王都に向けて
フレイも旅に同行することが決まった翌日、俺達は荷づくりをしていた。
「サード、そっちは準備終わった?」
「もう少しかな」
「そっか。なんか手伝う?」
「本当に後少しだし、大した量じゃないから大丈夫だよ。それより、フレイの方手伝ってあげたら?」
「ああ、確かに。フレイ、旅は初めてって言ってたわね。様子見てくるわ」
フレイの方へと行くラトの背中を見送った俺は、残りの荷物を纏める。さっきラトに言ったように大した量でもなく、三十分と掛からずに終わった。
「よし、終わった~」
荷づくりを終え、勢いよく伸びをした。固まった身体が解れる心地好さを味わいながら森を見る。最初に来たときは、フレイにボコボコにされて殺されると思った。だけど、気付いたら弟子入りして修行までつけて貰ってた。ラトにも会えたし、ディベルとラントにも会えた。フレイへの誤解も解けて。
「あっという間だったな~。……次は王都か、どんな場所なんだろ。平和だったらいいな~」
一人で浸っていると。森の奥からディベルとラントが走ってきた。
「サーシャ!助けてくれ!」
「私からもお願いします!」
ディベルはいつも通りの声量だが、ラントまで声を張る程の事。余程の緊急事態だと思い立ち上がり二人の方を見る。
「二人共、一旦落ち着いて状況を教えてくれて」
「ヤバイんだ!フレイ様が!」
「ええ、大惨事になります!どうにかしなければ…」
二人を落ち着けるのに少し手間が掛かったが、何とか落ち着かせて話を聞いた。
「成る程、つまりフレイが荷づくりに手間取って。それを手伝いに行ったラトも同じような状態って事だな?」
「ああ、あれはヤバイぜ!」
「ど、どうにかなるのでしょうか?」
焦った、本当に焦った。蓋を開ければ、旅初心者の二人が合わさって何を持っていけば良いのか分からなくなっているだけだった。
「分かった、俺が何とかするよ」
「サーシャ!本当か!助かるぜ!!」
「サーシャ、本当にありがとうございます…!」
二人からの尊敬の眼差しを背中に受け、ラトとフレイの元へと向かう。段々と近付くに連れて声が聞こえてくる。
「フレイ、それ必要ないでしょ?」
「いや、何を言っている。これはお前が昔くれた木の実の首飾りで大事にしているのだぞ」
「え、まだ持ってたの?てっきりもう捨てたと思ってたわ」
「無論だな。我が子から貰ったものだ、物の寿命が来るまでは大事にするぞ」
微笑ましい会話が聴こえてしまい、入るに入れなくなった。もう少し様子見することにした。