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病院に運び込まれたものの、驚くほど軽傷だったため、朱理はすぐ帰宅することになった。
母親が迎えに来るまでの間、暗く人気のない飲食コーナーでスマホを見つめる。
(あの人、大丈夫かな)
自分をかばったせいで、翼は怪我を負ったようだった。
まだお礼もお詫びも言えていない。
仕事もあるだろうに、大丈夫だろうか。
手元に振動を感じて見ると、着信があった。
風間敏男からだった。
「伯父さん!?」
『おー朱理ちゃん。無事か?』
へなへなと膝から力が抜けていく。
「もう……ほんま大変なことになって」
『せやなあ。ほんまに申し訳なかった』
「伯父さん。さっき私とライオ……久瀬さん、巻き込まれたんです、交通事故に。久瀬さんが警察まで私を迎えに来てくれた後」
『そうらしいな。今、病院やろ?』
「えっ。何で知ってはるんですか」
『久瀬君から直接連絡受けたからな。彼は松村先生とこの弁護士なんや。松村先生はうちの会社の顧問弁護士やってくれてはるから、その縁で知り合ってな。それで朱理ちゃんのとこに行ってもろたんや』
「そうでしたか。それで、あの、千石さんが……」
『ああ、ニュース見たで。殺されたらしいな』
背筋がぞっとして、朱理は唇を噛みしめた。
「私……私、何も知らないんです。雪ちゃんのお見合い相手やから会いに行っただけです。それやのに警察が家まで来て、連れていかれて」
『ごめんな。怖い思いさせてほんまに悪かったなあ、朱理ちゃん』
労わる口調が身に沁みて、目の前が熱く潤む。
「伯父さん、私……もう無理です」
つい、朱理は口にしてしまっていた。
言い出したら止まらなかった。
「私なりに頑張ったけど……雪ちゃんの気持ちを変えるのは、どうしても無理でした。それに千石さんがあんなことなって……」
言い訳を重ねる舌が苦くなる。
『分かってる。もうこれ以上、朱理ちゃんに迷惑かけられへんからな。身内の恥は身内で濯がなあかん』
(恥……?)
言われている意味が分からなかったが、濃く重い疲労がのしかかってきて、勝手に瞼が閉じていく。
『堪忍やで、朱理ちゃん。あとのことはもう……』




