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タロットとライオン  作者: 凪子
【JUSTICE.】
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「何で……何で連絡くれへんかったんよ」


朱理はぎゅっと拳を握りしめた。


「何で帰ってきてくれへんかったんよ、こんな大変なときに!!」


「うるさいな」


激昂する朱理をものともせず、雪乃は綺麗な指で無造作に頭をかきながら、横目で翼を見つめる。


「あんたが、松村先生とこの翼君か」


「そうです。はじめまして、雪乃お嬢さん」


二人はじっと見つめ合い、しばらくして雪乃が呟いた。


「ふうん……なるほどな」


「何がなるほどなん?それにさっきの話、ケイちゃんって」


雪乃は朱理を手で遮り、翼に問いかけた。


「親父の病室は?」


「七八七号室です。ご案内します」


翼は手で行く先を示し、雪乃を先導した。


「ちょっと待ってよ!」


朱理は慌てて二人の後を追う。


二人とも背が高く、大きな歩幅なので、追いつくのに必死だった。


(何で久瀬さんは、雪ちゃんに驚いてないの?)


まるで彼女の登場を最初から分かっていたかのように、揺るぎなく物事が進んでいく。


「雪ちゃん、小日向蛍って」


「あー面倒くさいな。だから戻ってくるのが嫌だったんだよ」


あからさまに邪険な顔をされて、手を振り払われる。


傷ついた気持ちと、怒りと、不信感が同時に湧いてきて、朱理は地団太を踏んだ。


「何やのよ、それ。こっちがどんだけ心配したと思ってんの!!」


「病院で騒ぐな、ヒステリー女」


どうしてだろう、自分でもエスカレートしていく感情が止められない。


雪乃の顔を見て、驚いた。嬉しかった。ほっとした。


これでやっと、伯父さんに会わせることができると。


(やのに……何でこんなにイライラするの?)


「お嬢さん」


エレベーターに乗り込むと、小声で翼が耳打ちした。


「気持ちは分かるけど、今は雪乃お嬢さんを親父さんに会わせるのが先や。事は一分一秒を争う」


「分かってます。分かってますけど……」


噛みしめた唇から血の味がする。


父親が危篤だというのに、この期に及んで雪乃は平然とした顔をしている。


そして、何の説明もしようとしない。


どうして戻ってきたのかも、なぜ行方をくらましていたのかも。

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