サーシャ・ラスドア4
ララヤさんの店から出た俺は、色々喪ってスッキリした顔をしていた。
「服は当面大丈夫だろ。次は食料だな」
ララヤさんに辱しめは受けたが貰った魔法の服は本当に高性能だった。
メイド服で散々可愛い可愛いと言われた後、他の形にならないか試していた。すると、この服は形が変わるだけでなく厚さ、大きさ、色まで変えられた。流石に、家を包むとかは無理だが二メートル位なら変化出来るらしい。
なので、今は黒色のパーカーにララヤさんから貰ったショートパンツになっている。
「今日の晩飯は肉か、魚か……うーん悩む」
服屋で金を使わなかったので晩飯は少し豪勢にしたい。予定外の金は使ってしまうのが俺の主義だ。
晩飯を考えながら歩いていると近くからとてもお腹が減る匂いがしてきた。
「おじさん、二本頂戴」
「あいよ、二本で六銅だよ」
屋台のおじさんはそう言うと三本入った袋をくれた。
「あれ、おじさん一本多いよ ?」
「嬢ちゃん王都でも見ない位可愛いからな、サービスだよ」
少し格好を付けて笑ったおじさんが俺にウィンクを飛ばしていた。どんなに容姿が女になろうと心はしっかり男の俺からすればおじさんのように男からの好意はあまり嬉しくない。だが、今回は話が違う。魔豚の串焼きは俺の大好物だ、それをサービスで一本多く渡してくれたおじさんは最高に格好よく見えた。そんなおじさんに少し恩返しをしたくなった俺は、とびっきりの笑顔でお礼を言った。
「ありがとう、おじさん !」
お礼を言って最高の気分で屋台を後にした俺は早速、魔豚の串焼きを食べ始めた。
昼飯もまだだった俺は忘れていた空腹を取り戻すように串焼きを食べながら、晩飯と数日間の食料を扱う店へ向かった。
店に付き適当に買う物を決めていく。だが、今日の晩飯以外は主に、硬いパンや干し肉などの食料だ。
なぜ、こんなに保存食を買い込むかと言うと明日には旅に出ようと思っているからだ。色々理由はあるが、ラトの両親と今の状態で会うと混乱させてしまうのが一番気掛かりなのだ。幼い頃から世話になっている人達に心配を掛けるよりも、ラトとの約束を果たすためにさっさと旅に出た事にした方が俺の心も痛まない。結局は旅に出る予定だったし、早い方が何かと気が楽なのだ。
「晩飯は、魚だな」
さっさと買い物を終わらせ家へ帰る。
服屋での予想外の出来事で浮いた代金もさっきの食料代で全部なくなったし俺の懐は軽くなった。だが、明日から始まる旅に少しの不安と大きな期待が入り交じり気分は最高だった。