ラトとフレイの過去3
フレイとラトの話を全て聞き終わったのだが、あまりの事に俺は上手く飲み込めず、ただ俯くしかなかった。
『お前もこの話を聞いてわかっただろう。ラトは、この森で我と共に居る方が安全なのだ』
フレイの言葉に何も言い返せない。頭で理解している。ここから連れ出せばラトは、その美貌でまた危険な目に逢うかもしれない。しかし、ここで言い返さなければいけない気がした。
「フレイ、お前の言うことは最もだよ…」
『ほう、では諦めるか?』
「いいや、今なら俺の方が美人だからな!ラトに降り掛かるもの全部、俺が受ける!」
俺の発言にその場にいた者達が止まる。過去の話の間、邪魔になら無いように気配を消していたラントとディベルすらもポカーンとしている。
『…クックック、そうか!お前はそう言う選択をするのか!うむ、やはり気に入った。ラトの旅を認めよう』
数秒の沈黙の後フレイは笑いだし、先程までの威圧するような空気感が無くなった。
「サード、あなた然り気無く自分の方が綺麗だって言わなかった?」
「サーシャ、お前スゴいな~!フレイ様にあんな啖呵を切るなんて!」
「ええ、フレイ様相手に真っ向から言い返せるのはこの森でもいません。しかし、あなたはどちらかと言えば美人より可愛い系では?」
空気が和らぐと同時にラト、ディベル、ラントが話し始める。ラトからはジト目で詰められ、ディベルからは、絶対的強者に果敢に挑む者として何故か尊敬され、ラントからは自分の事を美人と言ったことを訂正されていた。俺的には結構頑張って啖呵を切ったので、もう少し格好いいと思われたかったのだが、今の自分の姿を思い出して無理だなと諦めた。
やっぱりサッサと変化魔法を解かないとな。
『旅に行くのは良いが行き先は決まっているのか?』
「いや、何にも」
『格好つけた割りに締まらないなお前…。ならば王都はどうだ?あそこなら食や寝泊まりに困ることもあるまい』
フレイの提案はとても助かるし、納得の行くものなのだが、俺は少し気になることがあった。
「そう言えば何でフレイは残るみたいな話し方なんだ?」
『うむ?当然であろう?我はこの森の主。おいそれと出ては森の均衡が崩れる』
「なんか縛られてるとか?」
『いや、違うが…』
「なら、この森の魔獣が弱いとか?」
『それこそ有り得ぬ。我に傷を与える者もいる位だ』
「じゃあ、そいつらに任せても森は平気じゃないか?フレイの事を恐れて人間はあまり近付かないし」
『うむ……しかしだな…』
「あ~あ、一緒に行けばラトと旅できるのにな~。フレイの意気地が無いばっかりにおれとラトはいちゃつき放題だな~」
『な!?そっ、それはだめだ!!』
「じゃあ、行く?」
『行く…が、これはあくまで監視としてであってラトと旅が出来るとかそう言う話ではなくお前とラトが変なことをしないようにだな……』
素直にラトと旅がしたいと言えず、建前を並べ続けるフレイを前に俺は笑みが溢れた。