表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タロットとライオン  作者: 凪子
【THE DEVIL.】
12/25

12

雪乃とのライン電話がつながったのは、その日の深夜になってからだった。


「もしもし雪ちゃん?」


『おー、朱理か。どした?』


「どした?とちゃうよ。今日お見合いの日。何回もライン送ったのに反応ないし!大変やってんから!」


『お前まさか行ったの?はははっ、馬鹿だね~』


明るい笑い声に、堪忍袋の緒が切れた。


たっぷり二十秒、朱理は沈黙を保つ。


「…………………………雪ちゃん?」


『何だよ』


「やっていいことと悪いことがあるやろ?お見合い来ぇへんのやったら、連絡してくれたら私だって行かんかったやん。何で無言でドタキャンすんの?」


押し殺した声に怒りを感じたのか、雪乃はようやく謝った。


『ごめん』


(何か知らんけど涙出てきた)


朱理は鼻をすすって続ける。


「伯父さんに何て報告したらええんよ……」


『ごめんって。親父には私のほうから詫び入れとくからさ。な?機嫌直せよ』


「いや、それが違うねん。違う人やってん」


『何?』


「お見合いに来た人。千石って人じゃなかってん。全然別の人。ライオンキングみたいな」


『は?ライオンキング?』


言いながら面白くなってきて、朱理は吹き出した。


(だってあの頭、ほんまにライオンっぽいもん)


「とにかく謎すぎやけど、向こうも本物じゃなかってん。来てすぐに帰ったよ」


朱理は口をつぐむ。


「千石貴文に近づくな」と言われたことは、何となく言わないほうがいい気がした。


『そいつの名前は?』


「何やったっけ……忘れた」


『千石の知り合いか?』


「え、聞いてへん。何も言うてへんかったし」


『お前なぁ……』


ハスキーな溜息が聞こえてくる。


『初対面の素性も知らない男と、ホテルで二人きりになるんじゃないよ。ヤられたらどうすんだ』


「や、やっ……!」


びっくりして言葉が喉に引っかかる。


結果、うめき声のような音が出た。


「いきなり何言うてんのよ雪ちゃん!!」


『ライオンキングにはもう会うなよ。まさか連絡先教えてないだろうな』


「教えてへんよ!大体、もともと二人で会う予定じゃなかってんからね。雪ちゃんがドタキャンなんかするから、こんなことに」


『あーはいはい、分かった分かった。じゃあな』


ぶつっと音がして、唐突に通話が途切れる。


朱理は唖然とした。


「何なんもう、腹立つ~!!」


寝心地のいいベッドの上でごろごろ転げ回る。


腹立ちまぎれに、柔らかいビーズクッションを思いきり蹴飛ばした。






















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ