表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タロットとライオン  作者: 凪子
【THE LOVERS.】
35/42

35

ボルボで乗りつけたのは、昭和レトロの漂う定食屋だった。


箱型のテレビに黒光りする柱、使い古された机や椅子、壁には毛筆で『とんかつ定食 八百五十円』『からあげ定食 七百八十円』などと書かれた半紙がひしめき合っている。


物珍しそうに見ていると、翼がからかうように言った。


「お嬢は、こういうとこは初めてか」


「お嬢って言うのやめてください」


朱理がむすっとしていると、お冷やを持ってきたふくよかな女性が、目尻に皺を寄せて微笑んだ。


「あら、翼君やん。まいどおおきに」


「うぃっす。おばちゃん元気やった?」


「元気してるよー。この間はありがとうね。えらいぺっぴんさん連れてるやん!」


「まあな。スタミナ定食二つで」


「はいよっ」


翼が勝手に注文したので、朱理は仰天した。


「ちょっと。勝手に頼むんやめてください。私にも選ぶ権利あるでしょ」


「お前にはない。俺が奢るんやからな」


「いやいや、奢っていりませんって。そういう横暴なことしてると、いつかハイエナの群れに崖から蹴落とされますよ」


「ええかげんライオンキングから離れろ。俺はお洒落な金髪弁護士や。橋本徹(はしもと・とおる)知らんのか?」


「元大阪府知事と自分を同列に語らんといてください」


「せやな。俺のほうが大物や」


(ここ、笑うとこ?)


呆れて物も言えない朱理である。


「スタミナ定食おまちっ!」


どん!!と目の前に置かれたのは、豚の生姜焼き、から揚げ、味噌汁、キャベツたっぷり、それに大盛りのご飯だった。


朱理は女子にしてはよく食べるほうだが、それでも勇気の要るボリュームである。


「ここで食うのはスタミナって決まってるんや。うまいで」


翼は自信満々に笑っている。


ごくりと唾を飲んで生姜焼きに箸をつけると、肉のうまみとタレの甘味、生姜のピリッとした辛みが口の中で広がって絶品だった。


「おいしい~!!」


「どや、うまいやろ」


さも自分の手柄かのように、どや顔を見せつけられる。


ただ、お世辞抜きで本当に美味しかった。


から揚げは外はサクサク、中はジューシーでニンニクと生姜の味が効いている。お酒のあてにもぴったりだ。


味噌汁は具だくさんの豚汁風味で、箸がどんどん進む。


夢中になって食べていた朱理は、翼が銃の照準を絞るように目を細めたことに気づかなかった。


「――で?お前の勘、どっから来とるんや」


白米をかき込んでいた朱理は、喉の奥に詰まってむせ返った。


慌てて冷たい水で押し流す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ