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夕飯のロールキャベツとコンソメスープを食べた後、部屋に戻ってタロットカードを広げてみる。
母と父は、小日向の来訪した理由を聞きたそうにしていたが、そこは無難な受け答えでごまかした。
(伯父さんの病気のこと、勝手に伝えるのも悪いしなぁ……)
特に母にとって風間敏男は、血の繋がった兄である。
我が母ながらいつまでも少女っぽいところのある彼女に、こんな重い知らせをもたらすのは気が進まない。
その上、雪乃のお見合いを手伝おうとしているなんて、説明する気にもなれなかった。
テーブルの上にカードを円形に広げ、占うことを何となく思い浮かべながら、反時計回りに混ぜていく。
静かにこの作業をしているだけで、なぜか気持ちが落ちついた。
朱理にとって、カードは友達の一人だった。
何でも話しかけられて、決して秘密を外に漏らさないでくれる、大切な友達。
そして、困ったときや悩んでいるときに寄り添ってくれる、心強いお守りでもあった。
反時計回りの後は、時計回りにカードを混ぜ、十分に混ざったら三つの山を作る。
その山をランダムな順番で重ね合せ、何度かカードを切り、上から六枚をめくる。
七枚目が、引くべきカードだった。
出たのは、【THE DEVIL.】のカードだった。
恐ろしい半裸の悪魔が、口をへの字にしてこちらを睨みつけている。
ヤギの角、コウモリの羽根、猿の顔、人間の上半身と、ワシの下半身。
全てがごちゃまぜになった、醜くおぞましい姿だ。
その下には鎖に繋がれた裸の男女の姿がある。
「きもっ」
思わず朱理はカードを振り払った。
普段なら悪魔が出たところで見慣れているし、そこまで動揺することはないのだが、なぜだか今日はとても嫌な感じがした。
(私、何を占おうとしたんやっけ……そうや)
さっき思い出した言葉が気になったのだ。
――千石貴文に近づくな。
ライオンキングが去り際、言い残していった言葉。
(悪魔と何の関係があるの……?)
気持ちを立て直し、じっとカードを見つめ直す。
だが、心に浮かぶことがない。
朱理は、どうしても意味を読み取ることができなかった。




