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「わたくしが極秘裏に千石貴文様をお探しし、朱理お嬢様に引き合わせます。
そして朱理お嬢様の目でご覧になったことを、そのまま社長と雪乃お嬢様にお話しください。
その上で、そこから先のご判断はお二人にお任せするというのはいかがでしょう」
「え、そんなんできるんですか」
「はい。わたくしが何とかしてお探し申し上げます」
小日向の目には強い意志が宿っていた。揺るぎない強靭な光が。
(この人も、何とかして伯父さんの役に立ちたいんやわ。そりゃそうよな……親友やねんもん)
朱理は小箱に目を落とし、華やかな光を放つネックレスを見た。
華奢な銀の鎖に美しい台座。ダイヤの連なりは、何億光年先からも分かるほど、まばゆい星の輝きだ。
本来これは令嬢である雪乃のために、恐らく結婚披露宴用に作られたアクセサリーに違いない。
それを朱理に渡した敏男の心痛というのは、いかばかりか。
絶望、苦悩、諦め……察するに余りある。
(受け取らんって言うても無理やろな……。やったら、それだけの恩返しはせなあかん)
「分かりました。やってみます」
朱理は頷いた。
「ありがとうございます」
小日向は深々とお辞儀をした。
同時に、頭の中で声がする。
――千石貴文に近づくな。
(そういや……雪ちゃんが言ってたな。あれ、どういう意味やったんやろ?)




