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翌日、病院に出かけようとすると、翼から電話があった。
「もしもし」
『俺や』
「オレオレ詐欺ですか?」
『違う。久瀬翼や、ちゃんと登録しとけ』
「分かってますよ。何かご用ですか?今から病院に行くんですけど」
『前に近大付属病院行ったとき、千石貴文のこと聞いた看護師さんおったやろ』
「はあ」
『その人から事務所に電話かかってきた。千石のことで話があるらしい』
朱理はとっさに近くにあったタロットカードの束を掴み、シャッフルして一枚引いていた。
【THE HANGED MAN.】
伯父敏男の容態について引いてみたけれど、これが当たっているかは分からない。
なぜなら、病気や死については、タロットのみならず、占うこと自体がタブーとされているからだ。
ロープで足を縛られ、樹から吊るされた男。
不思議と表情に苦悶の色はなく、安らいでいるように見える。
このまま膠着状態がしばらく続くという暗示に思えた。
(最期の時までに、やれることをしたい)
「久瀬さん」
『何や』
「私も一緒に連れていってもらえませんか?」
『そう言うと思った』
その瞬間、スマホの向こうと家の外で同時に、プップッと軽いクラクションが聞こえた。
窓を覗くと、洗練されたメタリックブルーの車が停まっている。
朱理は【用事があり、久瀬さんと出かけます。病院には後で行きます】と書き置きを残し、コートとスマホ、財布を引っつかんで玄関から飛び出した。




