サード・ライフォード
女になってる。女になってしまった。
だが、俺は冷静だった。こうなった理由は一つしかない。昨日、寝る前に使った変化魔法が不発ではなくしっかりと作用した結果なのだろう。ならば、もう一度使えば戻れる。簡単な事だ、授魔の儀式で授かった魔法は確認して1日経てば身体に馴染む。今の俺は昨日とは違い魔法の効果と使用方法が分かる。
なぜ、昨日無闇に使ったかと言うと好奇心と魔法への憧れがちょっと行きすぎただけだ。
「すーはー……よし」
深呼吸して気合いを入れ自分の胸に手を当てて変化魔法の効果を探る。一度唱えれば変化、二度唱えれば解除。対象を見ながら唱えれば身体能力も真似られる。思い描いた物に変化すると想像力の強さで決まるのか。
なるほど、とりあえず男に戻ろう。昨日のが一回目としてカウントされてるのならもう一度唱えれば変化魔法は解除され男に戻れるだろう。
「変化魔法」
少し待ってみるが、昨日のような眠気も来ないし、身体が光ったりもしない。
「あれ、おかしいな ? 変化魔法」
もう一度唱えると身体が光り脳内に情報が入ってきた。
『未定着で発動された変化魔法による変化はイレギュラーであるため解除出来ません』
イレギュラー? 解除出来ない? じゃあ俺はこれから女の子として生きていかなきゃ行けないのか?
待ってくれ、最悪俺が女になるのは良いとしてもこの家にはラトの父と母が頻繁に出入りする。この姿を見られて心配を掛けてしまうことの方がまずい。何とかしなければ。
この前、ラトの両親が来たのは一昨日。次に来るまでにあと二日から三日ある。その間にどうにか男に戻るか、心配を掛けないですむような言い訳を考えて置かなければ。
「どうする、どうする……取り敢えず朝の支度するか」
一周回って冷静になった俺は水瓶から水汲み外にある水浴び用の場所に向かった。
ダボダボの服を脱ぎ、一糸纏わぬ姿になると身体に水を掛けようと桶を持った。すると、さっき迄は焦っていたのと、ラトの両親の事で頭が一杯になっていて気付かなかった自分の今の容姿が目に入った。
髪は銀色に近い青で、顔付きはつり目の若干童顔気味だが美人、身長は百五十センチ位の華奢な女の子だ。胸は程々、足は長いな、手もスラッとしていて肌も白いな。
自分の身体なのだがこれまで女の子の裸を見る事は無かったから緊張してしまう。
胸からゆっくりと目線が下がって行き遂に見てしまった。俺の身体にあったはずの相棒の消失を。一度も抜かれること無く散った宝刀があった場所を。
結果から言うと俺のこの身体は無駄な毛が一本も這えていなかった。頭が熱くてボーッとしながら水浴びを終えた。