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タロットとライオン  作者: 凪子
【JUDGEMENT.】
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「雪ちゃんは、結婚したくないって言ってるんですか?」


「わしの目から見るに、結婚する気はなさそうやな」


「でも、それは今やからであって、これから出会うかもしれないじゃないですか。会社とかで」


と言いながら、朱理は首を捻った。


(あれ?そういや雪ちゃん、どこに就職したんやろ?)


留学から帰った雪乃と先日久しぶりに会ったのだが、ハワイでの話に花を咲かせるばかりで、今後のことを聞くのをすっかり忘れていた。


敏男は組み合わせた手の上に顔を置き、眉を寄せている。


その表情ときたら、般若も裸足で逃げ出しそうなほどの迫力がある。


(雪ちゃんとは全然似てへんよなあ……)


きっと雪乃は、彼女を産んですぐ亡くなったという母親に似ているのだろう。


くっきりした目鼻立ちも、すらりとした背の高さも、透明感のある美しさも。


母親はたしか、アメリカ人だと聞いた。


「実はな、朱理ちゃん。わし、もうそんな長ないねん」


「……え?」


朱理は耳を疑った。


敏男があまりにも平然としているものだから、半信半疑で繰り返す。


「長ないって……」


「肝臓がんでな。今、入院してるねん」


そのとき視線を感じて、朱理は思わず振り返った。


店の入り口付近に、こちらを見つめているスーツ姿の男性がいる。


朱理と目が合うと、恭しく一礼した。


(小日向さんや)


敏男の体調を案じて、ああしてすぐ傍に控えているのだ。


冗談で言っているのではない。


そのことを、瞬時に朱理は察した。

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