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旅立ち

 早朝、むくりと起き上がった俺は水瓶を覗き込んだ。


 相変わらず女のままか。

 軽く溜め息を吐きながら水を浴びに行く。朝水を浴びるのは気持ちいいのだがこの身体になってからは少し寒い。これが男女の違いなのかと、感心しながら水浴びを終えた俺は昨日の残りのシチューを食べる。昨日は最終的に魚のシチューにした。大きめの鍋で作ったから、前までの俺なら三日かけて食べていた量だが、この身体だと二食分の量でしかないらしい。昨日気付いた時は、中々に燃費の悪い身体に何とも言えない気分だった。


 だが、悪い事ばかりではない。この身体実は男だった時より身体能力が高いのだ。昨日の帰り道に、気分が上がり無性に身体が動かしたくなったので走って帰ったのだが、割りと走った筈なのに息も切れず、汗もかかなかった。


 身体能力の向上と言うこれから旅に出る俺にはピッタリだった。


「よし、そろそろ行くか」

「行ってくるよ、ラト」


 持っていこうか悩んだがラトの写真は置いて行く事にした。一枚しかないラトの写真は両親の見える範囲に置いておきたいと思ったからだ。そして、ラトの両親には書き置きをして行く。そうすれば、早く旅に出たかったのだと思って貰えるだろう。実際、早く旅に出て色々見て回りたいと言う思いもあった。


 準備や書き置きをし終えた俺は、まだ日が登りきっていない少し白んだ空を見上げ、生まれ育った町を出た。



 村を出てから数時間、歩いて歩いて俺は森の中腹まで来た。何故森を抜けようとして居るかと言うと、街道に出るためにはこの村を囲むようにある黒獣の森を抜けなければならない。だが、この森は名前の通り魔獣や野生動物が頻繁に出る。一匹一匹は強くないのだ、子供でも武器さえ有れば倒せる程度だが、生息数が多い。そして、この森が黒獣の森と呼ばれる由縁は森の主の見た目が元となっている。


 黒い毛並みに体長、三メートルの犬。もしも出会ってしまったら人間、魔獣、野生動物など関係無く襲われ、毎年行商人が何人か亡くなっている。そんな事態にも関わらず何故、森の主を国が放置しているか、それは過去にあった凄惨な事件が原因となっている。俺がまだ小さかった頃に王都の先鋭で討伐隊が組まれて来た事があった。だが、結果は討伐隊の全滅と言う形で終わった。それ以降国は森の主に関与しなくなり村への道は自己責任で通るようにと通達があった。


 そして、森の主は俺の倒すべき敵でもある。


 まあ、今の俺じゃあまだ勝ち目もないのだが。授かった魔法は誤作動しっぱなしだし、戦い方も知らないし。だから、俺は今王都の冒険者ギルドを目指して旅に出たのだ。



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