サード・ライフォード2
水浴びを終え、初めて見る女体にキャパオーバーしてボーッとした頭を冷ますように水を飲んだ。
水を飲みスッキリした頭でこれからの事を朝御飯を食べながら考える。朝食は硬いパンとラトの両親が作ってくれたシチューだ。
「この身体でサード・ライフォードは名乗れないな。となると、別の名前が必要だな」
そもそも、この国で戻れない変化魔法は確認されていないため、魔法で戻れなくなったと言っても誰も信じない。だから、先ず始めに自分の名前を考えることにした。
そして、この国でサードと言う名前はありふれているが一般的に男が名乗る名前なのだ。だから、女の子が名乗ると変な疑いを受ける。それからライフォードと言う名字も変えなければならない。ライフォードの名字を名乗れるのはこの国ではもう俺だけだが、それ故この姿でその名字を名乗ると知っているものからしたら変だと思われる。そして、単純にこの姿が知り合いにバレるのは恥ずかしい。
以上の理由により名前と名字を偽る必要がある。
「名前、名前、この姿に合う名前……サーシャ……サーシャ!! サーシャ・ラスドアで行こう」
よし、今日から男に戻るまで俺はサーシャ・ラスドアだ。
名前も決まり、一段落した所で俺は服が無い事に気付いた。この家には男物しか無い。しかも、男の時の俺は中々に背が高かった。この身体で着れる服など一着も無いのではないか。そう考え、急いで多少ブカブカでも良いから着れる服を探した。
やっとの想いで見つけた服はいつだかの祭りの時に村で着せられた女装衣装のスカートとその時の景品のノースリーブのシャツだった。
着るしかないか? 抵抗があるのだ。女の子の身体で女性物の服を着る何ら間違っていない。だが、俺には男だと言う思いがある。だか、状況は中々に切迫している。いつ戻れるかわからない女体化、底をつき掛けている買い貯めた食料。背に腹は変えられない。
腹を括って俺は袖を通した。
着てみるとその服はとてつもなく似合っていた。歩いていたら十人中八人位は振り向きそうな美少女に仕上がった。後は、少し長い髪を結って完成だな。昔、ラトの髪を結ばされたのが今になって生きている。何とも言えない笑みを浮かべながら俺は髪を結った。ちなみに、俺はツインテールにしか出来ない。ラトのお気に入りの髪型だったし、それしか教えて貰ってないからだ。
俺の家に姿見は無いので感覚でやるしかない。だから、完璧に支度出来たかと言われると何とも言えないが、素材が良いのだよっぽど変な事になっていなければ大丈夫だろう。
抵抗があった女物の服も着てみれば着心地が悪いわけでもなく、むしろ、俺が普段着ていた物より生地が良いのが少しだけムカッとした。