。


だが——出口は見つからなかった。


「……もう限界だ」


ケインが壁に背中を預けながら呟いた。


「休憩しよう。このままじゃ倒れる」


エレナが同意した。


リオンは頷き、私たちはその場で休息をとることにした。


床に座り込む。


足が重い。


疲労が、全身に溜まっていた。


「……このまま、ずっと迷い続けるのか?」


ゼノが不安そうに呟いた。


「いいえ。必ず出口はあるわ。私たちが見落としているだけ」


ルナが冷静に答えた。


私は天井を見上げた。


低い天井。


灰色の石。


そして——微かな光。


……光?


私は目を凝らした。


天井から、微かに光が漏れている。


それは松明の光ではない。もっと——青白い光だった。


「……あれを見ろ」


私は天井を指差した。


「何?」


エレナが顔を上げた。


「天井から、光が漏れている」


私の言葉を聞き、皆が天井を見た。


確かに——微かな光が、天井の隙間から漏れていた。


「……上に、何かあるのか?」


リオンが呟いた。


「もしかしたら、出口かもしれないわ」


ルナが言った。


私たちは立ち上がった。


疲労は残っているが——希望が見えた。


「……行こう」


リオンが言い、私たちは光を追って歩き始めた。


天井の光を目印に、通路を進む。


光は次第に強くなっていった。


そして——通路が開けた。


そこは——巨大な円形の空間だった。


直径は三十メートルほど。天井は高く、遥か上方に青白い光が満ちていた。床は平らで、中央には——巨大な円盤のようなものが埋め込まれていた。


円盤には、複雑な文様が刻まれている。


そして——円盤の周囲には、六つの石柱が立っていた。


「……何だ、ここは」


ゼノが呟いた。


「迷宮の中心……かしら」


エレナが周囲を見回しながら言った。


私たちは慎重に空間へと足を踏み入れた。


足音が反響する。


中央の円盤に近づくと——文様が光り始めた。


青白い光が、文様を辿って流れていく。


そして——声が響いた。


『六人の戦士よ。汝らは迷宮を彷徨い、ここに辿り着いた』


低く、重い声だった。


「……また、試練か?」


ゼノが呟いた。


『試練ではない。これは——選択だ』


声が続けた。


『六つの柱。それぞれが、異なる道を示している。汝らは——分かれるか、共に行くか』


「……分かれる?」


リオンが眉をひそめた。


『六つの道は、全て同じ場所へ辿り着く。だが、それぞれの道には、異なる試練が待っている』


声が説明した。


『汝らが共に行けば——最も困難な道を進むことになる。だが、分かれて行けば——それぞれが軽い試練を受けることになる』


「……どういうことだ?」


ケインが混乱したように言った。


私は六つの柱を見た。


それぞれの柱の前に——通路があった。


六つの通路。


全て、同じ場所へ辿り着く。


でも——試練が違う。


「……つまり、こういうことね」


ルナが整理するように言った。


「私たちが六人で一つの道を行けば、最も困難な試練を受ける。でも、一人ずつ別の道を行けば、それぞれが軽い試練を受ける」


「そういうことか……」


リオンが呟いた。


「でも、分かれるのは危険じゃないか?」


ケインが不安そうに言った。


「確かに。でも、六人で困難な試練を受けるのも危険だわ」


エレナが答えた。


私は考えた。


分かれるか、共に行くか。


どちらが正しいのか。


……いや、正しいも間違いもないのかもしれない。


ただ——選択するだけだ。


「……俺は、どちらでもいい」


ゼノが言った。


「みんなの判断に従う」


「私も同じよ」


エレナが同意した。


リオンは私を見た。


「……セリア、お前はどう思う?」


私は——考えた。


共に行くべきか。


それとも、分かれるべきか。


……共に行けば、困難な試練が待っている。


でも——仲間がいる。


分かれれば、試練は軽い。


でも——一人だ。


どちらが——いいのだろう。


「……私は」


私は口を開いた。


「……分かれたくない」


その言葉は——自然に出てきた。


「一人は——嫌だ」


私はそう言った。


リオンは微笑んだ。


「そうか。なら、決まりだな」


「ああ。俺たちは、共に行く」


ゼノが頷いた。


「ええ。困難でも、一緒なら乗り越えられるわ」


エレナが言った。


「よし、じゃあ決まりだな」


ケインが笑顔を見せた。


ルナも静かに頷いた。


「……じゃあ、行きましょう」


私たちは中央の円盤に近づいた。


『共に行くか。ならば——覚悟せよ』


声が響いた。


『汝らの絆が、試されることになる』


円盤が光り始めた。


青白い光が溢れ出し、私たちを包み込む。


そして——足元が消えた。


私たちは——落下していた。


「うわああああ!」


ケインの叫び声が響く。


暗闇の中を、ただ落ちていく。


どこまで落ちるのか。


わからない。


ただ——落ち続けた。


そして——衝撃。


ドスン、という音と共に、私は地面に叩きつけられた。


「……っ!」


痛みが全身を駆け巡る。


だが——致命傷ではない。


私は身体を起こした。


周囲を見回す。


そこは——広い空間だった。


天井は高く、壁は遠い。床は石で、平らだった。


そして——仲間たちも、近くに倒れていた。


「……みんな、大丈夫か?」


リオンが立ち上がりながら言った。


「ああ……なんとか」


ゼノが答えた。


「痛いけど……生きてるわ」


エレナが顔をしかめながら言った。


私たちは全員、無事だった。


「……ここは、どこだ?」


ケインが周囲を見回した。


「わからない。でも——試練の場所、なのかしら」


ルナが言った。


そして——空間の奥から、音が聞こえた。


ズシン、ズシン、という重い足音。


「……何か来るぞ」


ゼノが剣を構えた。


私たちも武器を構えた。


足音が近づいてくる。


そして——姿を現した。


それは——巨大な騎士だった。


高さは五メートル以上。全身が黒い鎧で覆われている。右手には巨大な剣、左手には盾を持っていた。目の部分だけが赤く光り、こちらを見据えている。


「……デスナイト……!」


ルナが呟いた。


「しかも、でかい……!」


ケインが叫んだ。


デスナイトが——剣を振り上げた。


「散れ!」


リオンが叫び、私たちは左右に跳んだ。


デスナイトの剣が——地面に叩きつけられた。


ドォォォン!


激しい衝撃が走る。


地面が砕け、破片が飛び散った。


「……強いぞ、これ!」


ゼノが叫んだ。


「みんな、集中して!」


リオンが指示を出した。


私は剣を握り締めた。


これが——困難な試練。


私たちが共に行くことを選んだ結果。


ならば——乗り越えるしかない。


デスナイトが——再び剣を振るった。


戦いが——始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
楽しんでいただけましたら、 感想・ブックマーク・アクションをしていただけると励みになります。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ