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ウルトラマンユニシス&グリア

久々にウルトラマンガイアとコスモスを見て滾った結果の産物です。

オリジナルウルトラマンですので拾い心で見てくれるとありがたいです(笑)





宇宙より破滅もたらす邪悪なる力があらわれるとき


大地と海の化身が人類を救う







太陽系第三惑星『地球』には人類や動物といった生命体の他に、「怪獣」と呼ばれる巨大な生命体が存在する。

怪獣は個体数は少ないものの圧倒的力を有しており、軽い尻尾の一振りが我々人間に対して大きな損害を与えることも間々ならない。

そこで今から60年前、各国共同で対怪獣殲滅組織「地球防衛軍」を作り多くの怪獣達を武力を行使して殲滅してきた。東京タワーを優に超える生命体に対して被害は少なくなかったが、それでも束の間の幸せのために戦ってきた。

だがそんな戦いに異を唱える者達が現れた。

怪獣だって生き物なのだから話せばわかるはずだ、彼らはこの地球の守護神だなどといった怪獣養護の声が高まり、19年前に世界中から融資を募り民間企業「科学調査研究所」が設立された。

彼らは最先端科学を用いて怪獣の研究や怪獣によって引き起こされた超常現象の調査を行い、殲滅寸前の怪獣達を救助、保護し、彼らが心置きなく暮らせるよう新たな環境を整えてみせた。


殲滅か、それとも救済か———。


2つの組織の信念が長年ぶつかり合い怪獣の活動も活発化する中で、これまで以上に円滑に作戦を進める組織が必要であるとされ、今年新たに両組織から特に優秀な人材を集めて結成された組織「最前線防衛連合」通称F.D.Aが設立された。




—————————


F.D.Aに配属されて5度目の出勤日である今日、青井大我は盛大に寝坊し全速力で基地内を走り目的地である中央指令室へと向かっていた。

調査所にいた頃は頻繁になっていた出動ベルもここに来てからはパタリと止み、その間は出来て間もない基地内設備の確認や現在保護している怪獣達の生態分析、そして厳しい訓練を行いながら過ごしていた。

F.D.Aの中で特に優秀で常に最前線で作戦を実行する部隊「タスクフォース」のメンバーに選ばれた大我はデスクワークや訓練と緊急出動以外でも忙しく過ごしており、殊更昨日は訓練がいつも以上に盛り上がったせいか自室に帰ってから目覚まし時計で起こされるまでの記憶がなかった。

慌てて烏の行水のごとくシャワーを終わらせてから黒と白の特製戦闘スーツに着替えると朝食も取らずに部屋から飛び出したのである。


「リュウ!?」

「タイガ!?お前また寝坊か!」

「そういうお前だって同じだろうが!」


途中であったのは防衛軍から選抜された同じくタスクフォースメンバーの赤羽根竜希で、同じ高校に通っていた友人でもあった。指令室で再会した時は上官がいるのも構わず喜んでしまい、後で盛大な雷が落ちたのは言うまでもない。

狭い通路を押し問答しながら同時に指令室に飛び込むと朝礼真っ最中で綺麗に整列したタスクフォースメンバーと目が合い、大我は何とか誤魔化そうと笑みを浮かべ、竜希は気まずそうにそっと視線を逸らすがそれを許してくれるほど甘くはなかった。


「青井隊員」

「は、はい!」

「赤羽根隊員」

「っはい!」


慌てて姿勢を整える2人の前に立つのは、大我同様調査所から選別された市瀬和樹副司令官で普段は理解があるいい人なのだが怒るときは本当に恐く、とりわけ大我は直属の上司と部下であるからこそその恐ろしさは嫌というほど知っている。


「ここに来て今日で何日目だ?」

「「い、5日目です」」

「初日に勤務時間の話をしたな。朝礼時間は何時だ?」

「「く、9時です」」

「それで今は何時だ?」

「「く、9時1分です」」

「・・・昨日の訓練は確かに厳しかったがその分早く終わらせたはずだ。それなのに遅刻をするとはいい度胸をしているじゃないか」


額に青筋を立て握り拳をぽきぽきと音を立てるその仕草に2人は反射的にお互いを指さし罪を擦り付け合おうと口を開く。


「た、確かにいつもよりちょぉっと起きるのは遅かったですけど途中にこいつに会わなければ間に合うはずだったんですよ!」

「なにが間に合う時間だよ!俺の方こそお前にさえ会わなければ余裕で朝礼に間に合ってたんだよ!」

「俺のせいだって言うのかよ!」

「そうだよ!つーかお前みたいなのがこのタスクフォースに選ばれること自体がおかしいんだよ!」

「このっ!言わせておけば!」

「やんのかよ!」


だんだんヒートアップする言い合いに他メンバーが慌てて止めに入るが収まらず最終的に野球の乱闘騒ぎの様な有様になったが、市瀬副司令官の特大雷が落ち一気に終息した。


「そんなに仲がいいのならとっておきのプレゼントをやる。青井、赤羽根両隊員に今日から1か月間大浴場掃除を命ずる!」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「大浴場ってあの大浴場ですか!?」

「そうだ。ここにいる全ての隊員の憩いの場と言っても過言ではないあの素晴らしい広さを持つ大浴場だ。いいか、朝礼後すぐ1時間で終わらせて戻って来い。そうだ、露天風呂とサウナもしっかりと掃除しろよ?」


F.D.Aの基地は基地建設のためだけに人工島を1つ作り、作戦で使われる機体の収容からメディカルセンター、ジムにレストランにカフェ、娯楽施設などもあり、中でも日々体を酷使する隊員達の憩いの場になればと作られた大浴場は高級旅館でもお目にかかれない規模であり、清掃スタッフ10人いても1時間では終わらないだろう。

まだ懲りずに異を唱えようとする2人だったが、今度は雷ではなく市瀬の拳骨が落ちて話は物理的強制終了となった。

もはや朝礼とも言えない朝礼が終わり肩を落とす大我にメンバーが寄ってくる。


「青井くんって毎日毎日本当に学習しないよね」


爽やかな笑顔で毒を吐く男の名前は、大杉渉。情報分析に長けており、キーボード1つでどんな怪獣でも瞬時に丸裸にしてしまうが、優秀さ故か性格にやや難がある。


「まあ朝っぱらから元気がいいのはいいが、あんまり市瀬さんを怒らせない方がいいぞ」


厳つい風貌で苦笑いを浮かべる男の名前は、掛井一郎。見た目と違わぬ肉弾戦を得意としながらもそれ以上にメカニックに強く、様々な発明品を作っている。


「でもこれでその元気もいい感じに落ち着くんじゃないのかしら」


気の強そうな女性の名前は、川野結子。射撃の名手と言われるほどの腕前とパイロットとしての腕が買われて選ばれたが、所内では魔性の女とも呼ばれ多くの男性職員を虜にしていると聞く。


「青井隊員。いつまでもしゃべってないでさっさと行ってこい。緊急出動は無くても仕事は山の様にあるんだぞ」


1人自席で書類に目を通している男の名前は、上加瀬伊吹。所内のみならず防衛軍からも評価の高いトップガンでどこをとっても完璧なリーダーであり、高身長でクールなルックスや意外と優しい性格からも女性職員の間では話が尽きず、実は川野とデキているのではないか噂もある。上加瀬本人に直接聞く度胸はないため聞いたことはないが、川野はその噂に満更でもない様子とは同期の女子達からの情報だ。

ちらっと竜希を見ると、彼もチームメンバーから揶揄われており上加瀬の一言で自分だけ颯爽と指令室を出ていこうとしたため大我も後を追うように指令室を出た。




—————————


清掃をこれまた喧嘩しながら何とか1時間で済ませて指令室に戻り、デスクに置かれた山の様な書類と格闘せねばと深いため息をついた所でここに来て初めてとなる緊急サイレンが基地全体に鳴り響いた。


「秩父方面にてゴメノス出現!」

「ゴメノス!?」


メインモニターに映し出された映像には、地中奥深くで眠っていたはずの剛腕怪地底獣ゴメノスが意気揚々と闊歩し空に向かって雄叫びを上げている。


「付近でもゴメノスが目覚める要因となったこともなく、出産といったケースでもないようです」

「それなのになぜ目覚めたんだ」

「副司令官!この先に市街地があります!」

「避難状況は!」

「・・・約30%の避難を確認!このままでは間に合いません!」


大杉の分析に困惑するメンバーにオペレーターが避難状況を伝えるが、状況は芳しくない。


「ファルコンチーム、ライトニングチーム」


防衛軍メンバーはファルコン、科学研究調査所メンバーはライトニングとチームが分けられ、市瀬の号令で一列となり綺麗に整列する。


「いいか。これは訓練ではない。一瞬たりとも隙を見せるな」

『はい』

「都市防衛指令発動!タスクフォース出動!!」

『了解!!』


指令室を飛び出した両チームにはそれぞれEXサンダーという最新鋭の万能戦闘機が3機ずつ与えられており、リーダー機のみ1人で残りの2機に2人ずつ搭乗し一斉に基地から飛びだった。

そう時間がかからずゴメノスがいる現場に到着すると、市街地からそう遠くない場所で歩みを止めて空に向かってしきりに雄叫びを上げている姿が確認された。


「何か、様子がおかしくない?」

「”ライトニング1より指令室。上空に何か確認できるか?”」

「”こちら指令室。現状何も確認できません”」


大我が操縦のライトニング3は大杉が共に搭乗し後方で分析を行っているが、そちらでも何も観測されていなかったがこのまま放置することも出来ない。

誘導弾を使って元の場所に帰ってもらうか保護するか提案しようとした時、聞き馴染みのない男の声が割り込んできた。


「”怪獣1匹にいつまでぐずついているつもりだ!”」


声の主は防衛軍メンバーでタスクフォース総司令官である大河原邦治で、初日の顔合わせ以降姿を見せなかった男である。でっぷりとした狸のような風貌の男はこの機に乗じて”総司令官”としておいしい所だけ持っていこうとやってきたのだろう。

市瀬と言い合いをしているのがもろに無線で流れてくるため無視することも出来ず困惑する中、頭が痛くなるほどの大声で大河原がファルコンチームに指示を出した。


「”ファルコンチーム攻撃開始!”」

「”待ってください総司令官!ゴメノスは我々に攻撃を仕掛けていません!出現理由は分かりませんが、きっと”」

「”その理由を待っている間に市街地に攻撃されたらどう責任を取るつもりだ!ファルコンチーム!さっさと攻撃しろ!!”」

「”・・・ファルコンチーム了解。これより攻撃を開始する”」


大我の声も虚しく、ファルコンチームリーダーの山下浩二の声と共にファルコンチームが一斉射撃を開始する。


「”おいリュウ!やめろ!!”」


ファルコン3を操縦しているはずの竜希を説得しようとするもその無線を取ることなく、無抵抗のゴメノスはミサイルの雨を受けて悲鳴を上げて倒れてしまった。

辛うじて息はあるものの痛みからかのたうち回るその姿に大我が抗議しようとしたが、市瀬が変わって抗議している。


「”青井!”」

「”危ない!”」


無線に気を取られた一瞬、いつの間にか立ち上がっていたゴメノスが目の前に迫っていて、慌てて回避しようとしたが避けきれずに右翼部分を破損していまい操縦が効かず機内に警報音が鳴り響く。


「”青井、大杉脱出しろ!”」


大きく揺さぶられる中かろうじて聞こえた上加瀬の声に緊急脱出用のレバーを引こうとした瞬間、先程の衝撃で故障したらしく動かなくなっていることに気付いた。

大杉は既に脱出しており、刻一刻と死へのカウントダウンが迫る機内には大我ただ1人。

死の間際に走馬灯を見るというが大我も例外ではなく、幼少期からこれまでの記憶が一気に流れ込んできてもう無理だと死を覚悟したその瞬間懐かしく温かな光に包まれた。


———それは昔、大我がまだ小学生の頃に出会った奇跡の出会い。


(目を覚ますんだ、大我)

(このまま諦めてはだめだ)

(戦うんだ、大我!)


———そうだ、そうだ。この声は、



「———ユニシス!」



その瞬間、世界が光で満ちた。


—————————


突如として現れた眩い光がライトニング3を覆ったかと思えば光が徐々に人形へと形を変えていき、そして光が弾けた。


「銀色の、巨人」


過去に2度現れた巨人とはまた違う銀色と赤色の巨人は、両手に持っていたライトニング3を少し離れた場所にそっと置くと暴走しているゴメノスと向き合って戦闘の構えをとる。

想定外の事態に山下が指示を乞う。


「”ファルコン1より指令室。現在ゴメノスと謎の巨人が戦闘中です。どうしますか?”」

「”そんなものどちらとも殲滅すればいいだろう!”」

「”で、ですが”」

「”ええい!ファルコンチームは直ちに両者を攻撃!これ以上被害を拡大させるな!”」

「”・・・”」

「”聞こえんのか山下!”」

「”・・・・・・ファルコンチーム。これより巨大生命体2体に対して攻撃を開始する”」

「”リーダー!?”」


苦しげに答えた山下の声に大我や後部シートの小宮山太一も抗議の声を上げるが、組織にいる以上上官の命令は絶対なのである。

怪獣殲滅と国民の安全を守るという防衛軍の理念に心を引かれて入隊し、今まで厳しい訓練にも耐え抜きその身を捧げてきた。だがある事件をきっかけに怪獣殲滅が本当に正しいのか軍内でも意見が分かれ始めていた。

そのきっかけを与えたのが、色は違えど今自分達に背を向けてゴメノスと対峙している巨人だった。

巨人はゴメノスに苦戦していてこのまま戦闘が続けばこの先にある市街地に被害が及ぶ可能性があり、巨人を援護ししようにも巻き添えになってしまうのが目に見えていた。


「”早く攻撃をせんか!”」

「”・・・ファルコンチーム、攻撃開始”」


大河原の急かす声の後の山下の感情を含まない声が竜希にスイッチを押させた。

ミサイルの雨がゴメノスと巨人を襲い、たまらず両者が地面に倒れこむがそれでも雨は止まらない。

正義か悪かは関係なく、たった1つの命令のもとで彼らは戦わなければならないのだ。

再びスイッチを押そうとした竜希の前に再び眩い光が現れ、そして人型へと形を変えていく。

見覚えのある銀色と大地を思わせる緑色の背中にミサイルが当たるが、巨人は両者の盾になるかの如くその場を動かない。


「”ファルコンチーム攻撃をやめろ!グリアに手を出すな!”」

「”・・・グリア?”」

「”上加瀬リーダー。あの巨人を知っているのか?”」


市瀬の困惑した声に先程攻撃中止を唱えた上加瀬が言葉を嚙みしめるように答えた。


「”初めに現れた巨人は分かりません。ですが、今現れた巨人については少しだけ分かります。・・・あの巨人の名前は、ウルトラマングリア。俺達の、我々人類の味方です”」

「”ウルトラマングリア。・・・我々の、味方?”」

「”ですから攻撃をやめてください!”」


上加瀬と言えば外見同様性格もクールで常に冷静沈着を体現したような男であったが、ウルトラマングリアが現れてからは激しく動揺しているように感じた。

あまりの必死さに大河原も黙る中、グリアがゆっくりと動き出し倒れている巨人の肩をそっと労うように2,3度叩くとゴメノスに視線を向け、負傷し血を流すゴメノスはグリアに頭を優しく撫でられてから緑色の光に包まれた。

光が消えると傷が綺麗に治っていて、安心した様に眠りについたゴメノスを確認するとグリアはその巨体を持ち上げてもと居た縄張りへと飛びだって行った。

もう1人の巨人はその後ろ姿を見て安心したかのように眩い光に包まれて姿を消した。

その後上加瀬の指示で全員が着陸し大我と大杉の捜索に出ると大杉はかすり傷を負った程度ですぐに見つかり、大我は機体のすぐ近くで意識のない状態で発見されすぐさまメディカルセンターに搬送された。

一歩間違えれば死ぬかもしれない状況にも関わらずかすり傷と脳震盪だけで済んで全員が一安心したが、竜希は複雑な心境であった。

勤務が終わり大我の病室に訪れた竜希は起こさないようそっと腰かけて、小さく吐息を立てている彼の顔を見つめ、あの巨人がゴメノスと戦っている時にふと感じた既視感を思い出す。

訓練で教わる空手や柔道といった動きとは違うとても綺麗とは言えないが確実に急所を突くような喧嘩の様なスタイルは、高校3年間で幾度となく目にして相手にしてきた動きだった。

もしそうだとすればあれだけの事故でかすり傷と脳震盪だけで済んだことも合点がいく。


「・・・タイガ。お前があの巨人なのか?」


その言葉は眠る本人に届くことなくゆっくりと溶けていった。





—————————


暗闇が支配する部屋にスマホの着信が響く。

荷ほどきの住んでいない段ボールが山積みの部屋に行儀よく置かれたベッドの上にこの部屋の住人がいるが、苦しみに耐えるよう体を丸くして藻掻いている。

1時間以上鳴っているスマホに手を伸ばそうも身体に走る激痛で身動きが取れない。

住人は1人、声を上げることなくただ苦しみに耐えながら夜を過ごす。


—————————


「上加瀬リーダー。君は一体あの巨人について何を知っているんだ?」


翌日案外あっさり起きた大我はもう1日検査ということで欠勤となり、いつも通り総司令官がいない朝礼で全員が見守る中上加瀬は市瀬にウルトラマングリアについての質問を受けていた。


「8年前と1年前と昨日の3回、君がウルトラマングリアと呼んだ巨人が現れた。その生態は謎のままで個体名すら付けられていないはずの未知の存在だ。3回とも行動から怪獣から人々を守るために現れたとは分かるが、それが本意なのかもわからないそんな存在を君はウルトラマングリアと呼んだ。あれは一体何者なんだ?」

「私が知っているのはあの巨人がウルトラマンと呼ばれる伝説の光の戦士であり、グリアは地球を守るために現れた大地と海の化身ということだけです」

「大地と海の化身?」

「それってあの大地と海の伝説のことですか?」


川野の反応に上加瀬はゆっくりと頷いた。


「”宇宙より破滅もたらす邪悪なる力があらわれるとき大地と海の化身が人類を救う”。そ、それじゃああのグリアが来たのって宇宙から何か来てたからってことですか!?」

「そうだとするとゴメノスがしきりに空に向かって雄叫びを上げていたことにも合点がいくけど、それじゃああともう1人の巨人は一体?」

「それは私にも分かりません。ただもう1人の巨人もウルトラマングリアと同じと捉えるのであれば、あの巨人も我々と共に戦う戦士です」


揺れることのない力強い瞳が市瀬と上加瀬の視線がぶつかり合う中、指令室のドアが開き戦闘スーツに身を包んだ1人の女性が入ってきた。

上加瀬とそう変わらない歳女性は室内とタスクフォースメンバーを見渡し、優し気な笑みを浮かべた。


「どなたですか?」

「本日より大河原総司令官に代わりこちらのF.D.Aタスクフォースに配属されました上鳴響と申します。よろしくお願いいたします」


突然のことで全員が動揺し、市瀬も動揺を隠せないままどういうことか説明を求めた。

急遽決まったことで伝達が言っていなかったのだろう。


「言葉通りの意味です。大河原総司令、いえ元総司令官は昨日付で異動となりました」

「異動、ですか?」

「上が決めたことですので理由は聞かないでください」

「あの、でしたらなぜあなたを?」

「?あぁ。防衛軍でもそれなりの地位にいたはずの男の代わりになぜこんな小娘が来たのかということですか?それも上が決めた事ですので私に聞かないでください」


張り付けたような笑みを浮かべながら市瀬の前に立ち、昨日まで大河原が身に着けていた総司令官のワッペンを差し出す。

意図が分からず困惑する市瀬に上鳴は笑みを浮かべる。


「年功序列というだけで有無を言わさず総司令官の地位を手にしたと聞きました。それでいうと私は総司令官には相応しくない。ですからどうぞこちらを受け取ってください」


F.D.A設立に際し総司令官についての議論ももちろん行われたが地位や権力で大河原がその座を手にし、総司令官としての仕事は結局のところ市瀬が全て行っていた。

得体のしれない歳下の女性の妙は威圧感に圧倒され、市瀬は自分のワッペンと彼女の持つワッペンを交換すると彼女は納得いったように頷き笑みを浮かべた。


「改めて本日よりF.D.Aタスクフォース副司令官に任命されました上鳴響です。みなさん、どうぞよろしく」




—————————



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